シマンテックが高校/高専生向けコンテストを開催
「このプログラムに含まれる脆弱性を指摘せよ」
2012/08/24
日本における情報セキュリティ人材不足が指摘されて久しい。例えば2012年4月に情報処理推進機構(IPA)が公開した「情報セキュリティ人材の育成に関する基礎調査」は、情報セキュリティ業務に従事する技術者が日本全体で約2万2000人不足していると指摘している。
こうした状況を改善する取り組みも始まっている。IPAが開催してきた「セキュリティキャンプ」はその一環だし、近年、セキュリティ技術を競う「Capture The Flag(CTF)」などの競技会が有志によって開催されるようになった。
民間企業の側も動き始めた。シマンテックは2012年6月、高度なセキュリティスペシャリストの育成を目的に「シマンテック・サイバーディフェンスアカデミー」を設立した。そして今度は、若年層を対象に情報セキュリティに対する関心を高める取り組みとして、「サイバーセキュリティ チャレンジ 2012」を開催している。
サイバーセキュリティ チャレンジ 2012は、高校生/高専生を対象とするセキュリティコンテストだ。2〜4名のチームで構成する参加者には、課題となるプログラムが配布される。実はこのプログラムには脆弱性が含まれており、それを「いくつ見つけられるか」、そして脆弱性を回避するために「本来ならばどう記述すべきか」を文章にまとめ、提出するというものだ。この過程を通じて、「どういったコードが脆弱性を生み、基本設計やアルゴリズムも含め、どのようにすれば安全なコードを書けるのか」を学んでいってほしいという。
残念ながらエントリーは終了しているが、7月31日に優秀賞の表彰式が行われる。優秀賞を受賞した2チームは、「シマンテック一日体験社員」を経験できるほか、同社セキュリティスペシャリストによる「安全なプログラミング」講座を受講できる。
サイバーセキュリティ チャレンジ 2012を企画した、シマンテックの吉田隆之氏(ジャパン デベロップメント センター コンシューマプロダクトエンジニアリング件サイバーーディフェンス準備室室長)によると、問題作成に際しては、同社のエンジニアはもちろん、複数の高校教諭や大学教授などとディスカッションしてレベル感を調整したという。「真剣に作った。高校生へのメッセージを込めた、一種の『挑戦状』だ」(吉田氏)。
近年、ただでさえ理系学生の減少傾向が続いているが、その中でもセキュリティに興味を持つのはさらに少数だ。吉田氏は今回の取り組みを通じて、「セキュリティは楽しい」ということを伝えていきたいという。ひいては、CTFなどほかのセキュリティイベントに参加する層を増やしていくことが目的だ。
セキュリティ技術者を取り巻く目も変わってきた。「日本では、『ハッキング=クロ』というイメージが非常に強かったが、情報セキュリティの重要性が認識されるにつれ、一昨年あたりからその傾向が変わってきた」(吉田氏)。
とはいえ、こうして育成した人材を企業の側でどう登用するか、どんな活躍の場を用意するかという部分はまだ明確になっていない。こうしたロードマップも含め、産学連携で取り組んでいく必要があると同氏は述べている。
「標的型攻撃などの脅威は増加しているが、日本ではエンジニアが足りていない状況が続いている。米国や中国、ロシア、韓国など諸外国と比べると出遅れているのは否めない。国全体での取り組みが必要だ」(吉田氏)。そしてシマンテックとしては、地に足を付けて人材育成に貢献していきたいと述べた。
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