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「ITSSはまだ浸透していない」とPM委員会

PMのITSSを活用している中小企業、わずか2割

2008/07/09

 「中小規模のIT企業ではITスキル標準が正しく適用されていない」。情報処理推進機構(IPA)主催の、日本のIT人材のレベルアップを支援するプロフェッショナルコミュニティは7月9日、「ITスキル標準プロフェッショナルコミュニティーフォーラム2008」を開催し、プロジェクトマネージャ(PM)の育成と評価を行うプロジェクトマネジメント委員会 主査 濱久人氏(松下電器産業)はそう述べた。

 プロジェクトマネジメント委員会(以下、委員会)は2007年、PM育成ハンドブックの改訂に向け、中小規模のIT企業(以下、中小企業)でのITスキル標準(ITSS)適用状況の調査を実施した。PM育成ハンドブックとは、PMの育成手段・評価方法、PMに必要なコンピテンシー(知識、スキル、行動)などをまとめたもの。

 委員会には、ITSSが「PM育成の視点から中小企業で活用されているのか」という問題意識があった。ITSSでレベル6、7サイズ(1億〜10億円規模)のプロジェクトが、中小企業では経験するのが難しいこと、職種や専門分野が細分化されたITSSは、中小企業での活用が厳しいことが理由。

 調査対象は、IT企業178社。内訳は、大企業が34社で、(従業員500人以下の)中小企業が144社。調査方法はアンケートとヒアリングだ。

 調査の結果、ITSSの活用状況は大企業で6割、中小企業で2割だった。中小企業でITSSを活用しない理由で多かったものは、「活用を検討する余裕がない」「必要性を感じない」「活用推進人材がいない」。調査によると、職種とITSSレベルの適合率は大企業で2割、中小企業では1割で、認定のレベルにずれがあることが分かった。

 レベルの認定には、プロジェクトの金額的規模を基にした実績が大きく関係する。調査結果では、レベル4、5の認定を大企業では5000万〜1億円、中小企業では(プロジェクトの規模が)500万〜1000万円で、レベル6、7の認定を大企業では5億〜10億円、中小企業では1000万〜3000万円の実績で認定していた。企業の認定に対する考え方は、実績によるものが4割だが、「年齢・役職」での認定も2割いたとのことだ。

中小企業の認定基準
単位:円
レベル4、5 500万〜1000万
レベル6、7 1000万〜3000万
大企業の認定基準
単位:円
レベル4、5 5000万〜1億
レベル6、7 5億〜10億
ITSSの認定基準
単位:円
レベル4 1億未満
レベル5 1億〜5億未満
レベル6 1〜5億以上
レベル7 5億〜10億以上
プロジェクトマネジメント委員会調べ

 本来ITSSでは、レベル4は1億円未満、レベル5は1億〜5億円未満、レベル6は1〜5億円以上、レベル7は5億〜10億円以上で認定する。濱氏は「大企業ではほぼITSSと合っているが、中小企業ではレベルを落としたところで認定している」と、中小企業でのレベル認定がITSSと乖離していることを指摘。

 乖離の理由について委員会は、ITSSの認知度の低さを挙げている。現在ITSSの制定目的や効果・導入方法についての認知度が高いとはいえない。同調査によると、中小企業の研修・評価制度の充実度は大企業(29%)の約半分の15%。中小企業が自社の中で認定制度を作るのには無理がある。中小企業からは「ITSSと情報処理技術者試験のレベルを合わせることは重要」との意見がでたそうだ。

 中小企業でITSSを活用するためには、ITSSやPM育成ハンドブックをどのように改善するべきか。委員会は今後、継続的にITSSを改善し、PM育成ハンドブックをより実用的なものにして出版を検討するとした。

(@IT 荒井亜子)

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