アプリケーションのHTML5化などの技術を紹介
米ヴイエムウェア、Android端末の仮想化は数カ月以内に提供へ
2011/08/31
将来の業務用IT環境は、現在のように端末に依存するものであってはならない。ポストPCの時代には、ユーザーが多様な端末を場面に応じて使い分けながら、一貫したアプリケーションやデータの活用ができるものでなければならない ――。米ヴイエムウェアのCTOであるスティーブ・ハロッド(Steve Herrod)氏は8月30日(米国時間)、VMworldでこの目的に向けた同社のさまざまな取り組みを、基調講演のなかで説明した。その中にはスマートフォンの仮想化、アプリケーションの「HTML5化」、エンタープライズ版のDropboxともいえるデータ同期サービスなどが含まれている。
スマートフォンの仮想化とは、スマートフォン自体にハイパーバイザを導入し、複数の端末として使えるようにする技術だ。「Mobile Virtualization Platform(MVP)」と呼ぶ仮想化技術を、モバイル端末向け管理ツール「Horizon Mobile Manager」と組み合わせ、「VMware Horizon Mobile」と呼んでいる。
これにより、企業の社員は物理的には1台のスマートフォンで、個人用と業務用の、2つの仮想スマートフォン環境を使えるようになる。企業は、業務用のスマートフォン環境に対して業務アプリケーションや業務データを、会社としての管理ポリシーに基づいて社員に提供できるようになる。ハロッド氏の講演におけるデモでは、ユーザーは画面上のアイコンをタップするだけで、個人環境と業務環境の間を行き来していた。
また、業務環境に最初にアクセスしたユーザーが、SMSのメッセージに従ってアプリケーションカタログにアクセスし、業務用のアプリケーションを自分でインストールしたり、社内サーバから同期された自分の業務用ファイルにアクセスできる様子が紹介された。企業は、個人環境についてはユーザーの自由にまかせる一方で、業務環境については自社のポリシーを適用できる。端末の紛失や盗難時には、業務環境とその上のファイルをすべて遠隔的に消去することができるという。
ヴイエムウェアは現在、Horizon Mobileに関してLG、サムソン、ベライゾン・ワイヤレスと提携しており、MVP搭載Android端末と対応サービスが、数カ月以内に提供され始めるとしている。
ちなみに、デスクトップ仮想化製品「VMware View」のクライアント側ソフトウェア「VMware View Client」については、現在ヴイエムウェアはiPad版、Android/Cisco Cius版を提供している。また、ワイズ・テクノロジーのPocketCloudは、iPhone、iPod touch、iPad、Androidに対応している。
端末やOSの制限からの解放をどう実現するか
ハロッド氏はHorizon Mobileに見られるように、業務用のアプリケーションやデータを、端末やOSの制限から解放して各ユーザーに紐付けて提供し、ユーザーがいつでも、どこでも、どんな端末でも、必要に応じて仕事ができなければならないと強調。こうした環境を提供するための要として、「Horizon Application Manager」を紹介した。
「Horizon Application Manager」は、ヴイエムウェアが5月に発表した管理ツール。最初のバージョンでは、社外SaaSのアプリケーションを対象に、アプリケーションカタログおよびユーザーによるセルフサービスのアプリケーション利用設定(プロビジョニング)機能を提供、さらにその裏で動く認証連携によって社内ID/パスワードによるシングルサインオンを実現した。米国などでは即時提供開始の新バージョンでは、社外SaaSに加えて、アプリケーションストリーミングのThinAppによる社内Windowsアプリケーションも対象とすることができきるようになった。今後はVMware Viewで提供されるWindowsアプリケーションにも対応する予定。さらにAndroidアプリにも対応して、ユーザーがAndroid端末でアクセスする際には、この端末で利用可能なアプリケーションだけを掲載したカタログを表示できるようにする。
ThinAppについては、既存のPCのMSIやISOのデータを自動的にスキャンして、アプリケーションパッケージを自動作成する「Project ThinApp Factory」という取り組みも進行中だ。
エンタープライズ版Dropboxも開発中
ヴイエムウェアは、自社のコラボレーションソフトウェア「VMware Zimbra」と、ファイルバックアップサービス「Mozy」をベースに、エンタープライズ版Dropboxとも呼べるようなサービスも開発中だ。「Project Octopus」と名づけられた開発プロジェクトで、企業は個々の社員のユーザープロファイルに紐付ける形で各人の業務用ファイル/データを管理、さまざまな利用端末に対して自動的なデータ同期が行われるようにできる。上述のデモで、Android端末に対して自動的にデータが同期される様子が示されたが、それはこの技術に基づくものだ。
さらに革新的なのは「Project AppBlast」。これはあらゆるWindowsアプリケーションをHTML5にレンダリングして利用できるようにする技術。言い換えれば、HTML5対応Webブラウザさえあれば、どんな端末からでもすべてのアプリケーションが使えるようになるというものだ。
基調講演のデモでは、Android端末上でExcelのスプレッドシートを、Excelを使わずに編集する様子が紹介された。これが実現すれば、ハロッド氏の言う「端末やOSの制限からの解放」に向けた大きな進歩となる。企業は、社員に対してそれぞれの目的のためのアプリケーションを1種類ずつ用意しさえすれば、社員はそのアプリケーションをどんな端末からでも利用できるからだ。
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