産業用機器もウイルスのリスクに直面
ディスコ、半導体製造装置にウイルス対策ソフトを標準搭載
2008/10/21
ディスコは10月21日、シリコンウエハからICチップの切り出しを行う精密切断装置「ダイシングソー」に、ロシアのカスペルスキーラボが提供するウイルス対策ソフトを組み込んで、標準提供することを発表した。同社によると、産業用装置や半導体製造装置に、ウイルス対策ソフトを搭載して提供するのは、これが業界初という。
背景には、産業用機器においても汎用OSが普及し、結果としてウイルスの被害から免れ得ないことがある。ディスコの半導体製造装置では、独自に開発した専用組み込みOSに加え、データの受け渡し/分析やマンマシンインターフェイスの部分でWindows XP Embeddedを採用している。シリコン切り出しに必要なデータの受け渡しは、USBメモリを用いて行うが、その際、Windows XP Embeddedウイルスに感染するリスクがあるという。
特に、海外で使用する際に、USBを介してのウイルス感染が深刻化しているという。「弊社ではないが、実際にウイルスに感染したという事例がある」(ディスコの常務取締役 PSカンパニープレジデント 技術開発部部長、関家一馬氏)。この結果、機器の処理が遅くなったり、停止してしまう恐れがある。
これまでは主に、私物のUSBメモリを持ち込まないといったルールで対処してきたが、より根本的な対策として、ウイルス対策ソフトを搭載することとした。性能や新しいマルウェアへの対応、カスタマイズ性などを考慮し、カスペルスキー製品を採用したという。
ウイルス対策ソフトを組み込んだダイシングソーにUSBメモリが差し込まれると、自動的にウイルスチェックが行われる。もしウイルスが検出されれば、必要に応じてパトランプを回転させて警告したり、隔離・駆除などを行う仕組みだ。また、過去の検出記録をログとして収集することも可能。定義ファイルの更新は、ディスコ側に、カスペルスキーラボと同期の取れた定義ファイルサーバを構築し、そこから最新のファイルをダウンロードしてUSBメモリ経由で行う。
会見に同席したユージン・カスペルスキー氏は、「いまやセキュリティは、コンピュータや携帯電話だけでなく、車や航空機、カメラなどあらゆるものにとって課題となっている」と指摘。産業用機器も例外ではなく、ウイルス感染などのリスクにさらされているとし、それに見合う防御策が必要だと述べた。
「産業用機器の選択においては、まず機能や価格、マーケティング戦略などがあり、最後にセキュリティという優先順位となりがちだ。その意味で、セキュリティの優先順位を高めた今回のディスコの判断を誇りに思いたい」(同氏)。
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