国内におけるIonix製品ファミリ事業を強化
VMware普及で動的統合運用管理の時代が到来、EMC
2010/11/17
EMCジャパンは11月16日、国内における統合運用管理製品群「EMC Ionix」の事業を強化していくことを発表した。サーバ仮想化とプライベート・クラウド化の進展に伴う新たな運用管理ニーズの充足に取り組む。
Ionix製品ファミリは約50もの製品で構成されるIT運用管理ソリューション。以前は「Smarts」という名称で、3年以上にわたって同社が提供してきた。ネットワークからアプリケーションまですべてのレイヤをカバーし、構成管理から障害対応、インシデント管理などが行える。以前から提供してきた製品群に改めて注力する理由は、国内でサーバの仮想化が進み、コンピューティングリソースをプール化して使うユーザーが増えつつあることにあるという。
「サーバ仮想化環境ではハードウェアとソフトウェアが切り離され、ライブマイグレーションや動的負荷分散などでアプリケーションはいつ場所を移動するか分からない。ハードウェアの障害がどのサービスにどれくらい影響を与えるかも把握しにくくなる。運用管理製品には、IT環境の動的な構成変化に追随できるものが求められる」とテクニカル・コンサルティング本部 プロダクト・ソリューションズ統括部長の糸賀誠氏は話す。そしてIonixは、まさにこうした環境を管理するために生まれた管理製品群だとする。
Ionixは、おもに「可視化」(ITリソース間の依存関係検出、ITインフラとサービスの関係を可視化)、「分析」(動的に変化するリソース利用環境で、障害の根本原因とビジネスインパクトを特定)、「自動化」(サーバ、ネットワーク、ストレージの統合・自動化されたプロビジョニングと変更管理)といった機能を果たす。
Ionixの仕組みについてはSmartsに関する記事で以前説明したが、同製品群はSNMPなどでIT環境の構成を常時(デフォルトでは4分に1回)チェックするようになっている。ネットワーク機器やサーバだけでなく、ハイパーバイザ、OS、アプリケーションプロセスを含めた相互依存関係を取得し、この情報を維持する。常時構成管理をやっているようなものだ。構成が変化したことが分かると、さらに詳細な情報を取得する。障害発生の場合、Ionixは独自の相関分析技術を適用して、障害の根本原因とその影響を自動的に表示する。
そのほかIonix製品群には、サービスデスク(インシデント管理)製品やセルフサービスポータル構築ツール、セキュリティ構成可視化ツールなどがある。
米EMCは今年、Ionix製品群の一部、特にアプリケーション管理やサービス管理にかかわる7製品の開発を子会社である米ヴイエムウェアに移管した。米ヴイエムウェアはこれを自社のvCenter管理製品群に組み込み、ほかのvCenter製品群との統合を進めている。EMCはインフラ周りのIonix製品群の開発を継続するとともに、ヴイエムウェアに移管したIonix製品を含むvCenter製品群との親和性を維持していく。
これは、VMware vSphereユーザーにIonix製品群の導入を働きかけるための、高度な作戦のように見える。vSphereを大規模に利用するユーザーは、早かれ遅かれクラウド的な利用を支援する管理ツールを求めるようになる。ユーザーはvSphere環境のためにまずこうしたツールをヴイエムウェアの製品に求めるが、さらにインフラを含めた包括的な運用管理や障害対応をしたいと考えたとき、ヴイエムウェアの管理製品と補完的であり、かつ親和性の高いEMCのIonixにも目を向けるはずという読みなのではないだろうか。
国内では、ヴイエムウェアに移管した旧Ionix製品の、ヴイエムウェア日本法人による発売時期は未定という。従って当面、EMCジャパンのみがすべてのIonix製品を販売することになる。
EMCジャパンは、Ionix製品群の販売体制も強化する。これまでIonixの構築・保守に関する戦略パートナーはNEC、CTC、ユニアデックスの3社だったが、新たにネットワンシステムズが加わった。EMCジャパンは今後、10社程度に戦略パートナーを拡大し、より多数のユーザー企業をカバーできるようにしていきたいとしている。
なお、Ionix製品群の管理対象は、ヴイエムウェアとEMCの製品に限られるわけではない。この2社の製品管理ツールとの統合度を高める作業は進んでいるが、物理サーバ環境を含め、他社の製品を管理することも可能だし、ただし、事実上、Ionixを利用したいユーザーの大部分はvSphereユーザーだと考えられることから、ヴイエムウェア環境に注力していきたいという。
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