「メールが感染のトリガーに」、IIJが警告
迷惑メールの比率、さらに増加し85%に到達
2008/10/07
「世の中のメールサーバは、ほとんどがいらないメールを受信するために稼働している」(インターネットイニシアティブ メッセージングサービス部の櫻庭秀次氏)――10月7日、インターネットイニシアティブ(IIJ)が公表した「Internet Infrastructure Review」からは、このような衝撃的な状況が明らかになった。
Internet Infrastructure Reviewは、IIJが観測した各種攻撃の傾向やインターネットバックボーンの運用を通して蓄積した技術的知見などをまとめたレポートだ。四半期ごとのペースで発行する予定で、無償で入手できる。第1号では、最大で2Gbpsを超える通信量を記録したDDoS攻撃のほか、ハニーポットに対する通信の推移やSQLインジェクション攻撃、P2Pネットワークに起因する不要な通信といったトピックが取り上げられている。
同社のまとめによると、メール全体に占める迷惑メールの比率は、2007年の73.1%から1割以上増加し、85.8%に増加している。フィルタであらかじめはじかれている分などを考慮すると、メール流量のほとんどが、不要なメールに占められている計算になるという。
また、IIJのある窓口アドレスに届いた迷惑メール、2683通をサンプルとし、本文に記されたURLにアクセスして調査したところ、158検体のマルウェアが取得される結果となった。「迷惑メールの2.8%は、何らかの形でマルウェアへのリンクを含んでいることが分かった。2.8%というと少ないようだが、迷惑メールの総数が膨大な量であり、ますます増えていることを考えると、これは現実的な脅威だ」(同社セキュリティ統括部の齋藤衛氏)。
レポートでは、ボットを用いた大規模なDDoS攻撃などの例が報告されているが、インターネットにつながった個人PCを「ボット化させる手段としてメールが使われている」と櫻庭氏。ボット化することによって、スパム送信元がさらに広域分散化するというサイクルが繰り返されているという。
櫻庭氏は、CNNなどの著名ニュースサイトをかたって悪意あるWebサイトに誘導し、マルウェアをダウンロードさせようと試みるマルウェアの例などを引き合いに出し、「最近ではメールが感染のトリガーとして使われている」と警鐘を鳴らしている。
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