富士通は、「Microsoft Azure Expertマネージドサービスプロバイダー」の認定を日本企業として初めて取得。マルチクラウド時代におけるマネージドサービス事業をグローバルに展開し始めている。富士通の門間仁氏とAndrew Brabban氏、そして、日本マイクロソフトの佐藤久氏に認定取得までのいきさつと成果について話を伺った。
「Microsoft Azure Expertマネージドサービスプロバイダー(Azure Expert MSP)」の認定を、日本企業として始めて取得した富士通。同社はマルチクラウド時代におけるマネージドサービス事業をグローバルに展開し始めている。富士通 クラウドサービス事業本部 本部長代理門間仁氏とサービステクノロジー本部 インフラ・運用技術コンサルティング統括部Andrew Brabban氏、および日本マイクロソフト パートナー事業本部 グローバルパートナービジネス本部 業務執行役員 本部長の佐藤久氏の3氏に、富士通が目指しているクラウド戦略、富士通と日本マイクロソフトの協業、そして、国内企業初となるAzure Expert MSP認定取得までのいきさつと成果について話を伺った。
――2019年3月29日に「富士通が『Microsoft Azure Expertマネージドサービスプロバイダー(Azure Expert MSP)』を国内企業として初めて取得した」という発表がありました。Azure Expert MSPとは、どのような認定プログラムになるのですか。
日本マイクロソフト 佐藤氏 ひと言で言えば、最高位のMicrosoftパートナー認定プログラムです。認定を取得するには64もの監査項目にパスする必要がありますので、プログラムがスタートした2017年以降、取得できたのは世界中で49社だけです。日本では富士通が最初のパートナー企業になります。
――監査する項目としてはどのようなものがあるのでしょうか。
佐藤氏 お客さまのシステムを構築できることは当然として、セキュリティやコンプライアンス、ガバナンス、安定運用といったサービスを世界中に同一品質で提供できるかどうかを第三者機関が監査しています。
――富士通はメインフレーム時代から日本のITをけん引してきた企業です。マルチクラウド時代の今、どのような戦略でビジネスを進めているのですか。
富士通 門間氏 富士通のビジネス戦略の根幹は“お客さまの課題をITで解決するためのソリューションを提供する”ことにあります。さらに、この3年ほどは「カスタマーセントリック」、つまり、「お客さまを中心に置いて、仕事と生活の利便性をITで高められる会社となる」ことに力を入れてきました。また、かつてのように何でも自社でやるのではなく、他の企業と協力できるところは協力し、イノベーションにもオープンに取り組む、というのが現在の基本的なビジネスの進め方になります。今回、Azure Expert MSPを取得しようとしたのも、クラウドサービスの領域でMicrosoftとのパートナーシップをさらに深めることが狙いです。
――富士通とMicrosoftは、以前からさまざまな領域とレベルで協業を進めてきました。今回、あらためてAzure Expert MSPを取得しようと考えたのはなぜでしょうか。
富士通 Brabban氏 当社は、お客さまにさまざまなプラットフォームでソリューションを提供しています。そのプラットフォームがパブリッククラウドの場合、お客さまの期待はシステムを実装するシステムインテグレーションだけでなく、運用管理を含む「マネージドサービスの質」にもあるわけです。そこで、マネージドサービスを最も高い品質でお客さまに提供するには、最高位のパートナープログラムであるAzure Expert MSPを取得する必要があると考えました。
――マネージドサービスプロバイダー(MSP)にとってのAzure Expert MSPの魅力はどこにあるのでしょうか。
Brabban氏 例えば、Azure Expert MSPにはMicrosoftからさまざまな技術情報が提供されるので、お客さまに提案するソリューションの内容を検討したり、社内でマネージドサービスの事業計画を立案したりする際に、とても参考になります。また、パートナー支援策の一つとしてMicrosoftのトレーナーを派遣してもらうこともできますので、エンジニアの育成にも活用できます。
――Microsoftでは、MSPとしての富士通をどのように評価していたのでしょうか。
