パートナー介した「コーポレート・コントロール」の提供も視野に
水平展開を継続するシマンテック
2011/03/08
シマンテックは3月8日、2011年度に向けた戦略説明会を開催した。「セキュリティ」と「ストレージ、バックアップ」という2つの領域を軸に、HPのほか、国内ではNECや富士通、日立製作所といったパートナーとの協業関係を引き続き強化し、「2014年には売り上げを倍に伸ばしたい」(同社代表取締役社長 河村浩明氏)という。
河村氏はまず、新種のマルウェアが急増し、定義ファイルの数は10年間で1600倍にまで増加していること、そしてStuxnetに代表される非常に巧妙なマルウェアが登場していることに触れた。「こうしたセキュリティ脅威に対抗するには、新しいイノベーションが必要だ」(河村氏)。
それを具現化する製品が、2011年下期に販売予定の「Symantec Endpoint Protection 12」(SEP12)だ。SEP12は、従来のセキュリティ製品が実装してきたブラックリスト方式、つまりシグネチャに基づく検出に加え、ユーザーの評判を集約して不正プログラムかどうかを判断する「レピュテーション」、プログラムの振る舞いを元に検出する「ビヘイビア」という2つの技術を加えることで、ゼロデイ攻撃を防ぐという。
シマンテックではSEP12や「Backup Exec System Recovery」の次期製品の投入により、ディストリビューション・チャネルやSMB市場におけるシェア拡大を狙う。
また、安全なモバイル環境の実現に向けた取り組みも進める。同社は2月にNTTドコモとの協業を発表し、「インテル アンチセフトテクノロジー」(Intel AT)技術を搭載したノートパソコンを対象にした情報漏えい対策ソリューションを開発する方針を明らかにしている。もしPCが紛失・盗難などに遭った場合、NTTドコモのFOMA回線を通じて、リモートから強制的にシャットダウンしたり、HDD内のデータへのアクセスを無効化する仕組みだ。
河村氏によると、その先には「Next Generation Mobile Network Protection」という構想が控えている。現在、不適切なコンテンツを子供に見せないようにする「ペアレンタル・コントロール」という機能が提供されているが、これと同じような仕組みを企業向けにも展開。通信事業者と連携し、不正な操作を察知して防御する「コーポレート・コントロール」という仕組みを提供する計画だ。
これらの仕組みは、シマンテック単独ではなく、パートナーと連携して提供する「エンベデッドソリューション」の例になるという。
同様にクラウド市場に向けても、パートナーによるクラウド展開を支援。富士通マーケティングが、Symantec Endpoint Protectionを採用して展開する「Business Security Technical Service」のように、パートナー各社のクラウド/SaaSをサポートするとした。
一方で、シマンテック自身もクラウドサービスを展開していく。すでに「Symantec.cloud」を通じてセキュリティ保護機能をサービスとして提供しているが、バックアップやアーカイブ、情報漏えい防止などにサービスの幅を広げていくという。さらに、複数のデータセンターをまたいで透過的にデータを扱うことができる技術「Enterprise Object Store」(EOS)の提供も予定している。
河村氏はこうした施策を、1社垂直統合型ではなく、あくまでパートナーエコシステムを通じた水平展開を通じて提供していくことを強調。協業を通じてセキュリティおよびストレージ・バックアップソフトウェアでナンバーワンの地位を目指すとした。
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