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震災アプリ開発者が語る本音の体験談
第3回 みんなで頑張ろう日本:
震災時には、こんなAzureアプリが登場した【震災アプリ開発者の視点】
2011/06/08

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 皆さま、こんにちは。亀渕です。

 本連載も早いもので今回が第3回、つまり最終回となりました。

 さて最終回では、東北地方太平洋沖地震後に開発された、Windows Azureを利用したアプリケーションについて書きたいと思いますので、もう少しだけお付き合いいただければ幸いです。

    Windows Azureを利用したアプリケーション  

 一口にWindows Azureを利用したアプリケーションと言っても、Windows Azureはプラットフォームですので、その上にはいろいろなアプリケーションを動作させることができます。

 Webアプリケーションのように、Windows Azure上で動作しているということがURLなどから直接的に分かるものから、バックエンドの仕組みの一環としてWindows Azureを間接的に利用するなど、幅広い用途に利用できます。

 今回の震災では、多くのWebサイトやアプリケーションが開発され、公開されました。その一部がWindows AzureのWebサイトに記載されています。

  • マイクロソフト: 東日本大震災対応 情報掲載 Web サイト一覧

 今回は、その中から一部をピックアップして、どのような仕組みになっているのかを簡単にお伝えしたいと思います。

    MSN 東日本大震災に関する情報/MSN ペットサーチ  

 「東日本大震災に関する情報」は、被害情報や安否情報、ニュース、災害掲示板や避難所情報などを取りまとめたポータル・ページです。また「MSN ペットサーチ」は被災し、飼い主と離ればなれになってしまったペットを探したり、里親を探したりできるマッチング・サイトです。

図1 MSN 東日本大震災に関する情報

図2 MSN ペットサーチ

 これらの特設サイトは、MSNの一部ではありますが、大規模なアクセスに対応し、スケールアウトが容易にできるよう、Windows Azure上のWebロールを使用して開発・構築されています。

 また、特設ページとして、日々、多くの情報が更新されるため、通常であればコンテンツの更新に多くの作業が発生し、管理側の負担になりがちです。しかし、「Sitecore CMS」を使用して、サイトの管理とコンテンツの作成を分離することで、管理負担を大きく軽減できています。

 特設サイト内にある「放射能情報」ページでは、Bing MapsとSilverlightを使用して、文部科学省が公開している全国都道府県別の放射能水準調査結果をグラフィカルに表示しています。こちらもWindows Azure上のWebロールでホストされ稼働しています。

図3 放射能情報

 これらの特設サイトは、震災情報といった性質上、かなり多くのアクセス量が想定されます。このような大規模なアクセスに対応するため、インフラ側としてはWindows AzureのWebロールのインスタンス数を多く稼働させる以外にも、静的コンテンツはCDNを使用して配信することで、クライアントへの応答速度を向上させ、負荷を軽減させています。

    郵便番号別 地域掲示板(jp110311)  

 「郵便番号別 地域掲示板(jp110311)」は、被災者間の情報交換を目的としたインターネット対応携帯電話向けアプリケーションです。地域内に集中して情報交換が行えるよう、ユーザーが郵便番号にひも付くように構成されています。

図4 郵便番号別 地域掲示板(jp110311)

 このWebアプリケーションは、ASP.NET MVCを使用し、Windows AzureのWebロール上で動作しています。また、掲示板情報などのデータはWindows AzureストレージのTableストレージにすべて格納するようになっているなど、Windows AzureのWebロールらしさが特徴です。

[注釈]
補足:
 このWebアプリケーションは、Twitter ID: @kazuk さんがコーディネータとして、TwitterやBlog上で開発者を募り、賛同した有志が参加し、ゼロから開発されました。
 当時のディスカッションやソース・コードなどは、オープンソース・コミュニティである「CodePlex」で、いまも見ることができます。
 また、ライセンスはMicrosoft Public License(Ms-PL)で公開されていますので、開発者がこのアプリケーションのソース・コードを再利用することも可能です。

    キャッシュ・サーバ/簡易Webサーバ  

 第1回でも少し触れましたが、Windows Azureを使用した少し変わった利用方法としてキャッシュ・サーバと簡易Webサーバがあります。

 通常、Windows Azure上では、Webロールを使用したWebアプリケーションや、Workerロールを使用したバックエンド処理を主に利用します。しかし、キャッシュ・サーバでは、Webロール(およびWorkerロール)上にキャッシュやリバース・プロキシ機能を持ったアプリケーションをWindows Azure上に展開しています。

