ネット広告の広告効果を測定するには?
2007/3/5
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ネット広告と一口にいっても、さまざまなタイプがありますよね。バナー広告、テキストリンク広告、メールマガジン広告といった形態のものは定着したといっていいでしょう。さらに画面を動き回る動的なバナー広告なども登場、消費者の関心を引くための工夫が凝らされた広告形態が次々と生まれています。
こうした広告の出稿先としては、従来のWebサイトに加えて、最近はエンドユーザー自身がコンテンツを書く「CGM」と呼ばれる各種メディア、mixiに代表される「SNS」など、バリエーションも増えてきました。Yahoo!やGoogleなどの検索エンジンの検索キーワードに合わせて表示される「リスティング広告」も相変わらずの人気です。
さて、出稿先メディアを検討する場合には、ターゲットユーザーの属性(性別、年齢、職業、趣味、ライフスタイルなど)を考慮して、適切な媒体の特性を持つオンライン媒体を選択する必要があります。例えば、媒体特性で分類したオンライン媒体には、次のようなものがあります。
- ポータル
- ニュース
- IT系
- 女性系
- TV系
- スポーツ系……など
私自身、こうしたオンライン媒体の出稿計画(メディアミックス・プラン)をクライアントのために作成することがあるのですが、よく聞かれるのが「どんな広告形態や媒体の効果が高いですか?」という質問です。しかし、この質問に対する私の答えは、「ケースバイケース! どんな場合にも通用する必勝のパターンはありません」です。
広告対象、つまりクライアントの商品・サービスはそれぞれ、ターゲットユーザーもそれぞれです。このため、過去の経験からある程度の当たりは付けられるにしても、どんな出稿計画がベストかを事前に100%確実には予測できないのが現実です。
そこで、初めてネット広告を行う場合には、当初はテストマーケティングとして、さまざまな広告形態、オンライン媒体に出稿してみてその効果を測定し、効果の高い広告形態やオンライン媒体を絞り込んでいくというプロセスを踏む必要があります。
そこで、今回はネット広告の効果測定のための分析方法を説明しましょう。
分析手順
[ステップ1] 効果測定指標を用意する
効果を測定するということは、何らかの「指標(基準)」に基づいて対象の効果の高い・低いを判断することです。ですから、広告効果の測定・分析とは、各媒体の実績数値から効果測定のための指標(効果測定指標)を算出し、媒体を相互に比較するという作業になります。
そこで、まず「効果測定指標」にはどんなものがあるかを示しましょう。
- クリック率
- コンバージョン率
- クリック単価
- コンバージョン単価
これらは広告目的として、ターゲットユーザーをWebサイトまで誘導し、Webサイト上でユーザー登録を行ってもらう場合を想定したものです。効果測定指標にはこれ以外にも各種ありますが、差し当たりこの4つの指標が得られれば十分です。
それぞれの指標の意味を簡単に補足説明すると、「クリック率」は、各ネット広告がどれだけの人数のターゲットユーザーをサイトに連れてくることができたかを示すもの。「クリック単価」は、1人のユーザーをサイトに連れてくるために必要とした広告費用になります。同様に「コンバージョン率」とは、サイトに来たユーザーのうち、どれだけの人がユーザー登録をしてくれたかを指標化したものです。そして、「コンバージョン単価」は、ユーザー登録者1人を獲得するために必要とした広告費用です。
では、次に各指標の算出方法です。
・クリック率
=バナーやメールマガジン広告のクリック数÷バナーやメールマガジンの露出数(バナー表示数、メルマガ配信数)×100
・コンバージョン率
=ユーザー登録者数÷クリック数×100
・クリック単価
=媒体当たりの出稿費用÷クリック数
・コンバージョン単価
=媒体当たりの出稿費用÷ユーザー登録者数
これらの指標は、分母にバナーの表示回数や、出稿費用といったものを置いて算出したものですから、露出数や出稿費用が異なるさまざまなオンライン媒体を横並びで比較分析することが可能になります。
[ステップ2] 指標の値を算出する
実際の分析例を示しましょう。以下にサンプルデータを示します。
|
||||||||||||||||||||||||
サンプルデータ |
次にこのデータから、効果測定指標を算出しましょう。各指標算出のための関数は、次のようにシンプルなものです。「ポータルA」の計算式を入力したC7〜C10セルのフィルハンドルを横方向にオートフィルすれば、「サイトB」「サイトC」の式も入力されます。
![]() |
画面1 セルに関数を設定する |
結果、効果測定指標が算出されます。
![]() |
画面2 計算結果 |
[ステップ3] 指標値を分析・評価する
では、効果測定指標を見て、今回の結果を分析(解釈)してみましょう。
クリック率は、高いほど良い(サイトに多く誘導できた)ことになりますから、この例では、女性系サイトCが発行するメールマガジン広告が0.9%で最も高く、優れた媒体だという判断ができます。コンバージョン率、すなわちユーザー登録をしてくれた方の比率も、やはりこのメールマガジン広告経由が最も高くなっていますね。
一方、ポータルAと女性系サイトBのバナー広告を比べると、クリック率はポータルAが高いのに、コンバージョン率では女性系サイトBの方が高くなっています。これは、ポータルAからは効率的にサイト訪問者を集めることができるものの、ユーザー登録をしてくれるようなターゲットユーザーは、女性系サイトBほど多く含まれていない、といった解釈ができますね。
さて、今度は「クリック単価」に目を向けてみましょう。クリック単価は安い方がより効率的ということになりますから、ポータルAが83円で最も優れています。女性系サイトBは200円ですから、ポータルAと比べると1人の訪問者の獲得に2倍以上のコストが掛かっているということになります。さらに、ユーザー登録者1人当たりの獲得コストである「コンバージョン単価」を見ると、コンバージョン率の高かった女性系サイトCのメールマガジン広告が583円で最も安く、優れた媒体であることが明確ですね。
逆に、最も費用対効果において効率が悪いのは女性系サイトBのバナー広告。コンバージョン率は、ポータルAよりも高いものの、そもそもクリック率が低めで、十分な数のサイト訪問者を集められていないためにこのような結果になっているわけです。
このように、指標をさまざまな視点で見ながら、今後どの媒体に出稿するのかが最も効率的、また効果的かを判断していきます。
1964年福岡県生まれ。早稲田大学商学部出身。市場調査会社、IT系シンクタンク、広告会社、ネットサービスベンチャー、ネット関連ソフト開発・販売会社を経て、2001年より有限会社シャープマインド代表。マーケティングリサーチ、広告プロモーション企画&プロデュース、Webサイト開発企画&プロデュースを多数手掛ける。
顧客心理の理解向上を目指す「マインドリーディング・ブログ」主宰。「シナプスマーケティングカレッジ」講師。
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