垂直統合トレンドは有利? 不利?

「仮想化対応スイッチ」とブロケードの日本戦略

2011/02/14

 ブロケードコミュニケーションズシステムズは2010年11月、新世代のイーサネットスイッチ製品「Brocade VDX」を発表し、展開を開始している。この製品、そして今後のブロケードのスイッチが共通に搭載する新技術群「Virtual Cluster Switching(VCS)」は、ブロケードの日本におけるビジネスにどのような影響を与えるのか。日本法人代表取締役社長の青葉雅和氏に聞いた。

――ブロケードによる日本でのVDXおよびVCSの推進は、企業やサービス事業者におけるネットワーク担当者から見ると、従来のネットワークインフラを大幅に変えろというメッセージでもあると思うが、この人たちがいままでのやり方を大きく変えなければならない理由を、どのように説明するのか。

brocade01.jpg ブロケード日本法人代表取締役社長の青葉雅和氏

 企業のITがコスト高になり、企業のトップからすると低減しなければならない状況になってきた。そこにサーバ仮想化が登場し、TCO削減の武器として注目されるようになってきた。これにより、ネットワークにも、仮想化のための要件が課されるようになってきた。ネットワークの担当者からすると、「(ネットワーク構成を変えるのは)おかしいのではないか」と思うかもしれない。しかしこれは、ネットワーク要件からではなく、システムやアプリケーション(を仮想化しなければならないという)要件からきたことだ。

 もともとブロケードは、SAN市場でマーケットシェアが高い。このため、(大企業や事業者の)サーバ、ストレージ責任者との関係が深い。こうした人たちのニーズに応えるために、今回の取り組みを進めている。ネットワークは管理が複雑になり、コスト高にもなってきた。この問題を解決するためにファウンドリ・ネットワークスを買収し、SANとネットワークの統合を進めてきた。

――VCSという技術は、ネットワークをフラットにすることが基本的なテーマだと理解している。フラットなネットワークをつくるべき理由は何なのか。

 これまでのネットワークの常識は、コア、アグリゲーション、エッジの構成だ。しかし特にデータセンターの中では、これだと仮想化に向けてネットワークが機能しない。サーバ仮想化システムがフラットなネットワークを要求している。さらにいえば、データセンターのなかだけでなく、データセンター同士やバックアップのデータセンターを含めてフラットに結び、顧客がデータの所在をできるだけ意識しないで済むようにするというのが、その次の進化の1つの姿だ。

――シスコ・システムズをどれくらい意識しているのか。

 今回のVDXという製品は、データセンター事業者と、大企業で仮想化を推進する顧客をターゲットとしているのでシスコと重なる。ただし、日本のベンダもこの分野では非常に強いので、そちらと当たることのほうが多い。シスコはシャーシ型しかなく、高価だ。現在の案件ではボックス型のレイヤ2スイッチで競合することが多い。これはデータセンターが生き残りのため、できるだけコストを安く、スモールスタートでやりたいということの表われだと個人的には思っている。シャーシ型で大規模投資をするというのは、最近あまり見ない。

――VDXをはじめとする今後のブロケードのスイッチ製品の、他社製品に対する優位性を、どう訴えていくのか。

 仮想化に対応して、ホストのプロファイルを移動できるようなスイッチは、これまで大型に限られていた。これをボックス型の製品でやる。ユーザー企業は、当初需要が少ない段階では、スモールスタートができる。これを後でいくらでも増やせる。要するにクラウド的な展開だ。データセンター事業者は顧客にはクラウド型のサービスを提供するにもかかわらず、自社が利用する機器についてはいきなり大きなものを買わなければならないというのはナンセンス。「ポート・オンデマンド」という考え方で、当社はSANではこの考え方に基づく製品を出していたが、LANでは初めてとなる。

――IT業界では垂直統合が進んでいるが、ブロケードは不利なのではないか。

 垂直統合はたしかにトレンドだ。だが大規模なユーザー企業は、ヘッジしたいので1社からすべてを調達するケースは少ない。すると、データセンター内には垂直統合型の仕組みが複数入る。それで横にも繋ぎたいというと、間違いなくオープンな仕組みが必要になる。サーバやハイパーバイザでも1社ということは少ない。サービス事業者は、技術がある海外の企業と価格で競争していかなければならないので、オープンな方向にいくしかない。

――今後はサーバベンダに対すをるOEM供給元というよりも、独立ベンダとして、潜在顧客にリーチすることが増えるのか。

 SAN製品だけの時代よりもそうした活動の比率は高くなるが、実際は両方だ。ネットワーク部隊のいるユーザー企業はいいが、よほど大きなところでないかぎり、サーバの部隊がネットワークも見るケースが多い。こういう意味で、ネットワーク製品はサーバとともに入っていくことが多い。ただし、ネットワークについて別個に議論し、意思決定できる企業にたいしては、直接的な提案もやっていく。2010年11月からの新年度は、ハイタッチ部隊を倍増し、大企業やサービス事業者には直接ソリューションを提案していく。サービス事業者ではネットワーク製品の選択で現場のエンジニアが判断することも多いが、ネットワークの世界で知名度の低いベンダだと稟議で苦労する。ブランド認知度を高める努力をしていく。

(@IT 三木泉)

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