特集:仮想化によるサーバ統合の新常識 【第3回】 |
ITシステムの目的はサーバを立てることではなく、その立てたサーバでアプリケーションを稼働し、ビジネス上のメリットを得ることだ。これは仮想サーバでも当然同じ。そしてビジネス上のメリットをITシステムから得るには適切な運用管理が重要になる。だが、仮想サーバ環境では、この適切な運用管理がなかなか難しいといわれている。
物理、仮想サーバの混在環境が課題 |
なぜ、難しいのか。それはすべてのサーバが仮想化されているわけではなく、仮想化されていない物理サーバと混在することが一般的だからだ。ITシステム全体を仮想サーバ環境に移行する企業は、現状でほとんどないだろう。多くは、以前からある物理サーバと、新しい仮想サーバが同居しているはずだ。
運用管理の観点で見ると、管理が一元化されていた物理サーバ環境に、一元化できない仮想サーバが入り込むことになる。つまり、企業の運用管理担当者は、物理サーバはこの運用管理ツール、仮想サーバはこの運用管理ツールと、サーバごとに使い分ける必要があるのだ。
仮想サーバの原因特定は難しい |
仮に日々の運用管理はバラバラのツールで行えたとしよう。しかし、障害発生時はどうだろうか。障害発生時には限られた時間内に、障害が起きたサーバを特定し、復旧させないといけない。だが、物理サーバと仮想サーバで運用管理が分かれている場合、原因の特定がきわめて困難になる。特に仮想サーバは当然だが、実体がない。サーバを実際に目で見て障害を特定するということができないのだ。
また、サーバ統合に仮想化技術を使う場合、その統合した仮想サーバは遠隔地のデータセンターに置かれることが多い。障害が起きても、運用管理担当者は目視で問題を確認することが難しいのだ。物理サーバだけ、仮想サーバだけなら、運用管理を効率化するツールや手法はたくさんある。しかし、その2つが混在すると、従来以上に運用管理が複雑化する危険があるのだ。
一方で、仮想サーバの大規模システムへの適用や基幹業務システムへの適用は日々報告されている。すでに多くの企業で仮想サーバは大きな仕事を担っているのだ。仮想サーバを前提としないITシステム設計は、これからは不可能といっていいだろう。
必要とされる運用管理ツールを |
もちろん、仮想サーバ環境、特にVMware ESXには運用管理ツールが標準で用意されている。だが、その運用管理ツールが対象とするのは仮想サーバ環境だけだ。つまり、VMware ESXの場合であれば、ハイパーバイザー上の仮想マシンを管理できるに過ぎない。ハードウェアレベルの障害が起きた場合には、対処のしようがないわけで、できる作業には限界がある。
日本ヒューレット・パッカードが提供する「HP Insight Control Environment」(HP ICE)は、HP ProLiantサーバを管理するソフトウェア製品であり、物理サーバ、仮想サーバの混在環境における運用管理を大きく向上させるスイート(ソフトウェアパッケージ)製品だ。
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日本HPのエンタープライズ ストレージ・サーバ事業統括 ISSビジネス本部 ソフトウェアプロダクト&HPCマーケティング部の上野広行氏は、HP ICEについて「仮想サーバをHP SIM、iLO2などのツールで管理できるようになることが重要だ」と説明する。HP SIM(HP Systems Insight Manager)とは「HP ProLiant」「HP BladeSystem」などのサーバ製品や、ストレージ製品である「HP StorageWorks」を一元的に管理できるようにするツールであり、その管理機能は、HP ICEにより容易に拡張できる。
HP ICEには「HP Virtual Machine Management Pack」(VMM)という名のアドオンツールが含まれる。このVMMを使うことで、HP SIMから仮想サーバが管理できるようになるのだ。HP SIMから見た場合、物理サーバ、仮想サーバの区別なく一元管理できるのがHP ICEの最大の特長であり、注目される理由だ。
VMMを通して管理できるようになるのはVMware ESXだけではない。マイクロソフトの仮想サーバや、シトリックスの仮想サーバも対象になる。HP SIM上で物理サーバと仮想マシンを関連付けて、一元的に管理することができる。その上でCPUやメモリ、ディスクの使用レベルが高い仮想マシンを特定したり、動作中の仮想マシンを移動することが可能となる。
