IPA、実態のつかめなかった標的型攻撃への対応を支援
「ちゃんとした組織からの怪しいメール」に関する相談窓口
2008/09/29
情報処理推進機構(IPA)セキュリティセンターは9月29日、国内でたびたび被害が報告されている「標的型攻撃」の相談に特化した窓口「不審メール110番」を設けた。標的型攻撃と思われる不審なメールを受信した組織からの相談に応じるほか、その情報を分析し、ユーザーへの注意喚起や対策方法の公表などに取り組む。
標的型攻撃とは、一般のユーザーを無差別に狙うマスメール型ウイルスとは異なり、特定の組織に属しているユーザーを狙い打ちにする攻撃メールだ。メールには、情報の詐取などを行う不正なプログラムを仕込んだファイルが添付されていることが多い。実在する組織や人物の名前をかたって、もっともらしい文面で受信者に関係の深い話題と思わせ、添付ファイルを開くよう促すため、見破るのが困難だ。
標的型攻撃が国内で初めて大きく報道されたのは、2005年10月。外務省職員の名前をかたり、ウイルス付きのWordファイルが添付された日本語メールが官公庁に届いたケースだ。それ以降、この種の攻撃は散発的に報告されている。今年4月には、IPA自身の名前をかたって、「標的型攻撃」に対する注意を喚起する標的型攻撃も発生した。
もしこうした標的型攻撃にだまされて添付ファイルを開く(=ウイルス/マルウェアを実行する)と、不正なプログラムがダウンロードされ、IDやパスワード、PC内のファイルなどを外部に送信されたりする恐れがある。また外部からの不正アクセスの足がかりとして悪用される可能性も考えられる。
ただ、不特定多数に大量にばらまかれるウイルスと異なり、標的型攻撃は特定少数に、なるべく目立たない形で送られるため、検体の入手が困難だ。また受け取った人が限られるため、攻撃・感染の事実が組織や企業にとどまり、業界全体で情報を共有して対策するという方向に動きにくい。この結果「どのくらいの組織が標的型攻撃のターゲットになっており、どのくらい被害が生じているかという実体がほとんど分からない」(IPAセキュリティセンター長の山田安秀氏)。
そこで今回設けた不審メール110番では、電話や電子メール、FAXを通じて、標的型攻撃に関する届出や相談を受け付け、対策を支援する。また、これまでウイルスや不正アクセスについて実施してきたように、標的型攻撃に関する傾向を分析し、発生件数やマルウェアの概要などを公表してユーザーへの注意喚起につなげていく。
また標的型攻撃は、Adobe Readerや一太郎、Microsoft Office、圧縮解凍ソフトといったアプリケーションソフトの脆弱性を狙うマルウェアと組み合わせて仕掛けられることが多い。このため、早期警戒パートナーシップを活用し、速やかな脆弱性修正につなげることも検討している。
関連リンク
関連記事
情報をお寄せください:
- Windows起動前後にデバイスを守る工夫、ルートキットを防ぐ (2017/7/24)
Windows 10が備える多彩なセキュリティ対策機能を丸ごと理解するには、5つのスタックに分けて順に押さえていくことが早道だ。連載第1回は、Windows起動前の「デバイスの保護」とHyper-Vを用いたセキュリティ構成について紹介する。 - WannaCryがホンダやマクドにも。中学3年生が作ったランサムウェアの正体も話題に (2017/7/11)
2017年6月のセキュリティクラスタでは、「WannaCry」の残り火にやられたホンダや亜種に感染したマクドナルドに注目が集まった他、ランサムウェアを作成して配布した中学3年生、ランサムウェアに降伏してしまった韓国のホスティング企業など、5月に引き続きランサムウェアの話題が席巻していました。 - Recruit-CSIRTがマルウェアの「培養」用に内製した動的解析環境、その目的と工夫とは (2017/7/10)
代表的なマルウェア解析方法を紹介し、自社のみに影響があるマルウェアを「培養」するために構築した動的解析環境について解説する - 侵入されることを前提に考える――内部対策はログ管理から (2017/7/5)
人員リソースや予算の限られた中堅・中小企業にとって、大企業で導入されがちな、過剰に高機能で管理負荷の高いセキュリティ対策を施すのは現実的ではない。本連載では、中堅・中小企業が目指すべきセキュリティ対策の“現実解“を、特に標的型攻撃(APT:Advanced Persistent Threat)対策の観点から考える。