プラグインも含めたアップデートを呼び掛け
進化し続けるGumblar、IBMの東京SOCがレポート公開
2010/02/17
日本IBMの東京セキュリティ・オペレーション・センター(SOC)は2月17日、2009年下半期(7月〜12月)のインターネット脅威状況をまとめたレポートを公開した。同社は、「マネージド・セキュリティ・サービス(MSS)」を提供し、主に日本国内の企業環境における脅威を監視している。このレポートは、その分析から得られた動向をまとめたものだ。
2009年から継続的に、Webサイトを改ざんして悪意あるサイトに誘導し、マルウェアをダウンロードさせる、いわゆる「Gumblar」攻撃が話題となっている。同社 チーフ セキュリティ エンジニア(GTS ITS ソリューションセンター セキュリティ・ソリューション マネージド セキュリティ サービス)の梨和久雄氏は、2009年10月から11月にかけて、その第2波といえる「Gumblar.X攻撃」が目立ったと述べた。
日本IBMがいうところのGumblar.Xは、基本的な手法は、2009年5月に発生したGumblar攻撃の第1波と同じだ。既存のWebサイトを改ざんして悪意あるスクリプトを仕込み、そこにアクセスしてきたクライアントを感染用サイトに誘導する。そして、脆弱性が残ったままのPCをマルウェアに感染させる「ドライブ・バイ・ダウンロード」という手法を用いている。
2009年5月の攻撃では、誘導先のサイトやそこでダウンロードするコードがほぼ「固定」で特定が容易だった。これに対しGumblar.Xでは、誘導先がさまざまな場所に散らばっている。その多くは攻撃を受けて改ざんされたサイトで、「踏み台から踏み台へと誘導している。このため、5月の攻撃では特定のIPアドレスをブロックするなど、対策のやりようがあったのに対し、Gumblar.Xでは誘導先が散らばっており、フィルタをかけるのが難しい」(梨和氏)。
解析を困難にする手法も複数用いられている。例えば、マルウェアをホストしているサイトでIPアドレスを記録しておき、同一のIPアドレスには複数回攻撃を行わない仕組みがその1つだ。また、改ざんされたWebから中継サイトを介し、マルウェアをホストしているサイトに至るまで、攻撃者が定めたアクセス経路を順番にたどっていかない場合は、解析対象となるマルウェアがダウンロードされないような仕組みも確認された。マルウェアそのものの難読化も施されているうえ、内容が頻繁に変わるため、ウイルスのシグネチャファイルの作成も困難になっているという。
もう1つ懸念すべきことがある。ドライブ・バイ・ダウンロードに悪用される改ざんされたWebサイトが、日本国内に比較的多いということだ。2009年前半に話題となった「Conficker」では、国内の改ざんされたWebサイトの割合は全世界のうち0.5%程度だった。これに対しGumblar.Xの場合、日本国内のサイトが占める割合は4%に上り、世界で4番目に多かったという。
Gumblar/Gumblar.Xが狙う脆弱性の多くは、Webブラウザのプラグインであることも明らかになった。多くの企業では、Windows OSについてはパッチ管理の仕組みを整えているが、Webブラウザやプラグインとなると行き届かないことが多い。そこにつけ込み、Adobe Reader/Acrobatの脆弱性を狙う不正なPDFファイルが発見されているという。
東京SOCの検知情報では、Gumblar.X攻撃を受けたユーザーの実に51%が、実際にマルウェアをダウンロードしてしまったことが確認されている。つまり、それだけの数のPCが、脆弱性が存在するままのアプリケーションを利用しているということだ。梨和氏は、OSに比べると意識されにくく管理が困難なものの、「プラグインも含めてアプリケーションのアップデートが必要だ」と述べている。
なおアドビシステムズは16日、Adobe Reader/Acrobatに脆弱性が存在することを明らかにし、Reader/Acrobat 9.3.1またはReader/Acrobat 8.2.1へのアップデートを呼び掛けている。
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