WAN環境での使い勝手を改善

[詳報] 新デスクトップ仮想化ソフトVMware View 4の新しさとは

2009/11/16

 ヴイエムウェアが11月20日に国内販売を開始するデスクトップ仮想化ソフトウェアの新バージョン「VMware View 4」。この製品はこれまでのバージョンとどう異なるのだろうか。また、競合製品との比較でどんな優位性があるのか。米ヴイエムウェアのVMware View製品責任者であるラジ・マレンパティ(Raj Mallempati)氏への独自取材を踏まえて、以下に解説する。

 仮想マシンとしてデスクトップ環境をサーバ側で動かし、遠隔的にこれを利用するのがデスクトップ仮想化だ。現実の導入コストを大きく左右するのは、サーバ1台当たりの稼働可能仮想マシン数(統合率)。この点でヴイエムウェアのVMware ESXが優れていることは多くの業界関係者が認めている。競合製品の「Citrix XenDesktop」を開発しているシトリックス・システムズも、XenDesktopが自社のサーバ仮想化ソフトウェアである「Citrix XenServer」だけでなく、Hyper-V、VMware ESX上でも動くことを強調。最新バージョンではVMware vSphere 4/ESX 4.0を業界で初めてサポートしたことをアピールポイントの1つとしていた。シトリックスの言い分は正しい。VMware Viewは今回のView 4で初めてVMware vSphere 4/ESX 4.0をサポートする。

 マレンパティ氏もデスクトップ仮想化用のサーバ仮想化技術としてVMware ESXが選ばれることが、VMware Viewの大きな追い風になっていることを強調する。「XenDesktopを導入するユーザーの90%がVMware ESXを利用している。ESXを使うのなら、価格的にVMware Viewのほうが圧倒的に優位」。

 VMware View 4にはEnterprise EditionとPremier Editionの2つの選択肢がある。市場予想価格はそれぞれ、日本円にして1万8000円と3万1000円(同時接続数に基づく)。この2つのエディションの違いは、高度なプロビジョニングを実現する「View Composer」、アプリケーションレベルの仮想化を実現する「Thin App 4」、そして試験的サポートの「オフラインデスクトップ」の有無にある。

vmware01.jpg VMware Viewは2つのエディションで販売される。どちらもデスクトップ仮想化環境構築用にVMware vSphere 4のライセンスを含んでいる

 EnterpriseでもPremierでも、View 4にはデスクトップ仮想化用途に限定したサーバ仮想化製品の「VMware vSphere 4 for Desktops」(機能的にはvSphere 4 Enterprise Editionに相当)とその管理製品「VMware vCenter for Desktops」が含まれている。

 シトリックスのXenDesktop 4の場合、Enterprise Editionが3万2200円、Platinum Editionが5万100円。するとView 4のPremierとXenDesktopのPlatinumを比べればView 4が安いことになる。統合率の高いVMware ESXを、XenDesktopと組み合わせて使いたいなら、この2つのライセンス料の違いはさらに大きなものになる。

 マレンパティ氏がさらに指摘するのはシトリックスが最新バージョンのXenDesktop 4で、ライセンス方式をCCU(同時接続数)からユーザー数あるいはデバイス数に変更したこと。上記の価格も「ユーザー数あるいはデバイス数」ベースだ。いずれの場合も、同時接続数に比べると、あらゆる利用構成でライセンス料は多少なりとも上昇することになる。

 マレンパティ氏はまた、XenDesktopのProvisioning ServerはVMware Viewの2倍の数のサーバを必要とすると主張する。またが数多くの製品の組み合わせであり、VMware Viewに比べてシステムの構築にはるかに多くの手間と時間が掛かるとも主張する。

View 4の「新機能」はPC over IPプロトコル

 では、VMware View 4はVMware View 3に比べて、何が変わったのだろうか。View Composerの機能はほとんど変わらず、オフラインデスクトップ機能についても、View 3と同様、試験的サポートのままだ。

