トレンドマイクロのレポートから
2008年は増加? ウイルス感染報告数に「1年おきの法則」
2008/01/08
2008年は多数のコンピュータ・ウイルスが猛威を振るう年になるかもしれない。トレンドマイクロが1月8日に発表した2007年のウイルス感染被害報告件数は6万3726件で、2006年と比べて31%の減少だった。しかし、報告件数の推移を2001年から見ると減少した次の年は報告件数が増加している。つまり報告件数には年ごとに増減を繰り返す「1年おきの法則」があり、2008年は増加する可能性が高いのだ。
「1年おきの法則」は、減少した年に発生した感染手法が、次の年に一般化し、ユーザーに知られるようになることが理由と見られる。新しい感染手法を知ったユーザーがトレンドマイクロに報告するため、その年の報告件数が増大する。
近年のウイルスはターゲットや地域を絞り込んだ攻撃手法が増え、感染被害は小規模化している。一方で、発生するウイルスの種類は増えている。例えば 2001年は上位10種のウイルスが、感染報告件数の68.3%を占めていたが、2007年はわずか4.5%だった。小規模な感染を引き起こすウイルスが多数発生しているのだ。トレンドマイクロのリージョナルトレンドラボ シニアアンチスレットアナリストの岡本勝之氏は、「アンチウイルスのベンダは多くのウイルスに同時に対応することが求められている」と話す。
その岡本氏が「これから一番怖い」というのが正規Webサイトの改ざんによる感染被害の拡大。正規サイトを改ざんして不正コードを埋め込み、アクセスしたユーザーを別の不正なWebサイトにリダイレクトして複数のウイルスに感染させる手法で、2007年6月にはイタリアで1000以上の正規サイトが改ざんされた。国内でも情報提供サイトや地方自治体サイトが被害を受けた。正規サイトが悪用されるため、ユーザーが気付きにくい。また、Webブラウザなどがアラートを出しても正規サイトであればユーザーは無視する可能性が高い。さらに、書き換えられるのはWebサイトのごく一部で、管理者がすぐに不正を見つけられないなどの問題がある。
岡本氏は「ユーザーが気付きにくく成功確率が高い。(正規サイトにアクセスするため)従来のURLフィルタリングだけでは感染を防げない」と指摘。 URLを評価する「Webレピュテーション機能」などを使って正規サイトから不正サイトへのリダイレクトをブロックする必要があると話した。
新しい攻撃手法に共通するのはWebを悪用すること。2007年はスパムメールに添付したファイルやURL、文書ファイルをユーザーに開かせて、不正プログラムをWebからダウンロードさせる手法も目立った。一太郎や国産の圧縮解凍ツールの脆弱性を突くなど、日本のユーザーを狙った攻撃も発生した。岡本氏は「日本は明確なターゲットになっている」と注意を促した。
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