連載:IFRS先行企業インタビュー(2)
丸紅「IFRSは自然な流れ、早ければ2012年度から適用も」
垣内郁栄
IFRS 国際会計基準フォーラム
2009/12/16
グローバル展開する大手総合商社の丸紅がIFRS(国際財務報告基準、国際会計基準)の早期適用を決めた。プロジェクトを推進する「IFRSタスクフォース」を6月に設立。同社の経理部 決算総括課長 岩根秀禎(正しくは示へんに貞)氏と、経理部 担当課長 決算総括課の横田佳明氏に聞いた。
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――外部のコンサルティングサービス、監査法人とはどのように協力していますか
岩根氏 いまは監査法人とコンサルティング契約を結んで、GAP分析を行っています。具体的には、現行の決算手続きや処理、考え方について、米国会計基準ベースとIFRSベースでどういう会計基準の差異があるのか、ディスカッションをしながら1つ1つ突き合わせをしています。
米国基準からIFRSへ修正という“逆のプロセス”に
――IFRSを適用するうえでの課題はどのようにお考えですか
岩根氏 現在、在米の事業会社は米国会計基準で会計処理を行っているので、その数字を基本的にはそのまま本社側で取り込んでいます。またIFRSで会計処理をしているオーストラリアなどの事業会社については、IFRSの数値を米国会計基準に修正して、取り込んでいます。IFRSを適用するとなると、その逆のプロセスになります。いままではIFRSから米国基準に修正していましたが、適用後は米国基準をIFRSに修正していくわけです。そのため、一連の作業ワークフローそのものはそれほど変わらないと思っていますし、米国がIFRSになれば修正作業は量的には軽減されることも期待できます。
ただ、米国基準は細かいところまで基準が明文化されていますが、IFRSは原則主義で細かな基準までは明示されていません。そのため会計処理の考え方や処理の方針をグループ全体で作り、それを浸透させなければならないと考えています。それが大きな作業になるでしょう。連結決算のフロー自体は変わりませんが、一個一個の処理をする際の判断基準とレベルを合わせるために、ポリシーを定める必要があり、それが新しい課題です。今後、タスクフォースで掘り下げて行くことになります。
――IFRS対応は単体の小さなトランザクションまでIFRS対応にする考えと、最後のレポーティングでIFRSに修正する考えがあります。どのような対応をお考えですか?
岩根氏 検討しているところです。会計方針を統一し、現地(事業会社)レベルでIFRSベースの会計処理を行う場合もありますし、いままでどおり連結の修正として本社レベルで対応できるケースもあるでしょう。どちらがより正確かつ効率的かは、今後のコンバージェンスも見据えながら、検討していきます。まだ答えは出していません。
ITシステムの抜本的な再構築は必要なし
――ITシステム対応、業務プロセス対応に関しての難しさは何があるでしょうか
岩根氏 フロー自体はいまと変わりませんが、今後は現地(事業会社)側で対応する方法と、本社で対応する方法の2つがあるでしょう。その方法によってはデータ収集の仕方の部分でITシステムを改善する必要も出てくるかもしれません。しかし、IFRS対応のために必ずITシステムを抜本的に再構築しなければならないということは、特にないでしょう。
IFRS適用で現行の米国会計基準への修正作業がなくなり、数字がスピーディに集まるようになると予測しています。そのため、いまの決算処理を短縮できるかもしれません。一方、会計ポリシーの統一のために余計に時間がかかるかもしれません。どうなるかまだ読めない部分もあります。効率化できる部分については当然、ITを駆使して効率化します。実際にITシステムによる効率化を考えるのは2010年後半から2011年だと思っています。
――経営陣はIFRSをどう考えていますか?
岩根氏 かなり興味を持ってもらっています。IFRSの会計処理について、個々にインパクトを尋ねられるくらいです。