将来的には可視化、自動化へ
アプリの視点で一元管理――F5がセキュリティ機能強化へ
2011/12/21
F5ネットワークスジャパンは12月21日、同社のネットワークプラットフォーム「BIG-IP」に搭載している専用OS「TMOS」の機能を強化し、セキュリティにフォーカスしていく方針を明らかにした。
同社代表取締役社長アリイ・ヒロシ氏は、既存のセキュリティ対策は、ポイントごとに対策を実装するサイロ型となっている点が課題であると指摘。「F5では、ネットワーク上に統合セキュリティコントロールポイントを配置する、ユニファイド・セキュリティ・コントロールの実現に向けてソリューションを拡充していく」と述べた。
BIG-IPは、アプリケーションプロキシを核としたネットワーク制御製品だ。負荷分散やトラフィック制御といったレイヤ7スイッチとしての機能に加え、圧縮やTCP最適化といった手法により、アプリケーション配信を高速化する。同時に、認証、認可によるアクセス制御やWebアプリケーションファイアウォール(WAF)といったセキュリティ機能も提供する。これに、セキュリティコントロールの役割も担わせるという構想だ。
その際に強みとなるのが、アプリケーションの内容を理解した上でトラフィックを制御できることだという。
昨今、インターネットからの攻撃の多くは、外部からもアクセス可能なWebサービス/Webアプリケーションをターゲットにしている。「ファイアウォールやIDS/IPSといった、ネットワークレベルの対策では防御は困難だ」と、同社シニアソリューションマーケティングマネージャの帆士敏博氏は説明した。外部と内部の橋渡しを行い、アプリケーションの内容を理解できるBIG-IPにセキュリティポリシーを集約させることで、アプリケーションの視点に立った防御を一元的に適用できるという。
「どの程度の機密性が必要かは、アプリケーションの性質やそれをどのように使わせるかによって変わってくる。セキュリティ対策には、ユーザーがどんなデバイスでどうアクセスしているかも含めたアプリケーションの視点が不可欠だ」(帆士氏)。
BIG-IPは製品の性質上、マルウェア対策を中心とするエンドポイントの保護まではカバーできない。しかしWebアプリケーションを狙った攻撃を検出し、改ざんによるマルウェア拡散や情報漏えいを未然に防ぐほか、ユーザーの権限に応じて不必要なアプリケーションへのアクセスを制御し、認証を強化できる。またDoS攻撃に対しては、独自のスクリプト言語「iRules」を活用して対策用ルールを作成し、それをコミュニティで共有することで、迅速に対応できるという。
今後、BIG-IPの基盤となっているTMOSに、「どんどんセキュリティ機能をプラグインしていく」(帆士氏)。クラウドとオンプレミスの環境にまたがった認証/アクセスコントロール機能などの追加を予定しているという。そしてさらに、「どんなタイプの攻撃があり、どういったリスクがあるか、ビューを積み上げて全体的に見渡せるようにする『可視化』、その可視化の情報をもとに、どこにどんな対策が必要かを判断して実行する『自動化』をTMOSで実現していく」(帆士氏)という。
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