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公認会計士・高田直芳 大不況に克つサバイバル経営戦略(24)

なぜ日本の電機メーカーは韓国製品に完敗か

高田直芳
公認会計士
2011/12/8

三菱電機と東芝は、重電部門への「選択と集中」を進めている。ところが、この戦略は必ずしも“選択”とはいえない部分がある。韓国サムスン電子に追い詰められ、「やむを得ず選択した」可能性もあるからだ。(ダイヤモンド・オンライン記事を転載、初出2010年1月22日)

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機会原価は
「どちらがお得か」の境目を示す

 話が少し横道へそれるが、上に登場した「機会原価」という用語に馴染みがない場合、いまから1年前の2009年1月に、「かんぽの宿」をめぐる、竹中平蔵氏と鳩山邦夫総務大臣(当時)のバトルを思い出していただきたい。

 当時、竹中氏は鳩山総務大臣に対して、機会費用を知らないのか云々と噛みついていた。

 経済学者が用いる機会費用(opportunity cost)は、管理会計でいう機会原価と同義である。簡単に表現するならば「どちらがお得か」の境目となる価格をいう。

 筆者は、かんぽの宿のどこに「お得感」があるのかを調べたことはないし、鳩山総務大臣が経済学をどれだけ理解していたかも知らない。現在は両氏とも場外リングアウトとなり、いまさら検証してみても五十歩百歩といったところだろう。

 機会原価率に続いて機会原価曲線という聞き慣れない用語が登場しているが、経済学を多少なりともかじったことがある人なら、似たような用語をすでに学習しているはずだ。

 例えば、「限界代替率」や「限界変形率」といった用語はすべて機会原価率で一括りできるし、消費者の「無差別曲線」や生産者の「等量曲線」は機会原価曲線にほかならない。経済学は、ひとまとめにして平易に語れる内容を、象牙の塔の中であれこれ分解して難しく語る学問であることに注意したい(注)。

(注)詳細は拙著『戦略会計入門』(日本実業出版社)参照

日本の“重電回帰”は
積極策ではなく消去策

 話を戻して〔図表4〕横軸(家電部門)を見ると、日の丸メーカーの機会原価率は0.8人分であり、韓国メーカーの機会原価率は0.5人分になっている。これは〔図表3〕の家電部門を列で比較したのと同じである。

 したがって、家電部門に関しては、機会原価率の小さい韓国メーカーのほうが「相対的に優位」な立場にあることを示している。

 こうした相対的な関係を、経済学では「比較優位」という。家電部門に関していえば、日の丸メーカーは「比較劣位」になる。

 次に、〔図表4〕縦軸(重電部門)に注目する。その傾きを比べると、日の丸メーカーは韓国メーカーに対して比較優位の立場にあることがわかる。

 以上の結果から判明することは、かの国のメーカーが家電部門に力を入れるのであれば、われは重電部門に経営資源を集中させることによって生き残りを図ることができるようだ、という結論を得る。東芝や三菱電機の重電回帰は、やむにやまれぬ「受け身」の選択肢だともいえるのだ。

 両社は「選択と集中」に取り組んだので、まだいいほうである。日立は「受け身」さえ忘れてしまったのかもしれない。

日本のメーカーが国内市場から駆逐される
「ウィンブルドン現象」

 鳩山政権のスローガンは「コンクリートから人へ」という。先の政権までは確かに、コンクリート製のハコモノばかりを造っていた。

 現在の政権は、人は人でも、ハコモノの周りに座るギャラリーの人気とりに終始しているような気がする。フィールド内で生産販売活動を行なっている日本人選手に、鳩山レフェリーはかなり手厳しい。これではいずれ、“TOSHIBA”や“MITUBISHI”などのゼッケンを付けた選手は駆逐され、フィールド内は外国人選手ばかりになってしまうだろう。

 そうした試合を、ギャラリーは好むのかどうか。日本人は「ウィンブルドン現象」があまり好みではない。大相撲をはじめとして外国人選手の多いスポーツほど視聴率が低迷しているという事実が、それを証明している。

 日本のゴルフ界は今年、米ツアーの減少によって韓国や台湾の選手が大挙して押し寄せてくることが予想されており、国内ツアーについては視聴率の低迷が早くも懸念されているという。

 こども手当やら製造業派遣禁止やらでギャラリーをいくら懐柔したところで、日本人が活躍しない試合では、ギャラリーの興味もそがれていく。それにもかかわらず、鳩山レフェリーが「CO2の25%削減だ!」と叫び続けるというのなら、日の丸メーカーは国内のフィールドから姿を消すしかない。

 「国破れて“SAMSUNG”あり」といったところが、今回のオチになるようだ。

筆者プロフィール

高田 直芳(たかだ なおよし)
公認会計士、公認会計士試験委員/原価計算&管理会計論担当

1959年生まれ。栃木県在住。都市銀行勤務を経て92年に公認会計士2次試験合格。09年12月より公認会計士試験委員(原価計算&管理会計論担当)。「高田直芳の実践会計講座」シリーズをはじめ、経営分析や管理会計に関する著書多数。ホームページ「会計雑学講座」では原価計算ソフトの無償公開を行う。

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