対策に向けた設計・運用ガイドの改訂版を公開
「標的型攻撃」をきちんと分類し、適切な設計、対策を――IPA
2011/11/30
情報処理推進機構(IPA)は11月30日、標的型攻撃への対処を念頭に置いたドキュメント「『新しいタイプの攻撃』の対策に向けた設計・運用ガイド」の改訂第2版をWebサイトで公開した。
IPAでは、ソフトウェアの脆弱性を悪用し、複数の既存攻撃を組み合わせ、ソーシャルエンジニアリングにより特定企業や公的機関を狙う執拗なサイバー攻撃を「新しいタイプの攻撃」と定義している。
この手の攻撃は、既知の手法を組み合わせて攻撃を仕掛けてくるため、必ずしも「新しいタイプ」という表現は的確とは言えない。だが少なくとも、「情報を盗み出す」などの明確な目的を持ち、その達成に向けて執拗に攻撃してくるという点で、ウイルス/ワームなどの不特定多数を狙った攻撃とは一線を画している。その意味で、最近頻繁に報道されている、政府機関や企業を狙った「標的型攻撃」も、新しいタイプの攻撃に分類される。
IPAは2011年8月に、こうした攻撃の脅威が高まっていることを踏まえ、「『新しいタイプの攻撃』の対策に向けた設計・運用ガイド」の初版を公開した。この中でIPAは、従来から行われてきたソフトウェアのアップデートやウイルス対策ソフト、ファイアウォールの導入といった対策、いわゆる「入口対策」では防御しきれないと指摘。入口対策をしっかり行った上で、ネットワーク設計を根本から見直し、重要情報が盗み取られるような事態を避けるための「出口対策」の必要性を訴えている。
改訂版ではまず、どのようなものでも「標的型攻撃」とひとくくりにせず、主に金銭目的で個人情報を盗み取る「不特定目標攻撃」と、国の経済や安全保障などに影響を及ぼす組織情報の窃取を狙った「標的型諜報攻撃」の2種類に分類。それぞれの狙いや特徴を理解した上で対策を取るよう呼び掛けている。
合わせて、セキュリティ対策を後付けするのではなく、プロジェクト計画時やシステム設計時にセキュリティに必要な作業を洗い出せるよう、WBS(Work Breakdown Structure)のサンプルを追加した。
さらに、出口対策として新たに、攻撃者が送り込んだRAT(Remote Access Trojan)が外部と行う通信の検知/遮断を行うための設計手法と、攻撃目標となる重要サーバの防護策という2項目を追加した。
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