キャンプは終わったけれど、終わらない
新たな軸が加わった「セキュリティ&プログラミングキャンプ 2008」
2008/08/19
「IT業界にネガティブなイメージを持っていたけれど、キャンプに参加し、ドワンゴなどの企業見学を通じてそれが変わった」「プログラミングって楽しいですね。新しい言語を知ってもっと面白くなった」――8月13日から17日の5日間に渡って「セキュリティ&プログラミングキャンプ 2008」が行われた。キャンプに参加した受講生らは修了式において、口々にこうした感想を述べていた。
セキュリティ&プログラミングキャンプ 2008は、IT人材の早期発掘と育成を狙って経済産業省が2004年から実施している「セキュリティキャンプ」の発展系だ。22歳以下の学生を対象に、IT業界の現場で活躍している講師陣が4泊5日で研修を行った。
初日の開講式では、キャンプ実行委員長の三輪信雄氏(綜合警備保障 開発企画部 参与)が、これまでのキャンプ卒業生の活躍が今回の開催につながっていると述べ、ぜひ参加者同士、さらにはチューターや講師との交流を深めてほしいと述べた。
キャンプを特徴付ける制度の1つが、この「チューター」だ。これまでのキャンプの卒業生が、参加者をさまざまな側面から手助けし、講師との間をつなぐ役割を果たしている。また卒業生の中には、受講者とほとんど変わらない年齢ながら、講師としてキャンプに戻ってきた人までいる。
三輪氏は「参加者同士の横のつながり、そしてキャンプ卒業生やチューター、講師との縦のつながりはとても貴重なもの」とし、このつながりを絶やさず、どんどん広げていってほしいと述べている。
来年また戻ってきたい
2008年は、従来よりテーマとしてきたセキュリティに加え、プログラミングというもう1つの軸が加わった。これに伴い参加人数も増加。セキュリティコースでは120人の応募者の中から29人が、プログラミングコースでは140人から17人が選ばれた。年齢も幅広く、中学生(14歳)から大学生までが参加して寝食を共にし、夜10時までみっちり講義やグループ実習を行った。
「プログラミングを知らないとセキュリティはできないし、セキュリティのことを知らないでプログラミングもできない」(三輪氏)
プログラミングコースの主査を務めた吉岡弘隆氏(ミラクル・リナックス シニアエキスパート)は、冒頭のチュートリアルにおいて「ソフトウェアは人が作るもの。プログラムを作ることの楽しさや達成感といったものをぜひ共有したい」と述べた。
プログラミングコースでは、小学生の頃からプログラミングを行ってきたという中学3年生の猛者から、電子工作やロボット工学に興味を持ち、そこからプログラミングに足を踏み入れたという学生、逆に本格的なコーディングはこれが初めてという学生まで、さまざまな背景の参加者がグループに分かれ、ソースコードのコンパイルに始まる実習に取り組んだ。キャンプではほかにも、デバッグの方法やアルゴリズム、コードリーディングなど多面的なカリキュラムが用意された。
ちなみに参加者の半分ほどはC言語経験者。その上、JavaScriptを得意とする人あり、Flash好きあり、中にはHaskellをかじったという人までいるという具合だ。
吉岡氏はこのキャンプを「できれば10年続けていきたい」という。キャンプを通じて、オープンソースソフトウェアをばりばり書く元気のいいプログラマやコミュニティのリーダーを育成し、そこからさらに新しい人材が発掘されるというエコシステムを作り上げていければ、きっと何かが変わるのではないかという。
一方セキュリティコースでは、全体が参加しての基本科目の後、「サーバ」「Webプログラミング」「ネットワーク」「解析」という4つの専門コースに分かれ、より深く突っ込んだ学習を行った。
キャンプ最終日の閉講式では、修了証を受け取った受講者らが一言ずつコメント。多くが「このキャンプはいい刺激になった、もっと精進したい」と抱負を述べていた。中には、「これまでは情報を受け取るばかりだったけれど、今後は情報を発信する側になりたい」「チューターになって来年またここに来たい」という声もあった。
これに対してチューター側からは力強く、「セキュリティとプログラミングは永遠です!」との挨拶があった。また講師からも、「この場に来られなかった人の存在を忘れず、この経験を生かしてほしい」「合宿形式で一堂に会するキャンプは終わったが、ある意味、キャンプに終わりはない」と参加者を励ます声が上がっていた。
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