Windows 10やMicrosoft Azureといった最新ITテクノロジをビジネスで活用するためには、テクノロジに対してどのように向き合うべきなのだろうか。最新ITテクノロジを紹介することを“なりわい”とする日本マイクロソフトのエバンジェリストによるリレーコラムから、そのヒントを得てほしい。第2回はデバイス(iOS/Android/Windows)やサービス(Microsoft Azure)の開発者向けの技術啓発活動を行う鈴木章太郎氏が若手の開発者がマイクロソフトに持ちがちな、よくある3つの誤解を解く。
私のエバンジェリストとしての活動は、マイクロソフトの最新技術を、セミナーや記事やWebなどで紹介し、広く技術啓発を図ると同時に、モバイルやクラウドを生かしたソリューションを開発されるISVさま向けに最新技術を啓発させていただき、導入のお手伝いをさせていただくことがメインです。その他、場合によっては、Webやモバイル開発者のコミュニティ、スタートアップ企業が主導するハッカソンや、大学の担当講義でPoC(Proof of Concept:概念実証)を指導させていただくことなどもあり、多岐にわたっています。
そこで多くの若手のWeb開発者やモバイル開発者と話す機会もあるわけです。一応テクニカルセッションの提供や講義を担当している関係で、さすがに直接はこのような言葉はいただきませんが、このような印象を持たれている方も多いようです。そこで、下記のチャートをご覧ください。
2014年2月14日にサティア・ナデラが新社長に就任し、その時に社員向けに一つの大きなメッセージを発信しました。それは「95%のPCシェアを見るのではなく、12%のシェアしか持っていないモバイルデバイスのマーケットを対象にして、モバイルファースト・クラウドファーストの時代を理解して戦略を立てよ」というものです。
つまり、iOSやAndroid、LinuxなどさまざまなOSがあることを前提に、プラットフォーム戦略を立てていく必要があると明言したのです。これまでと劇的に異なる大きな視点の変化です。今までのマイクロソフトはWindowsの世界だけを見て、PCの市場でシェアを獲得していく戦略でしたが、もはやそれは成り立ちません。他のOSがあることを前提にビジネスを考えていかないといけないのです。
マイクロソフトが、この状況で、どう革新を起こしていくのか、これには、大きく分けると二つのトリガーがあります。一つがオープンソースで、そしてもう一つの重要なトリガーがクロスプラットフォームです。クロスプラットフォームにはいくつかの視点が含まれますが、ここでは開発者の視点からお話しします。
◆ユニバーサルWindowsプラットフォーム
Windows 10から、ユニバーサルWindowsプラットフォーム(UWP)アプリが登場しました。「ユニバーサル」という言葉が示す通り、これは全てのWindowsデバイス間でアプリケーションを共有しようという思想であり戦略です。
これまではWindowsのアップデートのたびに互換性検証が必要であり、Windows PCやWindows Phone、XboxなどWindowsデバイス間であってもアプリケーションの移植が必要な場合がありました。これからは、全てのWindowsデバイスが共通して利用できるアプリケーションフレームワークにより、どのようなデバイスであっても同じアプリケーションが使えるようにしたいと考えています。こうしたWindowsアプリのことを、「ユニバーサルWindowsプラットフォームアプリ」と呼んでおり、Visual Studioで全て開発できます。
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◆四つのWindowsブリッジの登場
これに加えて、他のプラットフォームのアプリが、ユニバーサルWindowsプラットフォームに展開できる、つまりブリッジできるようにしようとしています。これにより、既存のコードベースを素早くユニバーサルWindowsプラットフォームに移行し、ライブタイル、アクティブな通知、Windowsストアのアプリ内購入などの機能を追加することができます。各ツールキットは、コードベースごとにカスタマイズされたツールとランタイムテクノロジを提供します。
具体的には、すでにリリース済みであるWebアプリ用Windowsブリッジ、従来のWindowsアプリケーション用Windowsブリッジ、iOSアプリ用Windowsブリッジ、Androidアプリ用Windowsブリッジの四つがあります。この中でiOS版のみプレビュー版としてGitHubに公開されています。その他は現状開発中のため順次展開していく予定です。
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XamarinやApache CordovaといったVisual Studioのプラグインは、AndroidやiOSのアプリをC#という開発言語で統一的に開発できます。これに対し、Windowsブリッジは、Android StudioやXcodeですでに開発済みのアプリを、可能な限りそのままの形でWindowsのストアに展開できるものです。
