ユーザーに応じた暗号化個所の変更も
PFU、紙文書を介した情報漏えいを防ぐ暗号化製品
2009/10/09
PFUは10月8日、機密情報や個人情報の部分だけを暗号化した紙文書を作成できるセキュリティソフトウェア「DocEncrypt」を発表した。
DocEncryptは、紙文書からの情報漏えい対策に狙いを絞ったクライアント向けの暗号化ソフトウェアだ。Microsoft OfficeやPDF形式の文書を電子データのまま暗号化する代わりに、いったん画像ファイルに変換し、機密情報に該当する部分を指定してスクランブル暗号を掛け、情報を保護する。文書を受け取った側はスキャナで読み取り、DocEncryptで復号する仕組みだ。文書の一部を黒塗りする場合、原本との二重管理が必要になるが、DocEncryptではそうした手間をかけることなく紙文書からの情報漏えいを防げるという。
暗号化は、富士通研究所が開発した独自のアルゴリズムを用いて行っている。画像データを細かいブロックに区分けし、並び替えることで、圧縮や印刷、スキャンにともなう画像の劣化に左右されず復号化処理を行えるという。
特徴は、文書全体をまとめて暗号化するのではなく、例えば見積書ならば金額の部分など必要な部分だけを暗号化し、配布できることだ。暗号化キーに応じて、部門やユーザー単位で復号できる部分を制御することもできる。また、帳票などの定型文書については、あらかじめ暗号化する領域と暗号化キーをテンプレートとして定義し、効率的に暗号化/復号化処理を行うことが可能だ。
ほかに、外部アプリケーションから呼び出し可能なインターフェイスを用意するため、さまざまなソリューションへの統合も可能という。また当初はデスクトップ製品としてのリリースだが、今後、サーバや組み込み製品向けに、同様の紙文書暗号化ソフトウェアを提供していく計画があるという。
DocEncryptはまた、情報漏えい対策だけでなく、文書の改ざん防止にも利用できるという。表面は通常通り、裏面はDocEncryptで暗号化した形で印刷し、両方の内容に相違がなければ改ざんされていないことが証明できる仕組みだ。2010年2月に開始予定の、コンビニエンスストアにおける住民票/印鑑登録証明書の交付サービスにも、DocEncryptの技術が利用される予定という。
DocEncryptはWindows XP/Vista/7に対応しており、復号には300dpi以上の解像度を備えたスキャナが必要だ。PFUでは、「fiシリーズ」や「ScanSnap」を推奨スキャナとしている。価格は3万6000円、サポートパッケージは年間5400円。10月28日に出荷を開始する。
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