 やはり大きな変更点は、「PC over IP」(PCoIP)という新たな接続プロトコルの採用につきる。VMware Viewでは、サーバで動かすデスクトップ環境と、ユーザーの利用端末との接続で、マイクロソフトのリモートデスクトップ接続プロトコルであるRemote Desktop Protocol(RDP)を使い続けてきた。RDPはWANなどの低速な接続に弱い点が以前から指摘されていた。実際、シトリックスはMetaFrameの時代から、自社のICAというプロトコルがWANに強い点を生かしてビジネスを伸ばしてきた。

 ヴイエムウェアもRDPの代わりとなる技術を、以前から模索してきた。そして今回やっと、加Teradici(テラディッチ)開発した技術を採用し、View 4でPCoIPによる接続を可能にした。

 「(これまで)WAN接続ではICAのほうが優れていた」とマレンパティ氏も認める。「PCoIPの採用で、ICAを大幅に上回ったとはいわないが、少なくとも同等の立場には立てるようになった」。

vmware02.jpg PCoIPを採用したことで、低速なWAN環境への対応を強化した

 PCoIPでは動画を含むWebページの表示を、接続速度に応じて自動的に調整できる。例えば非常に低速な接続では、動画の解像度/フレームレートを落とすとともに、動画よりもテキストを優先させ、どんな状況でもテキストだけは読めるように確保できる。また、最大4画面のマルチディスプレイ環境を提供できる。

 PCoIPでは基本的にサーバ側でレンダリングを行う。一方で、端末側のGPUなどのマルチメディア処理機能を活用する(「マルチメディアリダイレクト」などと呼ばれる)機能も、View 3に引き続き提供する。

 「3DなどのアプリケーションをPCoIPでカバーしようとは思っていない」(マレンパティ氏)。加Teradiciはサーバおよびクライアントに組み込めるチップを提供しており、VMWare View 4でもこれらのチップでパフォーマンス向上を図れるが、3Dアプリケーションなどは、管理性とパフォーマンスを両立させようとすると、クライアント側のハイパーバイザ上でデスクトップ環境を動かすなどが適しているだろうという。

 ヴイエムウェアは、RDPについても引き続きサポートしていくとしている。マイクロソフトはWindows 7/Windows Server 2008 R2でRDP 7.0という新バージョンを採用した。その後Windows XPやWindows Vista用のコードも提供開始している。これについては現在、試験的サポートにとどまるが、2010年初めには正式サポートの予定という。

 VMware View 4のPCoIPは、発表時点で米ヒューレット・パッカード(HP)、米デル、米DevonIT、米Wyse Technologiesからサポートが表明されている。そのほかの主要シンクライアント端末ベンダもこの新プロトコルに対応の予定だ。Windows XP、Windows Vistaにクライアントソフトウェアをインストールし、シンクライアント端末に転用することももちろんできる。

 米ヴイエムウェアは、最近EMC、シスコシステムズとともに発表したVCE連合の取り組みの一環として、3社の製品をパッケージ化したシステムを単一のSKU(在庫管理用商品単位)として販売するという。米HP、米デルとの間でも、1 SKUでの共同販売を計画している。日本国内でも、同様な販売手法を企画中という。

 一方ヴイエムウェアは、「ゼロクライアント」という取り組みも進めている。デジタルサイネージ用ディスプレイなどさまざまな機器に、デスクトップ仮想化クライアントソフトウェアを組み込んでもらい、デスクトップ仮想化の用途を広げようという活動だ。関連して、Google Code上では「Open Client」というプロジェクトを展開。LGPLライセンスのもとにデスクトップ仮想化クライアントのソフトウェアを提供し、さまざまな端末への移植を促している。PCoIPプロトコルは現在のところ、Open Clientのライセンスには含まれていない。これについてヴイエムウェアが今後どのような動きを見せるか、注目される。

(@IT 三木泉)

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