CTO スティーブ・へロッド氏が語る

PaaS、SaaSをヴイエムウェアはどうしたいのか

2010/09/03

 米ヴイエムウェアは、もはやサーバ仮想化の企業ではない。SpringSourceのほか一連のアプリケーション・ミドルウェアのベンダを買収し、さらには電子メール/コラボレーション・ソフトウェアを提供するZimbraを買収することで、PaaSとSaaSレベルのクラウド・コンピューティングに本格的に関わるようになった。その目標は、同社なりのやり方で、IaaSレベルに加え、PaaS/SaaSレベルで企業内ITとクラウド事業者のITが共通基盤を持てるようにすることだ。CTOのスティーブ・へロッド(Steve Herrod)氏が、これらの取り組みについて、日本からの記者の質問に答えた。

ミドルウェアの今後の展開は

 ヴイエムウェアは今回のVMworldで、一連のミドルウェアに「vFabric」という製品ファミリ名を与えたことを発表した。これに含まれるのはtc Server、GemFire、RabbitMQ、ERS、Hypericだ。現在のところSpring向けに提供しているが、ほかの言語やフレームワークに向けても展開していきたいとしている。

herrod01.jpg 米ヴイエムウェアCTOのスティーブ・へロッド氏

 「現在のところ、vFabricはSpringと対になっている。RabbitMQやGemFireといったサービスはほかの言語やフレームワークでも使える。当社は今後、J2EE、Ruby on Rails、PHPなどのサポートも考えており、フレームワークは違っても、同じサービスを使えるようにしていく。vSphere上ではどんなアプリケーションも動かすことができる。例えばWebSphereのアプリケーションはvSphere上で素晴らしい動作をする。しかし、いくつかのフレームワークについては、vSphereともっとコミュニケーションがとれるようにすることができると考えている」

 データベースに関しては、GemFireを手にしたことで、データベースおよびそのほかのデータを対象にしたデータキャッシングを可能にしている。また、おもしろい動きとしては、key-value storeのRedisプロジェクトをヴイエムウェアは支援している。

 「ヴイエムウェアではOracleやSQL Server、MySQL、Postgresなどの主要データベースをすべてサポートしてきた。だが、vFabricにはキャッシング機能を持たせている。これで、どんなデータベースのデータについても、アクセスを高速化することができる。従って、既存のデータベースの価値を高めることができる。一方、顧客は新しいタイプのデータベースも求めている。当社はRedisの開発者を雇い入れた。既存のデータベースのサポートをやめたいわけではなく、Springアプリケーションが新しいデータベースを活用できるようにしたいというのがその目的だ」

VMware vSphereはミドルウェアとどう連携する?

 では、VMware vSphereとミドルウェアの連携はどのように進められているのか。

 「SpringOne(10月に開催のSpringSourceによるカンファレンス)で一連の発表を行う。具体的な統合作業は、3つの分野に分かれる。1つは自動プロビジョニングだ。(開発者が)Javaファイルを用意し、どうデプロイしたいかを伝えれば、vSphereが自動的に仮想マシン群を作成し、これを起動してネットワークに接続することができる」。Webサーバ、アプリケーションサーバ、データベースなど複数の仮想マシンで構成されるアプリケーションをシンプルな手順でデプロイできるようになるという。

 「2つ目はスケーリングだ。例えば現在、Webサービスの負荷が高まった場合、アプリケーションサーバの追加による負荷分散を行うことがある。この機能をvSphereに直接組み込む。仮想マシンをコピーし、リソース設定を変更することで、Javaアプリケーションを自動的にスケールさせられる」。F5ネットワークスなどのベンダは負荷分散製品で、これに近いことを実現できるようにしている。「しかし現在のところ人的作業が介在している。パフォーマンスが落ちると、人が新しい階層を追加し、F5の製品に、これを負荷分散の対象として加えるように指令する。新たな世界では、こうした作業はすべて自動化される。人が関わることなく、自動的に伸縮ができるようになる」

 「3つ目の分野は可視性だ。これはすでにSpring管理ツールのHypericで提供し始めている。このツールはアプリケーションで何が起こっているかを正確に把握できる。Webリクエストやデータベースアクセスの監視ができる。今回できるようになったのは、vSphereからの情報の把握だ。ストレージ装置の情報を得たり、どんなネットワークアダプタが使われているかを見たりできる。これらの情報をまとめれば、Webサイトが遅くなったときに、簡単に診断ができるようになる。すなわち、Javaコードからハードウェアに至るまでの情報を1カ所で手に入れることが難しかったが、この統合によってやりやすくなる」。ヴヴイエムウェアは「vCenter AppSpeed」という製品を持っている。これもアプリケーションからハードウェアまでの多階層にわたるさまざまな情報を取得し、問題の根本原因を診断できるようにしたツールだ。「しかし、AppSpeedは一般的アプリケーションを対象としている。Hypericはカスタムアプリケーションに対応し、開発者が書いたコードを理解できる。データをはるかに詳しく提供できる」

Zimbraの存在価値とは

 電子メール/コラボレーション・ソフトウェアのZimbraについては、今後どのような展開を考えているのか。

 「vSphereの顧客の多くが、その上でExchangeやLotus Notesを使っている。しかしZimbraがいいのは、クラウドのためにつくられたアプリケーションだということだ。これには2つの意味がある。1つはvCloudのデータセンター事業者パートナーが、仮想マシンに加えてコラボレーション・サービスを提供できる。これはパートナーにとっていいメニューになる。第2に、当社は数週間前、Zimbraを仮想アプライアンスとしても提供開始した。顧客はこれをダウンロードして、簡単に電子メール/カレンダ機能を提供できる。さらに企業のコラボレーション環境では多くの場合、電子メールやカレンダがほかのメンバーとのやり取りの中心的な手段となっている。徐々に、こうした環境で、ドキュメントも共有する動きが強まっている。ちょうどSharePointのようにだ。Zimbraのオープンソースコミュニティもこうした機能の強化を進めている。従って、一部の顧客は、Zimbraを使ってドキュメントの共有ができる。ただし、Zimbraは単純に、クラウド・アプリケーションのいい例だとも考えている。プライベート・クラウドに導入することも、パブリック・クラウドで走らせることもできる。そして多くのユーザーとともにリッチなコラボレーションを行うことができる」

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(@IT 三木泉)

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