Windows 2000 Insider/PC Insider合同特別企画
Windows XPの正体

Windows XP性能評価(1)
アプリケーション実行性能

3.Windows 2000/Windows XP性能比較

デジタルアドバンテージ
2001/11/30

 それでは本題であるWindows 2000とWindows XPの性能比較に移ろう。先ほどと同じアプリケーション・ベンチマーク・テストを使用し、ローエンド構成のマシン1とハイエンド構成のマシン2に対して、それぞれにWindows XP Professional、Windows 2000 Professional+SP2をクリーン・インストールし、テスト完了までの時間を計測する。なお先の搭載メモリ・サイズ・テストの結果より、マシン1、マシン2とも、搭載メモリ・サイズは、メモリ不足によるスワップ発生の心配がない256Mbytesとした。

 またWindows XPについては、Windows XPのデフォルトのユーザー・インターフェイス(Lunaユーザー・インターフェイス)が性能に及ぼす影響を知るために、Windows XPのデフォルトの状態と、テーマをWindows 2000と同等の「Windowsクラシック」にして、あらゆる視覚効果をオフにした状態の2種類でテストを実行した。

[パフォーマンス オプション]ダイアログの[視覚効果]タブ
[マイ コンピュータ]のプロパティ・ダイアログ([システムのプロパティ])の[詳細設定]タブにある[パフォーマンス]グループの[設定]ボタンをクリックすると、この[パフォーマンス オプション]ダイアログが表示される。この[視覚効果]タブでは、Windows XPのユーザー・インターフェイスにおける各種視覚効果の設定をオン/オフできる。
  デフォルトの設定。今回テストした環境(マシン1、マシン2)でこれを選択すると、いずれの場合も、すべての視覚効果がオンになる。
  処理の重い視覚効果を無効化して、性能を最優先にする場合に選択する。これを選択すると、の視覚効果はすべてオフになる。
  ここで個別の視覚効果をオン/オフにすることもできる。

 Windows XPのデフォルトの状態では、視覚効果オプションとして[コンピュータに応じて最適なものを自動的に選択する]が選択されており、今回テストした環境(マシン1、マシン2)では、すべての視覚効果オプションがオンになっていた。もう一方は、ここで[パフォーマンスを優先する]を選択したもので、これを選択すると、すべての視覚効果はオフになる。視覚効果としては、具体的には以下の項目がある。

視覚効果 XP標準 パフォーマンス優先
ウィンドウとボタンに視覚スタイルを使用する
×
ウィンドウを最大化や最小化するときにアニメーション表示する
×
コンボ ボックスをスライドして開く
×
スクリーン フォントの縁を滑らかにする
×
タスク バー ボタンをスライドする
×
デスクトップのアイコン名に影を付ける
×
ドラッグ中にウィンドウの内容を表示する
×
ヒントをフェードまたはスライドで表示する
×
フォルダでよく使用するタスクを使用する
×
マウス ポインタの下に影を表示する
×
メニューの下に影を表示する
×
メニューをフェードまたはスライドして表示する
×
メニュー項目をクリック後にフェード アウトする
×
リスト ボックスを滑らかにスクロールする
×
各フォルダの種類に背景画を使用する
×
半透明の[選択]ツールを表示する
×

Wordテスト

 Wordテストの結果は以下のとおりである。

Windows XP/Windows 2000性能比較(1) Word
Windows 2000を1とすれば、Windows XP(デフォルト)はマシン1で1.23、マシン2で1.28と、ややWindows XPが低速という結果になった。Windows XPの「パフォーマンス優先」オプションを選択しても、違いはそれほどでもなかった。