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※2:事前設定ホストへの障害ホストのVMのリカバリ
さらにHP ICEに含まれる「HP Integrated Lights-Out 2」(iLO2)を使うことで、遠隔地にある仮想サーバであってもリモート操作で完全にコントロールできるようになる。遠隔地にあるデータセンターにサーバを統合した場合などに、活用できるツールだ。運用管理者は手元のPCに仮想サーバのデスクトップを呼び出すことができ、マウスやキーボードで操作できる。OSやアプリケーションの操作だけでなく、サーバ電源のオン/オフやBIOSの操作も可能なため、障害発生時の対処も手元できるというメリットがある。運用管理担当者は障害発生時にわざわざ遠隔地のサーバまで出向く必要がなくなるのが大きな特長だ。
同じく HP ICEに含まれる「HP Rapid Deployment Pack」(RDP)も重要だ。事前設定したOSイメージをサーバに自動配布するためのツールで、仮想サーバにも対応する。「仮想化のメリットは必要な環境をすぐに展開できること」(上野氏)であり、RDPを使うことで、すぐに利用可能な仮想環境を迅速に立ち上げることができる。OSイメージにアプリケーションを含めることもでき、HPは「OS配布の時間を50%以上削減できる」としている。
これら仮想サーバに対するiLO2、RDPの操作はすべてHP SIMを通じて統合的に行うことができる。HP SIMはVMware ESXの「VMotion」などと連携し、HP SIM側の操作でVMotionを操作することもできるなど、ほかの運用管理ツールとのインターフェイスにもなる。「HP SIMがすべての管理の土台」(上野氏)になるのだ。
物理サーバと仮想マシン管理の統合を実現するHP SIM+VMM |
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■(赤枠) | ハードウエア障害、パフォーマンス、管理プロセッサなどのステータスを表示。物理サーバと仮想マシンの関連付けが分かる |
■(青枠) | 仮想マシンとVMホストのステータスを表示する |
「仮想環境の管理に必要な機能がすべてそろう」
が |
このようにHP ICEは物理サーバ、仮想サーバが混在する環境での運用管理状況を大きく効率化してくれる。しかし、運用管理担当者にとっての本当のメリットは「個別にどのような機能が必要かを選ぶ必要がない」という安心感だ。HPがOEMで販売する『VMware Infrastructure 3 Enterprise』には、HP ICEと、物理サーバ/仮想サーバの移行を支援する「Server Migration Pack Universal Edition」が無償でバンドルされる。VMware Infrastructure 3 Enterpriseを選べば仮想環境を含めて管理に必要なものがすべてそろうのだ。
HP ICEはソフトウェア資産管理が簡単になるというメリットもある。HP ICEの1ライセンスだけで、HP ICEに含まれるほとんどのツールが利用できる。個別にライセンスを設定する必要はなく、ライセンスの管理も簡便になる。また、HP ICEのライセンスには、各製品の24時間365日対応のテクニカルサポートとアップデートサービス権が1年分付属する。
これまでテスト環境など限られたアプリケーションだけで利用されてきた仮想化技術が、いよいよメインストリームになろうとしている。その際に重要になるのが運用管理の効率化であるのは、物理サーバと同じだ。仮想化技術はそのパフォーマンスだけでなく、物理環境と仮想化環境のシームレスな運用管理を見据えて導入すべきだろう。
仮想化技術について3回に渡って“新常識”を説明してきた。マルチソケット型サーバの登場でコストパフォーマンスが向上、VMware ESXiを利用することで、仮想化環境を構築しやすくなった。加えて今回説明したようにHP ICEを使えば、物理サーバと仮想サーバの混在環境でも統合的な運用管理が可能なことが分かった。仮想化技術を利用する上で障壁になると考えられていた課題はことごとく解決されたといってよい。どのような規模の企業にとっても仮想化環境の構築を検討しない理由は、もはやないだろう。
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提供:日本ヒューレット・パッカード株式会社
企画:アイティメディア 営業本部
制作:@IT 編集部
掲載内容有効期限:2008年9月26日
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