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第1回 OOTコミュニティ座談会


オブジェクト指向開発の効果は測定できるか

司会:ツールを導入することによって、どれくらいシステム開発の効率が改善したか、例えばROIはどうなったかという調査は、海外では進んでいると聞いています。

斉藤:ある調査ではROIは800%という数字もあります。また、生産性は、おしなべて30%から50%上がっているという調査結果があります。これはラショナルから出た数字ではなく、エンドユーザーが自ら計測したもので、外部調査機関からの報告です。ラショナルではこういった資料も集めてWebサイトで提供しています。

 しかし、数字だけを見たところでエンドユーザーが確信を持つわけではありません。1つ1つが成功したかどうか、生産性が上がった、最後のリスクが解決されたか、1つ1つ実証されて普及していく、それが増えてくれば、エンドユーザーがそちらに移っていくことでしょう。いまは、国内での事例は多くはありませんが、エンドユーザーは欧米の開発事情を見聞したり、セミナーに来て調査してみて、実際にやってみようということになってきています。

田村:オブジェクト指向を活用した開発では、エンドユーザーには単に最終的なコストだけではない満足が多々あると思うのです。しかし、そういうものはなかなか表に出てきません。ウォーターフォールでは、最後の最後ででっちあげて「動きました」と終わりにしている部分があるのを、オブジェクト指向やRUPを活用した開発だと、エンドユーザーの満足度が極めて上がっているはずです。そこの部分が出てくると、次のエンドユーザーが「だったらうちも。あそこ困ったんだよな」というところからいけるんじゃないかという気がしています。

オブジェクト指向導入の障害となるもの

司会:アットマーク・アイティの調査によると、オブジェクト指向開発を導入する上で、まだまだエンドユーザーや、会社の上司の理解が進まないという意見が技術者の間にあるようですが、これについて何かご意見がありましたらお願い致します。

日本ラショナルソフトウェア株式会社
代表取締役社長
齊藤肇

斉藤:まず、オブジェクト指向に限らず、新しい技術の導入が進まない一番大きな原因は、現場の技術者が、いつもプロジェクトで忙しいという点が挙げられるでしょう。これはアメリカでもそうです。新しい技術というのは習熟する時間が必ず必要になりますよね。習得している間の生産性は落ちます。その覚悟は、納期に責任を持たなければならない者として、プロジェクトリーダークラスではできない。それが一番の理由です。これを解決するのは何なのか? 一番効果的なのはエンドユーザーがRFPとして出してきたら、これは有無を言わさず案件を取るための条件になります。

 実際にプロジェクトリーダークラスで決断をするのは、そうとう度胸が必要だと思います。会社として、ある程度将来を見越してリスクの負担はしてもいいよという話がないと、非常に難しい。結局、私たちも宣伝啓蒙活動を地道にやるわけですが、あとは、エンドユーザーさんに理解してもらって、その理解を得てやるというのが解決策の1つだと思います。

 2つ目は、教育の機会をどんどん与えて、まずエンジニアの教育は計画通り実施してしまう。ある程度準備しておいて、何かあればスタートできる体制にしておくことでしょう。

長野:NTTコムウェアでは試験プロジェクトやインストラクタ育成などで昨年から実践したことがいまになってみるととても有益になっています。悩むよりも試験的に始めてみる、ということが意外と効果をもたらすと実感しています。20年くらい前に私がアメリカに調査に行ったときの例ですが、エンドユーザーの教育部門に話を聞いたところ、それぞれ、技術者個人が、教育を受けるための時間を、年間に何日間というように持っている。設計の前には設計の教育をとか、テストの前にはテスト関係の教育をとか、きちんとスケジュールを立ててやっている。それを全社で計画立ててやっているわけで、一斉に教育してリソースが欠落することのないように配分までしてやっていました。

 会社にとってのコアコンピタンスは人材しかない。教育をやらなかったときは、会社自体が沈むという、危機感をもった上司だったとすれば、必ず教育をやるはずだと思う。「このままでいいの」と、逆に部下が上司を脅すぐらいの時期に来ていると思います。

斉藤:エンジニアの数をどうやって増やしていくかというのがラショナルのトレーニングにおけるキーなんですけど、大事なのは「机の上でトレーニングしただけでは身には付かない」ということです。ラショナルで成功しているというお客さんを見ると、トップが理解して、あるプロジェクトを1つスタートさせる。例えば、全体で60人ぐらいのプロジェクトだとすると、最初のUMLを使ってデザインをしていく段階の人数は10人ぐらいとして、この10人で1回目のイテレーションするわけですね。すると、この1カ月間で10人がある程度UMLに習熟してくる。もしも自分たちではやりきれないということだったら、そこにはコンサルタントを入れてもいい。

 その次のフェーズのときに、そのプロジェクトの人数が20人になりました。これで、2回目のイテレーションすると、今度は20人熟知している人間が出てくる。最終的に、そのプロジェクトが終わると、UMLなり、新しいイテレーションのプロセスなりに熟知した人間が50人なり60人できる。6ヶ月間で。その次の6つぐらいにその人たちを分解して、それぞれのプロジェクトに入っていって会社の中に広めていくというこの手法が良いのではないでしょうか。なぜかというと、どうしてもソフト開発は徒弟制度みたいなところがあって、ノウハウだとかスキルのトランスファーというのは、やはり一緒にやりながら行っていかないと駄目な部分が必ず残ると思うのです。