 このグラフを見て、Windows XPの性能よりもまずは目に付くのは、ローエンド構成のマシン1と、ハイエンド構成のマシン2の性能差だろう。例えばWindows 2000で比較すると、マシン1では45.8秒のところ、マシン2では12秒で処理が完了している。約3.8倍マシン2のほうが高速ということだ。性能差の大きな要因は、プロセッサとグラフィックスの性能だと思われる。ローエンド構成のマシン1は、Celeron-733MHzであるのに対し、ハイエンド構成のマシン2はPentium 4-1.9GHzと単純にクロック値だけを比較してもかなり高速になっている(もちろんベース・テクノロジも異なるので、クロック値だけで比較はできないが)。さらにグラフィックスに関しては、マシン1は810チップセットの内蔵グラフィックス機能を使用しているのに対し、マシン2ではNVIDIA GeForce 2 Tiと現時点で最高速に近い部類のグラフィックス・カードを使用している。このうちIntel 810標準のグラフィックス機能では、グラフィックス・メモリとしてメイン・メモリの一部を使用するので、基本的にグラフィックス描画とプログラムからのメイン・メモリ・アクセスが同時に行えない。今回実施したベンチマーク・テストでは、テストの性格上、グラフィックス描画を常時行うので、Intel 810の標準グラフィックスは性能的には非常に不利である。これらプロセッサとグラフィックスの性能差に、使用メモリの差(マシン1はPC 100 SDRAM、マシン2はPC800 Direct RDRAM)が加わった結果が3.8倍ということだろう。

 このようにマシン2は非常に高速なため、従来は1分程度かかっていたベンチマーク・テストが10秒前後で終わってしまう。比較するためにはしかたないとはいえ、マシン2の結果は、測定誤差の影響が大きいという点は考慮する必要があるだろう。

 さて肝心のWindows XPとWindows 2000との性能差だが、まずはマシン1のWindows 2000/Windows XP(デフォルト)に注目しよう。前者は45.8秒、後者は56.2秒で、Windows 2000を1とすれば、Windows XP(デフォルト)は1.23と23%低速である。同じくマシン2のWindows 2000/Windows XP(デフォルト)はそれぞれ12.0秒/15.4秒で、Windows 2000:Windows XPは1:1.28となった。このように割合としてはマシン2のほうが両者の差は大きかったが、マシン2は非常に高速なため、当然ながら絶対的な時間差は小さい。これは以下すべてのテストでいえることだが、本稿の冒頭で述べたWindows XPの性能に対する印象の差は、その人がどの程度の性能のマシンを使っているかに一因がありそうだ。

 次にWindows XP(デフォルト)とWindows XP(パフォーマンス優先)の差だが、マシン1ではほとんど変わらず(1:0.98)、マシン2では1:0.85とパフォーマンス優先がわずかに高速という結果になった。ただしマシン2での絶対的な時間差は2.3秒であり、測定誤差を考えると、あまり差はないと考えたほうがよさそうだ。

Excelテスト

 Windows XPはWindows 2000に比較して20%〜30%弱低速だという結果になったWordテストと比較すると、このExcelテストでは、この差がさらに大きくなった。

Windows XP/Windows 2000性能比較(2) Excel
Windows XPは、Windows 2000に比較して2倍近く低速という劇的な結果になってしまった。またWordテストとは異なり、Windows XPの「パフォーマンス優先」オプションの差が大きく現れている。これらの原因については、すぐ次で追試を行い、さらに分析を進める。

 マシン1で計測したWindows 2000とWindows XP(デフォルト)を比較すると、40.5秒対76.9秒=1:1.90と、2倍近くWindows XP(デフォルト)は遅い。同じくマシン2に注目すると、13.4秒対25.1秒=1:1.87で、やはりWindows XP(デフォルト)は大幅に遅い。

 次にWindows XP(デフォルト)とWindows XP(パフォーマンス優先)を比較してみよう。マシン1では、76.9秒対59.2秒=1:0.77とパフォーマンス優先設定のほうが高速、マシン2では、25.1秒対20.1秒=1:0.80と、やはりパフォーマンス優先設定のほうが高速である。ただしWindows 2000と比較すると、マシン1ではWindows 2000:Windows XP(パフォーマンス優先)=1:1.46、同じくマシン2では1:1.50とWindows XPのほうが低速という結果である。

 このテストに関しては、大きな疑問点が2つある。1つは、Wordテストに比較して、Windows 2000とWindows XPとの差がどうしてこれだけ大きくなったのかということだ。そしてもう1つは、Wordテストでは大した違いがなかったWindows XP(デフォルト)とWindows XP(パフォーマンス優先)の差が広がった理由は何かということだ。おそらく両者には相関関係があるものと考えられる。

