10Uサイズに256コア、消費電力は計3500W

SeaMicroの超高密度サーバ、Xeon版が国内登場

2012/02/15

 ネットワンシステムズは2月14日、米SeaMicroが1月末に米国で発表したマイクロサーバの新製品、「SM10000-XE」を同日に国内で販売開始したと発表した。SM10000-XEは10Uサイズに4コアのXeonプロセッサ(「E3-1260L」)を64個搭載した超高密度サーバ。すなわち1IUのデュアルソケットXeonサーバ32台と同様の処理能力を、約3分の1のサイズで提供できる計算になる。

 SeaMicroはこれまで、Atomをプロセッサとして採用した高密度サーバ「SM10000」シリーズを3製品提供してきた(「SM10000」というシリーズ名は、10Uのシャーシを使っているところからきている)。2010年6月に発表した最初の製品である「SM10000」は、32ビット・シングルコアのAtom Z530を512個搭載。次に発表した「SM10000-64」は64ビット・デュアルコアのAtom N570を256個搭載。さらに3番目の製品「SM10000-64HD」はAtom N570を386個搭載した(現在はSM10000-64とSM10000-64HDが主力製品となっている)。これらを10Uのシャーシに収めることで、主にWebサーバ群を対象とした消費電力の低減と省スペース化を訴えてきた。HPがARMプロセッサを採用したマイクロサーバの開発計画を発表したこと、またインテルがAtomベースのサーバCPU開発を進めていることは、このコンセプトがユーザーや業界に受け入れられている証拠だといえるだろう。

 新製品は、これらと同一のシャーシ、同様の技術を用いながら、CPUをXeonに変更。これによってアプリケーションサーバやデータベース、サーバ/デスクトップ仮想化など、Webサーバ以外の一般的なサーバ用途にも対応。SeaMicroは「データセンターのすべての領域をカバーした」と米SeaMicroの創立者で製品マネジメント/マーケティング担当バイスプレジデントのアニール・ラオ(Anil Rao)氏はいう。SM10000の発表当時、ラオ氏は@ITに対し、同社の技術は特定のプロセッサに依存しないと話していたが、新製品でこれを実証したことになる。ラオ氏は今後についても、インテルの新たなAtomサーバCPUや、ARMをはじめとするインテル以外のCPUなどへの対応の可能性も否定しない。すべて顧客ニーズ次第だという。

初代製品から共通の設計にXeonを搭載で省エネ、省スペース

 SM10000-XEは、シリーズに共通の技術により、省電力と省スペースを実現している。電源装置、ファン、ネットワークインターフェイス、ストレージインターフェイスはシャーシ、およびシャーシに搭載するネットワークインターフェイスモジュール、ストレージモジュールに搭載。このシャーシに64枚のコンピュートカードを挿した構成だ。

seamicro01.jpg 10Uの高さのシャーシに64枚のCPUモジュール(コンピュートカード)を収める。この背面にはネットワークモジュールが見える

 新製品では、各コンピュートカードにXeon E3-1260Lを1個搭載。このCPUの消費電力は、最新のSandy Bridge世代における4コアプロセッサとして最低の、45Wとなっている。メインメモリ用にはSO-DIMMスロットをカードの表裏に2スロットずつ、計4スロット設けている。SeaMicroでは今回の新製品で、消費電力の低さなどから、サムソンのECCメモリモジュールを採用。1コンピュートカード当たり最大で8GB×4の32GBを搭載できる。

