“イエローケーブル”を引き回していたことも
フォーティネット社長に聞く「ネットワーク屋の挑戦」
2010/01/18
「私も10BASE5のケーブルを引き回していました」。そう答えるのは、2009年10月にフォーティネットジャパンの代表取締役社長に就任した、新免泰幸氏だ。「ネットーワーク屋」が作るセキュリティ機器としての「UTM」はどこに向かうのか。フォーティネットジャパン、そしてセキュリティ機器が向かう方向のその先を聞いた。
UTMには「まだできていないことがある」
フォーティネットジャパンは統合脅威管理、「UTM」などを提供するベンダ。独自OS、ASICによるチップを用い、独自のアーキテクチャの製品を提供していることが特長だ。2009年4月には新バージョンの「FortiOS 4.0」をリリースし、「UTMの再定義」を掲げ、WANトラフィックの圧縮やプロトコルのフィルタリングなど、セキュリティ機器に新たな役割を担わせている。
「フォーティネットはネットワーク屋。この分野の企業では、セキュリティ対策はファイアウォールから始まりました」と新免氏は述べる。そこからさまざまな脅威に応じて、さまざまな技術が提供されてきた。それに追随した結果、作られたのが現在のUTMだという。この製品は日本では比較的安価で、かつ1台でカバーできる範囲が広いことから、主に中小規模の企業に受け入れられ、セキュリティ業界においても注目を集めるキーワードとなっていた。
しかし新免氏はこのUTMの現状について「まだできていないことがある」と述べる。現状、UTMの「コストメリット」以外の点が注目されておらず、この製品群の本当の魅力、「機能メリット」が十分に伝えられていないことだ。
「誤解を恐れずにいえば、いままではUTMの『コストメリット』を全面的にアピールしていた。今後ももちろんこの点を伸ばしていくが、『機能メリット』をアピールしていく」。新免氏は「日本人は慎重なので、新しいセキュリティ分野に向かうのはハードルが高く、コストメリットだけでは大規模企業には通用しなかった。その慎重だった大規模のユーザーも最近は『変わってきた』という印象。そこに向けても、今後はネットワーク屋としてのセキュリティ機器をアピールしたい」と述べた。
次に向かうのはクラウド、セキュリティ機器の仮想化対応
具体的な大規模ユーザーとはどの業種なのだろうか。新免氏はその例として、クラウドコンピューティングを提供するASP業者やデータセンタ事業者を挙げる。クラウドを利用するエンドユーザーが持つシステムの規模は小さいが、サービスを提供する事業者からみると、大規模に耐えうる製品が必要だ。このような分野では、それぞれのエンドユーザーが個別に管理できる仕組み、つまり1台の大規模向け製品が内部で仮想化されていることが望ましく、セキュリティ機器にも同様の技術が必要とされる。
「セキュリティ機器がデータセンター事業者などのクラウド向けサービスに向かうには、この仮想化がいかにやりやすい状況なのかがキーポイントだ。セキュリティ機器の根本となるOS部分が仮想化対応に向けチューニングされているか、という点も注視すべき」(新免氏)。
“ネットワーク屋”のチャレンジ
セキュリティ機器を提供する企業には、ネットワークベンダがセキュリティ機能を追加するパターンと、セキュリティベンダがネットワーク機能を追加するパターンがある。「ネットワーク屋がどうやってセキュリティにアプローチしていくのか、それはこの業界の大きなチャレンジです」と述べる。新免氏は「システムを構築するときに、一種のアプリケーションとしてセキュリティを提供しなくてはならない時代になっている。ネットワーク屋として、『サービスとしてのセキュリティ』を提供することはチャレンジングなこと」という。これには製品のインテグレーションを行うプレイヤーにも変化が必要で、「ネットワークサービスインテグレーションから、サービスインテグレーションへと、業界全体の変化が必要だ。
新免氏は「さまざまな場所で“サービス”という言葉を使い始めている。この指向の変化に、フォーティネットジャパンもおいていかれないようにしなくてはならない。今後も単なるセキュリティベンダーからの脱皮をしていく」と述べた。
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