“デジタル変革”が強く求められる現代において必要となるプライベートクラウドを構築するためにはインフラ基盤の選定が重要になる。「“キモ”となるのはストレージ」と語る東芝メモリ、日本マイクロソフト、Dell EMCに、その理由と選定のポイント、活用事例などを聞いた。
企業ITは、仮想化が当たり前のものとなり、クラウド技術を応用したIT基盤を活用している組織も増えてきている。そのIT基盤として求められるのが、高い信頼性・性能・柔軟性・堅牢性・拡張性を兼ね備えたプライベートクラウドだ。企業に“デジタル変革”が強く求められる現代において、これらの特長は非常に重要な要素となっている。
デジタル変革のためとはいえ、いきなり巨大なシステムを新規に構築できるわけではない。スモールスタートして、ビジネスの成長・デジタル変革の進度に応じて拡張していきたいというニーズも大きい。
そこで最近では、「HCI(ハイパーコンバージドインフラストラクチャ)」を活用してプライベートクラウド基盤を構築する例も増えている。サーバ、ネットワーク、ストレージの3つが一体化されたHCIであれば、調達も拡張も手間が掛からず、安心してシステムを運用できるというのが、その理由だ。
HCIの選定で“キモ”となるのがストレージだ。ストレージI/Oは、仮想化基盤・クラウド基盤の性能を決める非常に重要な要素であるからだ。そこで注目されているのが「SSD(Solid State Drive)」であるという。では、デジタル変革時代のエンタープライズシステムに最適なストレージを選定するポイントはどのようなことなのだろうか。
そこで今回、「デジタル変革時代に最適なインフラ基盤を構築する鍵がストレージである理由」と題して、HCI向けのソフトウェアを提供するMicrosoft、HCIアプライアンスを提供するDell EMC、それらを支えるSSDを提供する東芝メモリの3社で座談会を開催。それぞれの立場の考えを語ってもらった。
――デジタル変革時代のエンタープライズシステムに最適なストレージを選定するポイントについて教えてください。
小川氏 そもそもSSDは、旧来のHDDと比べてI/Oが極めて優秀で、消費電力量が非常に小さく、回転機構がないため故障しにくいという特長があります。
そして、ここ数年で再びフラッシュメモリ、SSDの価値が認められ、急速に普及するようになってきました。今では、ストレージは「SSDファースト」で検討されるケースも増えてきています。
企業システムのストレージを選定するときには、SSDの性能・容量・機能・消費電力・信頼性の5つに注目すべきです。SSDの性能価格比が高ければ、ITインフラの利便性・拡張性・柔軟性を向上させることが可能です。SSDの省電力性が高ければ、ITインフラの運用コストを下げる効果が期待できます。
――東芝メモリとしては、デジタル変革時代に求められる性能をSSDでどのように実現しているのでしょうか。
小川氏 東芝メモリのSAS SSDおよびNVMe SSDは、デジタル変革時代に求められるストレージだと確信しています。東芝メモリは、ワールドクラスの半導体工場を三重県四日市市に保有しているだけではなく、フラッシュメモリとコントローラーの双方を自社開発している数少ないフラッシュ・SSDベンダーです。
それ故に実現できる高品質・高信頼性によって、長年にわたりエンタープライズ市場で高いシェアとエンドユーザーさまとは、長年にわたってエンタープライズのエンドユーザーへのソリューション提供を通じて協業しており、高くご評価いただいております。そして、その結果として、長寿命性を確保するためのノウハウも蓄積してきています。
――東芝メモリが提供する高性能・高信頼のSSDは、ソフトウェアベンダーにとっても注目すべきソリューションかと思います。例えばMicrosoftは、最新の「Windows Server 2016」に仮想ストレージ機能「Storage Spaces Direct(S2D)」を搭載していますが、その概要を教えてください。
小塚氏 Windows Server 2016では標準機能だけでHCIを構成できるようになり、従来のような専用ストレージ機器とSANを使わずにシンプルな物理機器構成で仮想化基盤を構築できるようになりました。もちろん、HCIの柔軟な運用も可能です。
ここで注目してほしいのが、S2Dの「ストレージ階層化」機能です。この機能を用いることで、複数のタイプのディスクを組み合わせて仮想化ストレージを構成できます。
例えば、NVMe SSDをキャッシュにSATA HDDを記録領域とする“ハイブリッド”、NVMe SSDをキャッシュに記録領域にはSAS SSDを並べる“オールフラッシュ”、NVMe SSD・SAS SSD・SATA HDDを3階層に並べる“3-Tier”などと、自由に構成を組むことができます。
小川氏 補足しますと、現在のところ、普及型のSSDには3つの種類があります。HDDからの置換として「SATA SSD」、ハイエンド/ミッドレンジサーバなどに用いられる価格性能比(IOPS単価)に優れた「SAS SSD」、非常に高速で最新型の「NVMe SSD」の3つがあり、特にエンタープライズの企業システム向けとしては、SAS SSDとNVMe SSDの選択肢があります。
