解説
事例で読み解く


サーバ仮想化のいまを追う

@IT情報マネジメント編集部
垣内 郁栄

2008/11/5

仮想化を導入する企業が増えた。特に最近目立つのがサーバ仮想化だ。今回は導入事例を取り上げつつ、仮想化の最新事情を紹介する。

 仮想化技術を使ったサーバ統合は、投資効果が見えやすい。複数台の物理サーバを仮想サーバに移行し、1台の物理サーバに統合することができるためだ。サーバ台数の減少は、リース代金や運用管理コスト、スペースなど大きなコスト削減になる。仮想化ソリューションを提供する各社が発表するサーバ統合事例を分析し、トレンドを探ってみよう。

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 サーバ統合が可能になるのは現状の物理サーバの稼働率が低いからだ。仮想化によるサーバ統合を発表した富士フイルムコンピューターシステムによると、統合前のCPUやメモリの稼働率は20〜30%。ピーク時を除くと残りのリソースは遊んでいたことになる。「VMware」を採用し、日本ヒューレット・パッカードのx86ブレードサーバ、ストレージを使ったサーバ統合では、まずはテストケースとして12台のサーバを仮想環境に移行した。

参考事例

 さらに富士フイルムコンピューターシステムでは2009年3月までに70台のサーバを移行することを計画している。新たに導入する物理サーバは48台。2009年4月からは加えて120台のサーバを仮想環境に移行することを計画するなど社内インフラの仮想化対応を進めている。

運用コスト50%削減、稼働率は80%に

富士フイルムコンピューターシステムのサーバ仮想化で使われた日本ヒューレット・パッカードのx86ブレードサーバ「HP BlaseSystem c-Class c7000 エンクロージャ」

 富士フイルムコンピューターシステムは、サーバ統合による物理サーバの削減や、リソースの効率化などを狙ったが、サーバを統合することによって運用管理コストの削減も期待できるという。既存サーバについては運用管理コストの50%削減を見込む。サーバリソースの利用率も従来の20〜30%から70〜80%に向上すると予想している。

 同社のサーバ統合事例で興味深いのは、基幹業務を支えるサーバを統合対象にしたことだ。サーバ統合でこれまで一般的だったのはファイルサーバや電子メールサーバなどの情報系システム。情報系システムに比べてミッションクリティカルで、停止することが許されない基幹系システムを、仮想化技術でサーバ統合することは画期的といえるだろう。仮想化技術のVMwareだけでなく、PCサーバともいわれるx86サーバが成熟し、信頼性が高まってきたことが背景にある。

18台のサーバを1台に統合

 仮想化によるサーバ統合は、必要なときに簡単にサーバを追加できる「スケールアウト」型のアーキテクチャを採ることが多い。スケールアウト型アーキテクチャの代表はブレードサーバだろう。ブレードサーバはシャーシ部分に電源やファンなどのコンポーネントを収納し、リソースを追加する際はCPUとメモリ、ハードディスクドライブを内蔵するサーバブレードを追加する。ユーザーやアクセスの増加でパフォーマンスに影響が出たら、すぐにサーバブレードを挿入し、拡張できるというのがメリットだ。

東映アニメーションは、IBMの「IBM eServer i5」1台に、ファイルサーバや電子メールサーバを統合した

 しかし、仮想化は比較的低価格なスケールアウト型サーバの専売特許ではない。x86サーバで仮想化が可能になったのは最近だが、メインフレームサーバやオフコン、UNIXサーバではかなり前から仮想化技術が実用化されてきた。社内スタッフのスキルやパートナー会社の能力を考えれば、1台の筐(きょう)体に複数のプロセッサを内蔵するスケールアップ型サーバも、サーバ統合プラットフォームの選択肢の1つだろう。

 東映アニメーションは従来、18台のx86サーバで稼働させていたファイルサーバや電子メールサーバを1台の「IBM eServer i5」に統合した。i5(現行ブランドはIBM System i)はオフコン系列のサーバで、OSレベルで仮想化をサポートする。パーティションを動的に管理でき、パーティションごとにリソースを共有しながら異なるOSを動かすなど、高度なサーバ統合が可能。レガシーといわれる古いアプリケーションが残っている場合などに最適なサーバといえるだろう。

参考事例

サーバ統合に押し寄せる無償化の波

 サーバ統合にも無償化の波が押し寄せている。これまで仮想化によるサーバ統合はVMwareなどの有償ソフトウェアライセンスを利用するのが一般的だった。しかし、オープンソースソフトウェアのハイパーバイザーである「Xen」を使った仮想化ソリューションが台頭してきているのだ。

 代表的なのは日本オラクルが展開する「Oracle VM」。オラクルはXenハイパーバイザーをチューニングし、I/Oやメモリのオーバヘッドを解消したとアピールしている。ソフトウェア自体のライセンスは無償で、オラクルは有償のサポートで収益を上げる考え。オラクルはRed Hat Enterprise Linuxをベースにした無償のLinux OS「Oracle Enterprise Linux」も提供していて、Oracle VMと同じサポート中心のビジネスモデルを採っている。

 eラーニングサービスを提供するシステム・テクノロジー・アイは、Oracle VMを使って研修環境を構築した。これまで物理サーバで稼働していた研修環境を5台のx86サーバに集約した。物理サーバ1台当たり、15台までの仮想サーバを稼働させられるといい、同社は5台の物理サーバで75台の仮想サーバを動かすことができるようになった形だ。

システム・テクノロジー・アイは、ORACLE VMを利用して、研修環境を5台の物理サーバに集約した。物理サーバ1台当たり、15台までの仮想サーバを稼働できるようにした

参考事例

マイクロソフトの動向にも要注意

@IT情報マネジメント編集部からのお知ら
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 マイクロソフトの動向も今後のサーバ統合に影響を与えるだろう。マイクロソフトは仮想化技術「Hyper-V」を最新のサーバOSである「Windows Server 2008」に組み込んで出荷している。仮想化のプラットフォームがWindowsに限られるとう条件はあるものの(ゲストOSはWindows 2008、2003とSUSE Linuxなど)、実質的にOSに仮想化機能が付いてくる形で、仮想化の一般化につながりそうだ。Windowsの利用が多い、中堅・中小規模の企業でも仮想化技術の利用に弾みが付く可能性がある。

筆者プロフィール
垣内 郁栄(かきうち いくえい)
@IT情報マネジメント編集部
■要約■
仮想化技術を利用した導入事例が増えている。その中心はサーバ統合だ。サーバ統合は投資効果が見えやすい。サーバを集約することで、サーバ台数からリース料金、運用管理コスト、スペースなど大きく削減できる。

サーバ統合が可能になるのは、統合前の物理サーバの低稼働率のためだ。統合することで、こうしたサーバの稼働率も向上し、無駄が減る。

最近のサーバ統合の事例では、情報系のシステムだけではなく、基幹系のシステムも対象となることが多くなってきた。これは仮想化技術への信頼性が高まっているためだ。また、スケールアウト型のサーバだけが仮想化と思われがちだが、そうではない。1台の筐体に複数のプロセッサを内蔵すれば、スケールアップ型サーバもサーバ統合プラットフォームの選択肢となる。実際そのような事例もある。

サーバ統合の世界で起きているのが、無償化の流れだ。オープンソースソフトウェアの「Xen」を使った仮想化ソリューションが台頭しつつあるからだ。また、マイクロソフトの動向も、今後のサーバ仮想化に影響を与えそうだ。



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