パスワードの使い回しにも注意を呼び掛け
2011年、減少したウイルス届出、増加した標的型攻撃
2012/01/10
情報処理推進機構(IPA)は1月6日、2011年のコンピュータウイルスおよび不正アクセス届出状況をまとめ、公開した。
これによると、2011年のウイルス届出件数は1万2036件。前年の1万3912件に比べて13.5%減少した。この理由としてIPAは、大規模に感染する大量メール配信型のウイルスが出現していないことを挙げている。
一方で2011年は、数を絞って特定のターゲットを狙う「標的型攻撃」の増加が目立った。経済産業省が2011年5月に公表したアンケート調査によると、標的型攻撃を受けた経験のある企業は2007年には5.4%だったが、2011年には33%に増加した。
標的型攻撃では、本物らしい差出人や本文をかたった電子メールを送り付け、添付ファイルを開かせたり、悪意あるWebサイトへ誘導するリンクをクリックさせることが多い。そして、ソフトウェアの脆弱性を悪用してウイルス(マルウェア)に感染させる。
IPAは、2011年は標的型攻撃の主な攻撃対象は、特定の業界や政府関係機関に限られていたが、2012年はその傾向を踏襲しつつ、「あらゆる業種の企業にとって標的型攻撃が大きな脅威になる」と予測。ソーシャルネットワークサービスを介してある企業の社員と繋がりを持ち、そこを踏み台にして秘密情報を入手するといったシナリオも考えられるという。この手の標的型攻撃に対抗するため、OSやアプリケーションを常に最新のものに保ち、脆弱性を解消するほか、「不審なメールを受信したら組織内で周知する」といった、人による対策を推奨している。
IPAは同時に、IDとパスワードを盗み取って悪用するインターネットサービスの不正利用についても注意を呼び掛けている。
他人に知られないよう管理しているはずのIDとパスワードでも、ウイルス感染やフィッシング詐欺によって盗み取られることがある。そして、「覚えにくいから」といった理由で、複数のサービスで同じIDとパスワードを使い回していると、被害は芋づる式に拡大してしまう。
IPAでは、2012年はこうした「使い回し」パスワードを狙った攻撃は、金銭的価値のある有料サービスだけでなく、無料サービスのアカウントもターゲットにする可能性があると指摘。有料・無料に関係なく安易なパスワードは避け、かつパスワードは使い回さないよう呼び掛けている。
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