 SM10000シリーズでは、CPUとチップセット、メモリモジュールのほかは、SeaMicro独自のASICにまとめることで、部品点数を減らし、消費電力を減らしている。このASICは、CPUやチップセットの機能を選択的にオン・オフすることで、さらに消費電力を削減できる機能を搭載している。また、シャーシのバックプレーンと、コンピュートカード上のCPU/チップセットとの間で、ネットワーク/ストレージなどのトラフィックを仲介する役割も果たす。1CPUソケットに対して10Gbpsの帯域を提供できるという。

seamicro02.jpg 独自開発のASICで部品点数を減らし、コンピュートカードのサイズを縮小して密度向上を図っている

 ただし、シャーシに搭載可能な外部接続用のイーサネットインターフェイスは、最大で1Gbps×64ポート、あるいは10Gbps×16ポートなので、外部接続の最大帯域は160Gbpsとなる。ディスクについては、現在2.5インチのSATAディスクドライブおよびSATA SSDのみを提供。これをストレージモジュールに納めて最大64基搭載できる。繰り返しになるが、ネットワークチップやストレージコントローラチップは、ネットワークモジュール、ストレージモジュールに搭載されている。

 SeaMicroは今回の新製品開発に際して、第2世代のASICを開発した。このASICで前世代よりも電力消費を削減、また、Windowsやハイパーバイザを広くサポートした。

 シャーシにファンや電源装置を収め、これにコンピュートカードを挿すという構成だけを見て、「ブレードサーバと同じではないか」と考える人がいるかもしれない。だが、ブレードサーバだからといって、必ずしも消費電力が低いといえないことは、市場に出回っている製品が証明している。

 SeaMicroのSM10000シリーズは、省エネのための工夫を多数加えている。搭載するCPUを低消費電力プロセッサに限定し、ファンおよび電源装置をこれに合わせた設計とすることでこれらの部品の消費電力を削減。また、独自ASICでコンピュートカード上の部品を減らすこと、使用していないCPUやチップセットの機能への供給電力を減らすことで省エネを図っている。10Uのシャーシ1台に64CPU/256コアという高密度は、別途イーサネットスイッチを用意することなく、これだけのCPUコアを接続できることも意味しており、スイッチの消費電力も節約できることになる。新製品SM10000-XEの平均消費電力は3500Wという。

 インテルはSM10000のような製品を「マイクロサーバ」と呼び、マイクロサーバのコンピュートカードの規格化を提唱している。しかし現在のところ、SeaMicroはこれに準拠するつもりはないという。ラオ氏は、@ITの質問に対し、SeeMicroはインテルにインスピレーションを与えている側であり、インテルもSeaMicroが群を抜いて優れた製品を出していることを認めていると説明した。ちなみにSeaMicroは米国におけるSM10000-XEの発表を、インテル、サムソンと共同で行った。

ネットワンはシスコとSeaMicroを主力サーバとして推進

 ネットワンシステムズはSeaMicroの新製品を、大まかにはWebサービスやクラウドサービスの事業者に向けた、同社にとってのサーバの主力商品と位置付けている。企業の社内ITインフラ/プライベートクラウド向けにはシスコのUnified Computing Systemを主力サーバに据えているところも興味深い。ネットワンは、日本ではサーバでAtomという新たなアーキテクチャを使うことに不安を覚え、導入に至らなかったケースがあるが、新製品によってSeaMicro製品の導入に弾みがつくだろうと話している。大規模Webサービス事業者が当面の顧客として有望なほか、デスクトップ仮想化のワンボックス・ソリューションを提供することも考えているという。同社によると、SM10000-XEを1台使うことで、最大約1000名規模のデスクトップ仮想化をまかなえるという。シスコもデスクトップ仮想化をUCSの重要な用途として注力しているが、どちらを導入するかは顧客のプリファレンスおよび要件を満たすために必要な構成によって決めるという。

seamicro03.jpg 左よりネットワン執行役員の篠浦文彦氏、SeaMicro共同設立者のアニール・ラオ氏、SeaMicroハードウェア担当バイスプレジデントのディラジ・マーリック氏

 SeaMicroでは新製品がデータベースを稼働するのにも十分利用できるとしているが、ネットワンではこの用途ではシスコのUCSなどを推進する。こちらも性能の問題というよりも、サポートや構成の柔軟性が理由だという。

(@IT 三木泉)

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