 これらの疑問については、さらに追試を行って分析を進めることにする。その前に、ほかのアプリケーション・ベンチマーク・テストの結果を眺めておこう。

PowerPointテスト

 前出のWordテスト、Excelテストに比較すると、このPowerPointテストでは、Windows 2000とWindows XPの結果がほぼ均衡した。

Windows XP/Windows 2000性能比較(3) PowerPoint
若干Windows XPのほうが低速だが、その差はWordテストほどではない。全体の傾向はWordテストと同じで、テスト間の差を縮めたような結果となった。

 Windows 2000とWindows XP(デフォルト)を比較すると、マシン1ではWindows 2000:Windows XP(デフォルト)=1:1.12、マシン2では1:1.07とWindows XPがやや低速という結果である。Windows XP(デフォルト)とWindows XP(パフォーマンス優先)の比較では、マシン1とマシン2でそれぞれ、1:0.91、1:0.96と、パフォーマンス優先のほうがわずかに高速という結果になった。

 Windows 2000とWindows XP(パフォーマンス優先)では、マシン1とマシン2でそれぞれほんのわずかにWindows XPが低速という結果だが、測定誤差を考えれば、ほぼ同一のパフォーマンスだといえる。

 大ざっぱにいえば、Wordテストと傾向は同じで、テスト間での差を縮めたような結果となった。このPowerPointテストは、もっぱら2Dグラフィックスを描画するテストである。2Dグラフィックス描画については、Windows 2000もWindows XPも、それほど性能差はないと考えてよいだろう。

SYSmark 2001テスト

 より本格的なアプリケーション・ベンチマーク・テストとして、また海外メディアなどでも結果が公開されていることから、その結果との比較を考えて、SYSmark 2001を実行してみた。すでに述べたとおり、SYSmark 2001は英語環境向けのアプリケーション・ベンチマーク・テストであり、テストにあたってはWindows 2000 ProfessionalおよびWindows XP Professionalとも英語版を使用している(いずれの環境も、OSをクリーン・インストールした直後の状態でテストを行っている)。なお、SYSmark 2001には本来、「Office Productivity」と「Internet Content Creation」という2つのカテゴリがあるのだが、今回はこのうちWordやExcel、PowerPoint、Access、Outlook、Netscape Communicator、McAfee VirusScanなどを実行する「Office Productivity」のみを実施した。

 テスト結果は以下のとおりである。

Windows XP(英語版)/Windows 2000(英語版)性能比較(4) SYSmark 2001 Office Productivity
英語版のWindows 2000とWindows XPをそれぞれインストールし、英語版アプリケーションを使った本格的なアプリケーション・ベンチマーク・テストであるBAPCo社のSYSmark 2001を実行した。編集部独自のベンチマーク・テストとは異なり、Windows XPは遅いどころか、マシン1のテストではWindows 2000よりも高速という結果が得られた。

 このようにSYSmark 2001テストでは、Windows XPは遅いどころか、マシン1では、Windows 2000:Windows XP=1:1.04と、わずかに高速という結果になった。米国メディアで実施されているSYSmark 2001を使用したWindows 2000/Windows XPの比較テストでも、ほぼ同等の結果が得られている(米ZDNetのWindows XPに関する性能テスト)。

 しかしこの結果は、日本語環境で実施した編集部独自のベンチマーク・テストの結果とは明らかに傾向が異なるものである。以上の結果を踏まえて、次からは、Excelテストであのように劇的な差が生じた理由について追試を含めて考察してみよう。


 INDEX
  Windows XP性能評価(1)−アプリケーション実行性能
     1.ベンチマーク・テストを実施する前に
     2.Windows XP搭載メモリ・サイズ別性能テスト
   3.Windows 2000/Windows XP性能比較
     4. アプリケーション・ベンチマーク・テストの考察
     コラム: アプリケーション・ベンチマーク・テストの内容

Windows XPの正体


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