世界的な不況を悪用するスパムも増加
「友達だから」の信頼感を悪用する攻撃が増加、シマンテック
2009/09/04
シマンテックは9月3日、2009年上半期のセキュリティ動向に関する説明会を開催した。同社によると、マルウェアの増加傾向は止まらず、毎月2億4500万件以上が検出されている。そしてその多くは、既知のマルウェアから派生した亜種などであり、パターンファイルに基づく手法では検知が難しくなっているという。
シマンテックのセキュリティレスポンス シニアマネージャ 浜田譲治氏は、2009年前半の脅威の特徴を2つ挙げた。1つは、世界的な経済危機という状況を悪用し、人間の心理を突くフィッシング詐欺やスパムメールが増加していること。もう1つは、ソーシャルネットワークを悪用した攻撃が増加していることだ。
浜田氏によると、金融危機に端を発する世界的な不況とそれにともなう失業の増加という状況を逆手に取った詐欺が増加している。具体的には、求人広告や失業保険の申し込み、政府の支援制度を装った、失業者をターゲットにしたスパムメールが観測された。こうしたスパムメールの多くは、申請に必要な手続きを装って個人情報を盗み取るフィッシングサイトに誘導したり、詳細を記したと偽って添付ファイルを開かせ、バックグラウンドでマルウェアに感染させたりする。
またソーシャルネットワークサービス(SNS)を利用した攻撃では、まず、あるアカウントを乗っ取り、そのアカウントからつながる「ともだち」すべてにリンクを送り付ける。受け取った側は、友人からの情報だから信頼できると判断し、そのリンクをクリックしてしまうが、実はそれはマルウェアに感染させる悪意あるWebサイトだ。ユーザー同士の信頼を悪用して次々に感染を広めるのが容易なため、「SNSが攻撃のプラットフォームとして利用されている」(浜田氏)という。同様に、SNSの招待状にワームを添付するという攻撃も発見された。
浜田氏はまた、いかにも怪しげなサイトではなく、正規のWebサイトが改ざんされ、そうとは知らずにアクセスしてきたユーザーを感染させる手口にも引き続き注意を呼び掛けた。従来、こうした攻撃はOSやブラウザの脆弱性を狙うことが多かったが、「最近は自動アップデート機能により、パッチが適用されているケースが増えてきた。しかしプラグインについては、自動更新機能があっても使われていないケースがあるし、そもそも種類が多い」とし、PDFファイルを開くAcrobatプラグインやQuickTimeをはじめとする動画再生プラグインが狙われやすくなっていることを警告している。
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