図5 キャッシュ・サーバの構成

 Windows Azureを利用することで、コンピュータ・リソースの確保とキャッシュ・サーバの構築が即時で行えることが特徴です。

 また、上述しましたMSNの特設サイトができるまでは、「輪番停電の情報や放射線の情報などの、頻繁に更新される情報を、いかに手間を掛けずに簡単に公開するか」が悩みどころでした。

 結果としては、Windows LiveのSkyDriveを利用した方法と、Windows AzureストレージのBLOBストレージを使用した簡易Webサーバの2つ方法で対応しました。

 Windows LiveのSkyDriveは、利用されている読者もいらっしゃると思いますが、非常に簡単にファイルを共有して公開できます。

 ファイルの更新もドラッグ&ドロップで行えるため、操作に詳しくない方でも簡単な手順書があれば利用できると思います。

 ファイルを公開した後は、そのファイルへのURLを連絡するだけで済みますので、非常に手軽に情報を伝達することが可能です。

[注釈]
補足:
 公開当初、Windows Live SkyDriveの転送容量の上限に引っかかり、アクセスできない問題がありましたが、マイクロソフトがいち早くその情報をキャッチし、震災対応ということで特別に上限を撤廃した経緯があります。通常利用時には転送容量に注意が必要です。

 もう1つの方法である簡易Webサーバは、Windows Azureストレージを利用しています。

 Windows AzureストレージのBLOBストレージに保存されているデータへは、HTTPを利用して、直接アクセスできます。つまりWebサイトに必要なHTMLファイルや画像ファイルなどをBLOBストレージに保存すれば、Windows Azureストレージが簡易Webサーバとして動作することになります。(※注意:現状のWindows AzureストレージではASP.NETなどの動的コンテンツを動作させることはできません)

 また、APIを利用したプログラムを作成しなくとも、「Azure Storage Explorer」や「CloudBerry Explorer for Azure Blob Storage」といったクライアント・ソフトウェアを利用することで、利用者が簡単にコンテンツを更新することもでき、必要であればCDNを使用することもできる点が特徴です。

図6 簡易Webサーバの構成

 ※作成したキャッシュ・サーバやミラー・サーバの一覧は、「東日本大震災対応 情報掲載 Web サイト一覧 (Microsoft)」に記載されています。

    まとめ  

 3回に渡り、東北地方太平洋沖地震とWindows Azureを中心に執筆させていただきました。この連載で記載した内容は、わたし個人の視点ですので当然ながら追える情報には限りがあり、皆さんの活動を網羅し、お伝えすることは残念ながらできていないと思います。

 ですが、当時を振り返り、わたしや皆さんが「どんなことを考え、何があったのか」を少しでも感じ取っていただけたら幸いです。

 一連の動きの中でWindows Azureは中心にいました。それはたまたまだったのかもしれませんし、わたしの主観ですのでそう思うのは当たり前かもしれません。でもそのときのニーズに応えられたのは、クラウドやWindows Azureといったプラットフォームと、柔軟で緩い連携が可能なWorld Wide Webな世界だったのは間違いないと思います。

 Windows Azureは正式リリースされてからまだ1年半弱と「若い」部類のプラットフォームですが、今後より一層たくさんの場面で広まっていくと思います。

 新旧織り交ぜてたくさんのことを融合させながら、この若いプラットフォームをよりうまく使いこなせば、1人でも多くの人に知ってもらえ、そうやって世に広めることで、社会に貢献できる。そんな可能性が目の前に広がっているというのは、すごくやりがいあります。

Let's dream and then let's build.
          -  Ray Ozzie

 わたしが気に入っているレイ・オジー氏の有名な言葉ですが、現在の状況だとまた違った印象を受けます。直接、言われていなくとも勇気が出てくる、とてもいい言葉だなと思います。

 使い古された表現になってしまいますが、皆さんと一緒にこの時代を築き上げていければうれしいですね。

 つたないBlogではありましたが、最後まで読んでいただき本当にありがとうございました。

 



インデックス
  Azure体験記:
  震災アプリ開発者が語る本音の体験談
第1回 震災アプリ開発体験談:Azureがどう役立ったか?
第2回 みんなで頑張ろう日本:震災時に発揮された日本Azureコミュニティの威力
第3回 みんなで頑張ろう日本:震災時には、こんなAzureアプリが登場した【震災アプリ開発者の視点】
 

 

提供:日本マイクロソフト株式会社
企画:アイティメディア営業企画/ 制作:デジタル・アドバンテージ
掲載内容有効期限:2011年7月15日


亀渕 景司
亀渕 景司
株式会社 ビービーシステムに所属。 主にマイクロソフト製品について技術支援や営業支援を行う。 昨今はWindows Azureをはじめ、クラウドを中心としたソリューションの開発や技術の追求を行っている。



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