小塚さんから紹介のあったS2Dキャッシュに適した製品として弊社のNVMe SSD「PX04P」シリーズがあります。電力効率(1W当たりのIOPS)が非常に高く、ランダム性能は66万IOPS(リード)/18万5000IOPS(ライト)を発揮します。
また、「PX04S」「PX05S」シリーズは、特に価格性能比(IOPS単価)が優位なSAS SSDです。ランダムリードが特に速く、他社製品と比べて約1.3倍の性能に対するアドバンテージに注目されており、HCIのストレージとして多くご採用いただいております。
――HCIにとってストレージ性能が重要な要素であるということは、S2Dの活用においても、SSDの性能・信頼性が非常に重要ということかと思います。Microsoftでは、S2Dの性能を紹介するため、東芝メモリのNVMe SSDとSAS SSDを活用して性能評価を実施したそうですが、その結果を教えていただけますでしょうか。
小塚氏 東芝メモリさまのNVMe SSD「PX04P」8台とSAS SSD「PX04S」16台それぞれをキャッシュとして利用した際のパフォーマンス比較した結果、台数の少ないNVMe SSD「PX04P」の方が高速になる結果が出ています。
また、PX04Pのランダム性能はSAS SSD「PX05S」の約5倍(リード)と極めて速く、S2Dのキャッシュとして最適な技術です。一方のPX05Sは、IOPS単価や容量単価でバランスが良く、使い勝手の良い技術です。東芝メモリのSSDは信頼性が高いため、トータルコストの削減に効果が期待できます。デジタル変革のためのSSDと言っても過言ではありません。
詳細は、ホワイトペーパー『Windows Server 2016 で実現する Hyper Converged Infrastructure 実践ガイド』(PDF)としてまとめているので、気になった方はぜひダウンロードしてみてください。
――HCIの導入においては、もちろんサーバの選定も重要な要素です。Dell EMCは、完全検証済みのReady Nodeソリューションの1つとして、Windows Server 2016をベースとしたHCI「Dell EMC S2D Ready Nodes」を開発、提供しているそうですが、その概要を教えてください。
日比野氏 S2D Ready Nodesでは「3つの安心」をユーザーに提供します。
1つは設計。当社が完全検証済みのセットで、ベンチマークも公開されています。ニーズに合わせて選べるプリフィックスモデルを採用しているため、調達や設計にかかる負担がありません。2つ目は導入。無償の構築ガイドを用意しており、導入サービスも充実しているため、スムーズに構築作業を進めることができます。最後は運用。ソフトウェアからハードウェアまで、当社が一気通貫でサポートし、万が一のトラブルでも迅速に解決まで導きます。S2D Ready Nodesは、安心で、速く、確実なHCIなのです。
――S2D Ready Nodesで採用されている技術要素についても教えてください。
日比野氏 S2D Ready Nodesは、選定の不安を取り除くため、S2Dのストレージ階層化機能をベースに「ハイブリッド大容量モデル」「バランスモデル」「オールフラッシュモデル」の3タイプに絞られています。このうち、特にパフォーマンスと信頼性が求められる用途の「バランスモデル」と「オールフラッシュモデル」の2タイプを中心に、東芝メモリのSAS SSD「PX05S」が採用されています。
Hyper-VベースのHCIは、当然のことながらMicrosoftソリューションと親和性が高く、多くのMicrosoftユーザーにとって“大本命”のシステムだと考えています。HCI市場におけるHyper-Vの伸び率は高く、デジタル変革時代の有力候補になると確信しています。
ここからは、東芝メモリの莊司氏がファシリテーターとなり座談会はさらに盛り上がりを見せた。
莊司氏 SSDを搭載したS2D Ready Nodesの活用例を紹介していただけますか。
日比野氏 ある製造業の企業では、開発インフラを6基のS2D Ready Nodesで再構築し、Microsoft System Center Service Managerなどと組み合わせて、仮想マシンの申請から払い出しまでを自動化しています。
彼らが注目したのは、SQLのパフォーマンスでした。従来は高価な専用ストレージを用いていたため、同等のパフォーマンスが得られるかどうかが課題だったようです。当社のコンサルタントチームで検証を行い、NVMe SSDとHDDの組み合わせによって、最適化が図れることを実証しました。
また、ある建設業界の事業者では、「複数の拠点のシステムを統合したい」という要望がありました。小規模な拠点も多く、「わざわざSANストレージを用いてまで冗長化するのは効率的かどうか」という問題があり、最終的に2ノードで冗長化できるS2D Ready Nodesが選ばれました。
ポイントは、いずれの企業も従来の運用環境から大きく変化させたくない点です。Hyper-VとMicrosoft System Centerの組み合わせであれば、これまでMicrosoftシステムを用いていたユーザーの負荷が小さく済みます。
莊司氏 デジタル変革時代に求められるITインフラとは、どのようなものなのでしょうか。
