日本語フル対応のAIR 1.1が公開
Flexはよくできた“具”、AIRはそれを生かす“皮”
2008/06/19
米アドビシステムズは6月17日、日本語環境に対応した「Adobe AIR 1.1」を発表した。Flex User Groupで活動するクラスメソッドの代表取締役 横田聡氏は「AIRはFlexというよくできた“具”を包む“皮”」と表現する(AIR 1.1の記事)。
クラスメソッドはAIRがApolloと呼ばれていた時代から開発プロジェクトを手がけてきた。バージョンが1.1となりインストーラなどが日本語になることで、顧客企業の採用が拡大すると期待している。小さなことだが、インストーラが英語版では社内ユーザーへの説明が必要で、それだけで採用をためらう顧客企業もいたからだ。
クラスメソッドはFlexによる業務アプリケーションの構築を得意としている。クライアント/サーバシステムなど、メンテナンスが難しくなったシステムをFlexで再構築する案件を多く手がけてきた。Flexのフレームワークで開発したアプリケーションはWebブラウザでアクセスして使うのが一般的だが、顧客企業によってはWebブラウザ自体がエンドユーザーが利用する上でのハードルになることがある。
だが、AIRを使えばFlexで開発したアプリケーションをローカルアプリケーション化できる。横田氏は「AIRの活用で多いのはファイルアップロード。週に1度、AIRアプリケーションで報告書をフォルダごとサーバにアップロードしたり、レポートをローカルにダウンロードしてAIRアプリケーションで開くなどの利用法だ。システムを使っていてもエンドユーザーが戸惑うと業務効率が落ちる。そういう細かいところを手助けできるのがAIRのいいところだ」と説明する。アプリケーションをスタートアップに登録できることやサーバから情報をプッシュできること、タスクトレイに常駐可能なことなども顧客のニーズに合うという。
「Flexはクライアント/サーバシステムを全部置き換えられるすばらしいフレームワーク。そのフレームワークをさらに生かすことができる“皮”がAIRだ」
AIRを使うことで、アプリケーションのロジックを担当する開発者と、インターフェイスを作るデザイナーとの協業もやりやすくなるという。Flex自体が元々、ロジックとデザインを分離して開発できるのに加えて、Webブラウザに制限されないAIRはデザインの自由度が高い。そのため、デザイナーや顧客企業が求めるインターフェイスを実現しやすいという面がある。クラスメソッドでも開発者とデザイナーが協力してプロジェクトを推進している。
横田氏は「プロジェクトの最初に顧客、開発者、デザイナーが話をすれば、後になって衝突することが少なくなる。開発者とデザイナが求めるものの折衷案を顧客を交えて決められるのが大きい。QCD(品質、コスト、納期)を考えて現実解を出せる」と話した。
AIR次期版は2009年に登場予定
アドビシステムズは6月19日、AIR 1.1についての説明会を開催した。同社のマーケティング本部 デベロッパーマーケティングスペシャリスト 轟啓介氏は「脱ブラウザを果たしたFlash」とAIRを紹介し、1.1の公開で「本格的な商用利用がいろいろなところで始まるだろう」と話した。
AIR 1.0は今年2月に公開され、ランタイムは月に数百万のペースでダウンロードされているという。アドビのAIRギャラリーには27のアプリケーションが登録されていて、AIRアプリケーションのコンテストには86作品の応募があった。轟氏が示した今後のロードマップによると、AIRの次期版は2009年にも登場予定で、現在ベータ版のFlash Player 10を組み込む予定という。
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