箱ものの「足し算」から「引き算」へ
2000年以前のセキュリティ対策に立ち返れ――日本マイクロソフト
2011/09/15
マイクロソフトは9月14日、9月の月例セキュリティ更新プログラム5件を公開した。この日行った説明会において、同社チーフセキュリティアドバイザーの高橋正和氏は、2011年上半期に発生したセキュリティ事例を振り返り、「もう一度、ネットワークセグメントのハードニングなど、ネットワーク設計から見直すことが必要だ」と述べた。
Security NEXTのまとめによると、2011年に国内で発生したセキュリティ事件の傾向は、それ以前とあまり変わらない。依然として情報漏えいの原因の大半は、紙媒体を介した、紛失や盗難によるものだ。「PC側でのセキュリティ対策の必要性がよくいわれるけれど、実は紙媒体のハンドリングに問題がある」(高橋氏)。
一方、全世界的なセキュリティ事件の傾向を見ると様相が変わってくる。セキュリティ企業や政府関係のWebサイトなど、これまで管理がしっかりしていると思われていたサーバへの不正侵入が目立ったという。
主にターゲットとなったのはWebサーバとデータベースで、全体の約70%を占めた。こうした状況を踏まえて高橋氏は、「古典的な公開サーバに対するセキュリティ対策がとても大事になる。公開サーバのインベントリ情報管理ということも含め、基本的なところを地道にやっていく必要があるのではないか」と提言した。
同氏はこの10年の間、セキュリティ対策といえば「何か箱ものを入れること」に終始してきたのではないかと指摘。もちろん、こうした「足し算」のセキュリティにも意味はあるが、一方で危険なところを削っていく「引き算」のアプローチにも目を向けるべきだという。特に、標的型攻撃や新しいタイプの攻撃(いわゆるAPT:Advanced Persistence Threat)のように、公開セグメントを飛ばして社内セグメントに直接侵入してくる攻撃に対しては、引き算型アプローチによって被害を最小化していく試みが有効ではないか、というわけだ。
「機材に頼るだけでなく、2000年以前のセキュリティ対策に立ち戻って、ネットワークやシステムの設計を見直し、ツールの適切な配置を考えるべき」(同氏)。
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