レベルに応じた合理的な対策を提示

「システム障害でトラブル」を減らせ、IPAが研究会報告書

2009/04/09

 システムトラブルによって駅の自動改札機が通れなくなる、飛行機の搭乗手続きができなくなる、あるいはATMが利用できなくなる……社会的なインフラを支える情報システムの障害が原因となって、広く国民に影響を及ぼすトラブルが発生している。

 情報処理推進機構(IPA)は4月9日、こうしたトラブルを回避できるよう、重要インフラを支える情報システムの信頼性を高めることを目的とした「重要インフラ情報システム信頼性研究会報告書」を公開した。

ipa01.jpg IPA ソフトウェア・エンジニアリング・センター所長 松田晃一氏

 金融や航空、鉄道、電力といった国民生活を支える社会的インフラの多くが、コンピュータシステムを活用してサービスを実現している。その結果、ひとたびシステムの不具合や運用時の誤りなどによって障害が発生すると、影響が広範に及ぶようになった。重要インフラ情報システム信頼性研究会はこの現状を踏まえ、重要インフラに関係する情報システムの信頼性を確保する方法を議論するため、2008年に発足したものだ。

 9日に公開された報告書では、過去に発生したシステム障害事例を分析しながら、重要インフラ情報システムの信頼性を担保するための方策についてまとめている。具体的には、過去に発生したシステム障害事例を分析し、情報システムレベルでどの程度対策が実施できているかを把握できる「評価指標」を整備したほか、事例をベースに「再発防止策一覧表」をまとめた。さらに、システム構築段階から信頼性確保に向けた取り組みを進めるため、「プロセス」「プロダクト」の両面に渡って「作業目標指標」を定めている。

 特徴は、すべてのシステムを同列に扱うのではなく、障害が発生したときの人的・経済的損失に応じて4つのカテゴリ・レベルに分類し、各レベルに必要な対策を示していることだ。レベルに応じて、過小でも過大でもない、合理的な範囲の対策を実施できているかどうかを把握できるようにした。

 IPAによると、重要インフラ情報システム信頼性研究会には、システムを提供するベンダだけでなく、ユーザー側も参加して検討を行った。その中でユーザー側からは特に、コストとの関係性が議論の俎上に上がったという。今回の報告書は、コストを考慮しながら、「何をどこまでやったらいいのか」を考えるための第1歩という位置付けで、今後、フィードバックを得ながら、産業分野ごとに具体化、精緻化を進めていく計画だ。

 なおIPAは先に、「重要インフラの制御システムセキュリティとITサービス継続に関する調査報告書」を公開している。この報告書では、従来、独自システムが利用されることの多かった重要インフラの制御システムにおいてもオープン化が進み、その結果、ウイルス侵入などのリスクが高まっていることが指摘されていた。

(@IT 高橋睦美)

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