システムの保護からデータそのものの保護へ
「運用可能なセキュリティ」を提唱、シマンテック
2009/05/13
シマンテックは5月13日、同社の企業向けの新しい体制について説明会を開催した。米シマンテックのセキュリティグループ プロダクトマネジメント担当バイスプレジデント、アート・ギリランド氏は「企業顧客が直面している脅威は変化している。それにともない、セキュリティの役割も変わらなければならない」と述べる。具体的には、「エンドポイント」や「メッセージング」といった分野ごとに製品を提供するだけでなく、一連の製品を統合し、最適化していく方針だという。
ギリランド氏は背景として、企業を狙う脅威が、ここ数年で質量ともに大きく変化していることに触れた。シマンテックでは2008年のたった1年の間に、過去17年間にリリースしてきたものの総数よりも多くのシグネチャを作成することになったという。また、「情報」そのものが狙われるようになった結果、かつての派手なウイルスは影を潜め、静かに潜伏して情報を盗み取るマルウェアが増加してきた。同氏によると、新種のウイルスの90%は、情報を盗み取ることを目的に作成されているという。
この結果、「これまでの伝統的なアンチウイルス的対策では不十分だ」と同氏。システムを堅牢化して保護するというアプローチから、その上で扱われる情報そのものの保護を視野に入れねばならないという。同時に、パッチ適用漏れによる感染被害を防ぐため、セキュリティ運用プロセスの標準化、自動化も求められるとした。
シマンテックでは、こうした新たなセキュリティ対策を実現するものとして「オペレーショナル・セキュリティ」という概念を提唱。その推進に向けて新しい部門を創設し、これまで提供してきた各製品を、より統合した形で提供していく計画だ。
オペレーショナル・セキュリティではほかに、「可視化」や運用プロセスの「標準化」「自動化」も重要な要素となる。例えば、同社が全世界で展開している「Global Intelligence Network」や企業がそれぞれ設置しているゲートウェイなどから情報を収集、集約して優先順位を付けることにより、新たな脅威を可視化し、迅速に対応できるようになるという。また「人手に頼る対応は複雑で、ばらつきが生じる。オペレーショナル・セキュリティは、プロセスの標準化、自動化を促進する」(同氏)という。
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