いかがでしょうか? さまざまな他のプラットフォームのアプリを取り入れられるこのようなオプションがあり、決してPCおよびその開発者の方のみを見ているわけではないことがお分かりいただけると思います。
これもよく誤解されるお話ですが、これは事実でしょうか? この図を見てください。下記は10月初旬にオンラインで開催されたイベント「Azure Con」を踏まえ、ほぼ最新のAzureのテクノロジスタックを並べた図です。
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実際にログインしてみると、例えば、いわゆる仮想マシンサービスであるVirtual Machinesには、Linuxのディストリビューションも多く選択肢にあり、Javaのアプリケーションサーバーや、Oracle Databaseが搭載されているものまで用意されています。その他、開発言語を見ると、.NETはもちろん、Node.js、PHP、Python、Javaなど多数をサポートし、今現在、ご自身で開発中のアプリが、ほとんどそのまま実行できるようになっています。自分で実際に使ってみると、上記のような印象は、事実ではないことがはっきり分かるというものですね。
これも、よく誤解されるお話です。しかし、Microsoft Azureには、Mobile Appsがあります。Mobile Appsは、iOS、Android、WindowsのおのおののネイティブSDKとサンプル、さらにクロスプラットフォームで開発ができるHTML5/JavaScript、Xamarin(C#)、Cordova(HTML5/JavaScript)のSDKおよびサンプルが用意されています。しかもiOSに関しては、Objective-CとSwiftが用意され、それにXcodeへのダウンロードリンク、Androidに関してはAndroid Studioへのダウンロードリンクが用意されており、MacBookしか持っていないという開発者や学生でも、Microsoft Azureのサブスクリプションさえ持っていれば簡単に試すことができるようになっているのです。
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いかがでしょうか? こちらも全然事実じゃないですよね。実際、この夏、某大学のハッカソンにメンターおよび審査委員として参加させていただいてAzure Mobile Appsをご紹介したところ、皆さんすぐにアプリ開発に使用開始していました。積極的にお試しください。
ここまで読んでいただいた皆さまは、お気付きでしょう。Windows 10もMicrosoft Azureも、デバイス側とクラウド側における、マイクロソフトによるオープンソース化とクロスプラットフォーム化の推進の具体的な実現例なのです。
ユニバーサルWindowsプラットフォームは、全てのWindowsデバイスが共通して利用できるアプリケーションフレームワークにより、どのようなデバイスであっても同じアプリケーションが使えるようになるのです。これは、Windowsの世界における統合といえるでしょう。
そして、iOSやAndroidなど、他のプラットフォーム上で動くアプリを、ユニバーサルWindowsプラットフォームに移行し、ライブタイル、アクティブな通知や、Windowsストアのアプリ内購入などの機能を追加できるのが、Windowsブリッジです。
この二つを駆使することにより、より生産性の高いアプリ開発体験を享受することができますし、開発者個々人がすでに持っている技術を存分に相互利用していただくことができるのです。これこそ「真のクロスプラットフォーム化」といえるでしょう。
そしてMicrosoft Azureは、上述したようにオープンソースの最新のテクノロジを取り入れ、また.NETのオープンソース化を進めている中で、日々常に進化していきます。
ユーザーが使うアプリがiOSであろうとAndroidであろうとWindowsであろうと、あらゆるプラットフォームの開発者に対して、この二つの組み合わせにより、開発生産性を最大化し、開発におけるさまざまな障壁を乗り越えていくことができる力になれると思います。ぜひ、この機会にWindows 10とMicrosoft Azureでの開発を試してみてください。
日本マイクロソフト テクニカルエバンジェリスト。イベントやセミナーでの登壇、記事・書籍執筆などを通じて、デバイス(iOS/Android/Windows)やサービス(Microsoft Azure)の開発者向けの技術啓発活動を担当。中央大学総合政策学部非常勤講師。マイクロソフト軽音楽部 広報 & Guitarist。
ブログ:http://blogs.msdn.com/b/shosuz/
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アイティメディア営業企画/制作:@IT 編集部/掲載内容有効期限:2015年12月31日