小塚氏 現代のITシステムには、時代の変化に対応するための柔軟性とスピードが求められています。HCIは拡張性や柔軟性に富んでおり、このニーズにマッチすると思います。また、システムの要件によってはコストも低く抑えることができます。
他の要素としてはプライベートクラウドがあります。これはパブリッククラウドと同様にユーザーが欲しい時にすぐITリソースを手にすることができるという意味でITのスピード向上に貢献します。そこで私たちは、Microsoft Azureの技術をオンプレミスでも利用できるようになる「Azure Stack」を提供しています。
日比野氏 Azure Stackは将来的に非常に重要な技術となるでしょうね。
小塚氏 やはりソフトウェアで管理すること、つまり「Software Defined」が重要なキーワードになると思います。ITの迅速性を上げることが、これからのITインフラには求められていくのです。
莊司氏 ITシステムの自動化にはどのようなポイントがありますか。
小塚氏 自動化の対象にも“リソースの選択”と“日々の運用”という2つのポイントがあります。S2Dは後者、ストレージの運用管理を自動化するための技術ですね。ここにもクラウドのコンセプトが生きています。
だからといって、全てのシステムがクラウドに移行するわけではないと思います。積極的にも消極的にも、オンプレミスシステムを選ぶ場所があることでしょう。
例えば開発現場では、開発用のサーバを作成/削除することが頻繁に発生しますし、性能も極めて重要です。また数万〜数十万IOPS以上が必要など尖ったニーズを持ったユーザーにはクラウドではなくオンプレミスが適しているかもしれません。こうしたとき、ストレージI/Oというのは非常に影響度が高いのです。
莊司氏 東芝メモリの四日市工場も、研究開発部門があるため同じ状況ですね。“尖った技術”を使う開発を素早く行うためには、ストレージI/Oも重要な要素だと実感しています。
小塚氏 東芝メモリのSSD開発は、他社と比べてどんな特長があるのですか。
莊司氏 日本国内で高い品質を保ちつつ、メモリとコントローラーの両方を自社開発している点が最大の特長でしょうか。
デジタル変革時代には、高性能なSSDのニーズが高まることが予想されます。このとき、デバイスが十分に用意されていなければ、元も子もありません。国内に”フラッシュメモリ”の生産拠点を持つ当社だからこそ、安定的にSSDを供給できるのだと思います。
またフラッシュメモリというのは、ポテンシャルが高いデバイスの1つでもあり、コントローラーによって、適切に制御してあげるとその能力を最大限に発揮することが可能となります。つまりSSDの品質は、コントローラーとメモリの親和性、バランスがとても重要です。どちらも自社開発しているからこそ、高い品質と性能を保つことができるのです。
日比野氏 新しいメモリ技術としてはどのようなものを研究されているのでしょうか。
莊司氏 NVMe SSD「CM5」シリーズは、64層積層3次元フラッシュメモリを搭載し、従来のPX04Pと比較してランダムリード/ライト性能は、それぞれ約1.2倍/1.3倍に向上されています。また、電力効率は約2.2倍に向上しています。
またSAS SSDの最新版となる「PM5」シリーズも、CM5シリーズと同様に64層積層3次元フラッシュメモリが搭載されており、従来のPX04SやPX05Sと比較して、ランダムリード/ライト性能はそれぞれ約1.5倍/2.4倍に向上されています。また、SAS3のデュアルポート/マルチリンクに対応することで、NVMe SSDの性能に迫る構成も可能です。
小川氏 また、「ウォーム」や「コールド」と呼ばれるデータアーカイブの領域においては100TBクラスの大容量で省電力といった特長がある「QLC(Quad Level Cell)」の製品化も進めており、さらにSSDの使用範囲が広がります。
そして将来的には、次世代半導体メモリとして期待されているDRAMに近いパフォーマンスを持つ新たなメモリ、新たな技術も登場してくるでしょう。東芝メモリでは、さまざまなストレージ/メモリ技術の研究、開発へ積極的に取り組み、デジタル変革をサポートする製品を提供し続けたいと考えています。
本日お話しいただいたMicrosoftさま、Dell EMCさまとは、“いいパートナーシップ”を続けて参りたいと思います。その結果として、よりシンプルで使いやすさを追求したITインフラを提供できると考えております。
最後に、東芝メモリ、日本マイクロソフト、Dell EMCの3社でセミナーを企画しております。詳しくは、下記の登録サイトをご覧ください。
セミナー名:「デジタル変革」時代に最適なHCI&SQL活用セミナー
日時:2018年4月18日(水)
登録サイト:http://dell.co.jp/HCI_SQL/Q1
* NVMeTM(NVM ExpressTM)はNVM Express社の商標です。
* インテル、Xeonは、米国またはその他の国におけるIntel社の商標です。
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提供:東芝メモリ株式会社
アイティメディア営業企画/制作:@IT 編集部/掲載内容有効期限:2018年5月1日