佐藤氏 3つの点に魅力を感じていました。第1に、グローバルリーチの能力があること。海外に進出している日本企業向けを含め、富士通は世界各地でソリューションを提供しています。第2に、インダストリーデバイスを使ったインダストリー向けシステムの開発、提供、運用ができること。現在のMicrosoft Azureは、LSIのチップやエッジデバイスからパブリッククラウドまでの広い世界をカバーしているので、インダストリーに強いIT企業であることは大きな魅力でした。第3に、国内へのリーチについても、省庁や地方公共団体、大手企業、地域のスモールビジネスまで、富士通には多種多様で豊富なチャネルがあることです。
――Azure Expert MSPの認定を取得するには、どれくらいの準備期間が必要でしたか。
Brabban氏 2018年5月から2019年2月まで、約10カ月かかりました。まず、Microsoftの本社がある米国のレドモンドで、Microsoftのグローバル戦略担当者から話を伺ってから、Azure Expert MSPの認定取得を目指すことを富士通として正式に決定しました。その後は、高品質のサービスを、適正なプロセスでデリバリーできるようにするためのさまざまな準備を進めていきました。最後に、世界中にある当社のGlobal Delivery Groupのメンバーが富士通の英国オフィスに集められて2日間の監査を受け、無事に認定を取得することができました。
――そうした準備の一つとして、エンジニアの育成も重要なテーマになると思います。
門間氏 現在は、マルチクラウド対応ができるクラウドエンジニアを育成しています。ご承知のように、富士通には80年を超える歴史があり、メインフレームの時代からコンピュータビジネスに関わってきました。そうした背景もあって、既存のビジネスに割いているリソースはまだまだ多いのですが、いつまでもそのままというわけにはいきません。そこで、Azure Expert MSPの認定取得に先駆けて、マルチクラウド対応のクラウドエンジニア育成に本腰を入れてきました。今ではさまざまなクラウドを使いこなしている企業も増えましたので、そうした先進的なお客さまともきちんと会話できるように、エンジニアだけでなく、営業担当者についても十分な教育訓練を実施しています。
――育成するエンジニアの規模は何人くらいになりますか。
門間氏 まずは、グローバルで4000人規模にすることが目標です。中長期的には、これを数万人のオーダーに増やしていかなければならないでしょう。
――富士通は最近、国内で「マルチクラウドサポートセンター」もオープンしました。
門間氏 Azure Expert MSPの認定取得発表と同じ2019年3月29日に公表しました。従来は、パブリッククラウドごとに担当チームが分かれていたのですが、マルチクラウドにきちんと取り組むには、商談の流れを最適化して、お客さまが望まれるマルチクラウドソリューションをより早く提供できるようにしなければなりません。そこで、コンサルティングから運用までをカバーするワンストップ型の組織としてマルチクラウドサポートセンターを設けることにしました。同じような役割のチームはグローバルにも存在しますが、この名前を付けているのは日本だけです。
――Azure Expert MSPの認定を取得する際には、どういったことに苦労されましたか。
Brabban氏 主な課題は3つありました。まず、MSPとして活動するには、一貫性を持って、繰り返し可能な形でソリューションを提供することが求められます。また、そのソリューションも、ただ単に結果を出せればよいわけではありません。今日のソリューションには自動化機能が欠かせませんし、パブリッククラウドならではのスケーラビリティを最大限に引き出す必要もあります。さらに、サービスを世界中のどこにでも提供するには、当社も人や物のグローバルなロジスティクス体制を整備しなければなりませんでした。
――国内企業初のAzure Expert MSP認定を取得したことについて、富士通としてはどのように自己評価されていますか。
Brabban氏 まず、Azure Expert MSPの認定を取得したことで、「質が高いクラウドベースの高品質のソリューションを提供できる企業である」ということをお客さまに認めていただけるようになりました。また、社内では、自分たちに何ができるのかを正しく自己認識し、それをソリューション提案としてお客さまに示せるようになったことが大きな成果だと思います。つまり、お客さまと同じ業界のさまざまなベストプラクティスを基に最適な解決策を提示したり、「自動化されたデリバリー」のような最新の技法を使ったソリューションも提供したりできるようになったということです。
