ノートン2011を発表、その裏にあるネット犯罪の現状は
シマンテックの調査結果に見る「ネット犯罪への無力感」
2010/08/25
シマンテックは8月25日、コンシューマ向けセキュリティ対策ソフトウェアの最新版「ノートン インターネットセキュリティ2011」および「ノートン アンチウイルス2011」を発表した。記者発表会ではシマンテックが行った「ノートン ネット犯罪レポート:人々への影響」の発表と解説が行われた。本記事ではその調査報告を中心にお伝えする。
ネット犯罪:日本の場合、海外の場合
シマンテックが行った調査結果の発表は、インターネット上で子どもたちの安全を守るための情報を提供するConnectSafely.org共同ディレクターで、ジャーナリストのアン・コーリア氏が担当した。
「ノートン ネット犯罪レポート」は、14カ国で7066人の18歳以上の成人を対象とし、サイバー犯罪の規模を測るために行われた。
このレポートによると、世界の成人の65%がなんらかのネット犯罪の被害を受けたことがあるが、被害者は無力感に支配されており、「犯罪者は捕まると思えない」と感じているという。日本ではネット犯罪の被害に遭ったことがあると答えたのは36%と、諸外国に比べ低い数字が出ているが、ネット犯罪を解決していないと答えたのは60%で、諸外国での解決比率(31%)に比べ2倍近いことが特徴である。
また、コーリア氏はネット上での自己防衛が有効に機能していないという点も指摘した。サイバー犯罪から身を守るために努力している手段として、パスワードを教えない(75%)、むやみに個人情報を明かさない(73%)などは常識的ルールとして問題はないが、「自分で分かっている有名ブランドのサイトだけアクセスする(27%)」「友人から勧められたサイトに制限する(29%)」「ウェブアドレスで『http』のあとに『s』が付いているか確認する(29%)」など、Gamblar系に代表される現在の脅威にそぐわないルールを実践しているユーザーが目立ったという。
コーリア氏は、ネットショッピング専用のメールアドレスを使用する、専用のクレジットカードを作る、セキュリティ対策ソフトのWebサイトブロック機能を利用するなどを新たなルールとして提案した。
違法ダウンロードする場所で待ち構えるサイバー犯罪者たち
続いてネット犯罪の現況を解説した、シマンテック ノートン・サイバーセキュリティ リードアドバイザーのアダム・パーマー氏は、「サイバー犯罪が多いことも問題だが、一番大きなポイントは、ユーザーがこの現状をあきらめはじめていることだ」と述べる。
日本のユーザーはネット犯罪で警察や銀行などに通報するなどの対応を行っているが、元アメリカ海軍法務部検察官であるパーマー氏をもってしても「サイバー犯罪はどの国の警察も頑張っているが、量、複雑さから、犯罪者を捕まえることは難しい」と述べる。そのためまず必要なことは「正しいセキュリティ対策知識を持ち、個人がセキュリティツールを用いて守ること」とした。
インターネットのモラルについてもパーマー氏は言及する。今回の調査ではインターネット上で非倫理的な行動を起こす人が少なからず存在することを受け、「サイバー犯罪者たちは、人々が違法ダウンロードを行う場所で待ち構えている」と指摘した。
パーマー氏は「90%が“ネットは安全でない”と感じているという結果だが、セキュリティ専門家としては、このような状況を受け入れることはできない。より安全な空間を作るために、守る側もそれぞれがセキュリティを意識し、責任を持つべきだろう」と述べた。
ノートン2011シリーズのポイントは検出と削除
この現状を踏まえ、シマンテックはノートンシリーズの2製品を発表した。新バージョンのポイントはパフォーマンスで、2010年版に比べてもスキャン時間の短縮が図られているという。また、偽セキュリティソフトや詐欺ソフトなどのマルウェアを積極的に検知、そして削除を行う「ノートン パワー イレイサー」や、mixiやGREEの使用状況、またオンラインチャットの履歴などを確認できる「ノートン オンライン ファミリー」を無料で配布する。
「ノートン インターネットセキュリティ2011」および「ノートン アンチウイルス2011」は8月27日(金)より、パッケージ/ダウンロードで日本先行発売する。価格はオープン(推定小売価格はそれぞれ6480円、4980円から)。発売に合わせ、大手町メトロスクエアにてネット犯罪の実態を展示する「Black Market」を8月27日まで設置する。
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