[基礎解説] Windowsの互換性テクノロジの仕組み(前編) 3.互換性テクノロジが効果を発揮する場面 佐藤 芳樹2010/06/17 | |
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Windows互換性テクノロジが効果を発揮する場面
Windows互換性テクノロジはすべてのアプリケーションの互換性問題を解決できる救世主なのか。答えは残念ながら「No」である。ここまで記してきたとおり、確かにWindows互換性テクノロジはアプリケーションの互換性問題を解決できる可能性を秘めているが、万能ではない。
大きな効果を発揮するだろうシナリオとしては、次のものが挙げられる。
■開発元がなくなってしまった場合
アプリケーションの開発元が倒産などによりすでに存在せず、Windows 7に対応させるための更新バージョンもしくは更新プログラムを入手することができない。こんな場面では、Windows互換性テクノロジは大きな効果を発揮する可能性がある。同様に、業務用に個別開発されたアプリケーションのうち、すでに保守が終了しているケースにも同じことがいえる。
■重要度が低い場合
Windows 7を正式にサポートしたバージョンがリリース済みだが、その更新のために追加投資するほど重要ではない。ただ、ユーザーがそのアプリケーションを使用できることを希望している。このような場合も、Windows互換性テクノロジを使用することで、新たな投資なしにユーザーの要望に応えることができる可能性がある。
■OSとアプリケーションのライフサイクルが異なる場合
アプリケーションは組織内で開発されたが、Windows 7導入時点ではアプリケーションの改修作業が完了していない。実際、筆者が知る多くの企業では、すべてのアプリケーションを改修し終えてからWindows 7へ移行することを考えているものの、実際のIT予算などを考えると単年度予算では足りないし、そもそもアプリケーションをすべて改修し終わるのには時間がかかる可能性も高い、というのが現状である。このような場面では、Windows互換性テクノロジで互換性問題を一時的に回避し、アプリケーションの改修は当初の計画どおりに無理なく進めていくことが推奨される。
しかしながら、Windows互換性テクノロジはプログラムのソース・コードを直接修正してくれるものではないし、Windows 7で廃止された関数を補完してくれるものでもないため、完全な互換性問題の解決ソリューションとはいえない。その利用可能範囲は、あくまでも用意されたshimを組み合わせることで解決可能な範囲に限定されている。そもそもWindows 7上での動作がサポートされていない市販アプリケーションなどでは、Windows互換性テクノロジを活用して互換性問題が解決されたとしても、サポートを得られるわけではないことも理解したうえで利用する必要がある。
では、Windows互換性テクノロジはどのような位置付けで使用されるべきなのか。アプリケーションの互換性検証テストのフローにおけるWindows互換性テクノロジの位置付けを次に示す。
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上図のとおり、テスト・フローにおいて比較的初期に試行されるのがWindows互換性テクノロジである。そのほか、本稿では触れないがWindows互換性テクノロジによる解決が見込めない場合には、Windows 7に標準搭載されているWindows XP Modeや、Microsoft Enterprise Desktop Virtualization(MED-V)といったクライアントの仮想化テクノロジも有効なソリューションとなる。
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以上、前編ではWindows OSに標準で実装されているWindows互換性テクノロジの仕組みやその役割・効果について説明してきた。後編では、Windows互換性テクノロジの具体的な活用方法として、Application Compatibility Toolkit(ACT)というツールを利用して、個々のアプリケーションの互換性問題を解消する「互換性データベース」を作成・適用する方法を中心に解説する。
INDEX | ||
[基礎解説]Windowsの互換性テクノロジの仕組み(前編) | ||
1.互換性問題が生じるワケ | ||
2.Windows 7との互換性を確保する「shim」 | ||
3.互換性テクノロジが効果を発揮する場面 | ||
[基礎解説]Windowsの互換性テクノロジの仕組み(後編) | ||
1.Application Compatibility Toolkit(ACT)とは? | ||
2.ACTで「互換性データベース」を作る | ||
3.Windows互換性テクノロジの限界と活用 | ||
基礎解説 |
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