門間氏 日本の企業が海外に進出する場合、現地でも国内と同じ基盤の上で、同じプロセスを使いたい、と要望されるケースがほとんどです。Azure Expert MSPとなった当社は、同じサービスを同じやり方で世界中のどこでも動かすことができますので、そうした要望にもしっかりと応えることができます。
――Azure Expert MSPの認定を取得することで、Microsoftのパートナー企業はお客さまにどのような価値を提供できるようになるのでしょうか。
佐藤氏 一般企業や団体などのお客さまに対して提供できる価値としては、「安全」「安心」「適正価格」があります。Azure Expert MSPの認定を取得するための64の監査項目には、コンプライアンスやセキュリティ、プライバシーなども含まれていますから、企業の重要なデータをクラウドに預けるということに懸念を示されているお客さまにも「安全」「安心」をきちんと納得していただけるはずです。また、Azureの自動化機能を使ってシステムを効率的に実装し、運用することで、システムやソリューションの費用も適正な範囲にとどめられるようになるでしょう。
――パートナー企業自体にとってのメリットは何でしょうか。
佐藤氏 はっきりと申し上げておきたいのは、MicrosoftはAzure Expert MSPを取得したパートナーの皆さまには手厚いサービスや支援を提供する、ということです。例えば、エンジニアリング部門とのパイプを用意しますし、Azure Expert MSPだけの特別なプログラムにも参加いただけます。当然、これらの機会を通じて、さまざまな情報にアクセスしていただけるわけです。
Brabban氏 当社にとっては、Microsoftのエンジニアリング部門の方々と毎週電話会議ができるようになったことが最大のメリットです。Azureで今何が起きているのかをいち早く知ることができますし、当社からの問い合わせに対するフィードバックはとても役に立っています。
――最後に、富士通のAzure Expert MSP取得に伴ってますます深まる両社の協業について、お二人から抱負をお願いします。
Brabban氏 富士通にとって、Microsoftとの協業の価値は、お客さまやパートナー各社にソリューションを提供する際のコストを引き下げられることにあります。また、提供するソリューションの内容を検討する際にお知恵を拝借したり、エンジニアの教育訓練に講師を派遣していただいたり、マーケティングを共同で行ったり、といった協力を得られることも大きなメリットです。このような良好な関係に基づいて、システムインテグレーションだけでなく、パブリッククラウドに対するマネージドサービスの領域でもビジネスを拡大していきたいというのが抱負です。それが結果的には、お客さまのデジタルトランスフォーメーション(DX)の推進支援にもなるはずです。Azure Expert MSPは、Microsoftから信頼されたパートナーの証しであり、それはお客さまのDXを推し進めるという意味でのパートナーであると思っています。
佐藤氏 先ほども申し上げましたように、当社にとって、富士通には「グローバルリーチ」「インダストリー」「国内での豊富なチャネル」という3つの重要な価値があります。こうした3つの要素を全て持っているパートナーは、海外を含めても非常にまれな存在だと思っています。そこが当社にとっての富士通の価値になっています。また、富士通の代表取締役社長・田中達也氏と当社のCEO・サティア・ナデラが対談した際も、両者は「エンジニアリング企業としての風土」「卓越した技術とチームワークに対する評価」「企業連携の重要性」といった点で深く理解し合えると感じた、と聞いています。クラウドが当たり前の存在になった今、ITの買い方も大きく変わってきました。Azure Expert MSPは、Microsoftがお勧めするパートナーソリューション。クラウドを使いたいが、どの会社に頼めばよいか分からない――とお悩みの企業は、ぜひ、Azure Expert MSPの認定を取得されているMSPを介し、Microsoft Azureをご利用いただくことをお勧めします。
――どうもありがとうございました。
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アイティメディア営業企画/制作:@IT 編集部/掲載内容有効期限:2019年8月10日