田村:プロジェクトマネージャしかきちんとオブジェクト指向を理解していなくて、泣く泣くウォーターフォールをして、いま地獄の日々を送っているプロジェクトを知っています。ウォーターフォールは新人教育で行っているけど、オブジェクト指向はそんなに聞かない。基礎的な部分でやっていかないと、結局はプロジェクトでスタートするときに、「はい、勉強しなさい」ということになってしまうのが現状なのではないでしょうか。

 UMLのキーワードは「共通語」だと前から思っています。メンバーの中で共通語がなければプロジェクトチームは繋がらない。そういう共通語を社内に持っているということがどれぐらいメリットがあるかというのも、やはり新人教育からスタートして育てていかないと、たぶん、理解しにくい。先ほど海外のお話しがあったんですけど、UMLは世界共通語ですよね。そこが一番重要です。

 ウォータフォールは日本語の仕様書の行間を読まないとうまく行かない。それでは共通語ではない。UMLはそういう部分で共通語であるので、UMLをやっておかないと、今後は誰とも話ができなくなってしまう、それこそエンドユーザーとも話ができなくなってしまうような事が起こりうるという危機感をもって認識して頂くと、もっと普及も加速するんではないかなという気がします。

斉藤:そうですね。UMLというのはLanguage independent(言語非依存)じゃないですか。Javaを知らなくてもC++を知らなくても、UMLを知っていることが重要なんです。もちろん、実際の開発になればJavaのプロやC++のプロは必要になりますが、なんといってもLanguage independentで世界共通で使われているUMLというのは非常に重要です。


個人の成長のためにもオブジェクト指向を

司会:それでは最後に、技術者に対して何かメッセージを頂けませんでしょうか。

長野:まずは、人生を楽しくするために、自らを高めていきましょう。オブジェクト指向だけでなく勉強していって、何でも新しい物にくらいついていかなかったら、自分が陳腐化してしまいますよと言いたいですね。

斉藤:上司がやってくれないとか、理解してくれないとか、お客さんがというのではなく、本当に自分でいいと思ったら、自ら進んで説得する。それで自分のやりたいことを実現する、というようなことを是非やってもらいたい。私たちはそれをサポートするという立場になると思います。できるだけの機会の提供とか、事例の提供とか、サポートできることは、Development Styleコーナーを通していろいろとやっていきます。だから自分でやれるところはとにかく頑張ってください。お客さんを説得してもらいたいし、上司も説得してもらいたい。

 明らかに世の中変わってきていると思うんです。少し前までは、オブジェクト指向に関係していた人たちは、特殊なスペシャリストの集団で、どこの集まり行っても、同じ顔の人がいる(笑)。いまはそういう集団に加えて、オブジェクト指向に、本当に実用的に興味をもって入られる方が、どんどん増えてきている。

 前者の特殊な集団は、「オブジェクト指向は特殊な技術で、これは日本の中ではなかなか普及しない」とか、「上司の理解を得られない」とか思っている人たちで、意外とアクティブじゃないんじゃないかな。それまでの経緯があるから、アクティブになれない。でも、後者の方は、実際に使おうとしているわけですから、非常にアクティブなんです。ここに意識の差がある。

 昔からやっている人たちは、力があるから気がつけばすごい力を発揮する。無理だと思わずに、もっと前向きにやれば、すごくチャンスはあるのではないかと思います。もう「この技術はすごい」という段階ではないのではないでしょうか。

田村:技術者の方には、もっとリクエストや、やりたいことをいってもらってもいいのかなと思います。自分たちで勉強したことを、社内で情報交換することができれば良いのですが、それができない場合もある。そのような場合も含め、このDevelopment Styleコーナーのようなコミュニティに参加することで、社外の先生になってくれる人も含めてコミュニケーションを深め、多くのことを吸収していってほしい。

 このときに、与えられた物をやるとかやらないとかいうのではなくて、自分は何がほしいのかという観点から、もう一歩踏み出して考える。この「もう一歩先」という感覚を技術者は持たないといけない。

 いま我々は面白いフェイズにいると思っています。オブジェクト指向が本当の意味での共通語として広がれば、不幸になる人は多分誰もいないと思います。共通語を拡げるのは、いろいろな人と話をして、それが共通語だというムードを作らない限りは絶対に広まらない。自分1人で勉強していても、英語と同じで、話してみないとうまくならない。そういうような、もう一歩外に踏み出す形の勉強をしていただくと、もっともっと自らもやりたいことができるようになるかなと思います。

司会:お忙しい中、本日は長い時間ありがとうございました。

参加者経歴
  NTTコムウェア株式会社
取締役
ビジネスイノベーション本部ビジネス企画部長
長野 宏宣(ながの ひろのぶ)
    1970年九州工業大学電子工学科卒業。日本電信電話公社入社。1998年7月NTTコミュニケーションウェア(株)取締役就任。2002年4月よ り現職。VALINUX SYSTEMSジャパン株式会社取締役。 情報処理学会、電子情報通信学会、各会員。
  株式会社コンポーネントスクエア
代表取締役社長
田村 俊明(たむら としあき)
    1985年東北大学大学院工学研究科卒、工学博士。1988年住商エレクトロニクス入社。その後 、現BEA WebLogic Server(当時Tengah)を1998年に国内に紹介。2001年1月コンポーネントスクエア設立と同じときに社長に就任。
  日本ラショナルソフトウェア株式会社
代表取締役社長
齊藤 肇(さいとう はじめ)
    1970年、東京都立大学法学部を卒業。1973年、日本ミニ・コンピュータ株式会社(現オムロンアルファテック株式会社)に入社、ビジネスシステム事業、 システムインフラ事業の取締役として活躍。1999年4月、日本ラショナル ソフトウェア株式会社代表取締役社長に就任。

 


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