2015年12月に新たなクラウドサービス「K5」の提供を開始した富士通。2016年4月からはグローバル展開にも注力する構えだ。同市場で先行するアマゾンやマイクロソフトなどの海外勢と果たして渡り合っていけるのだろうか。
近年、さまざまな技術トレンドが注目され、ニュースとして盛んに取り上げられています。それらは社会、企業に対してどのようなインパクトを及ぼすのでしょう。ベンダーを中心としたプレーヤーたちは何を狙いとしているのでしょう。
それらのニュースから一歩踏み込んで、キーワードの“真相”と“裏側”を聞き出す本連載。今回は「FUJITSU Cloud Service K5」を取り上げます。
「企業が基幹システムをクラウドへ移行する動きが出てくるのはこれからが本番だ。移行に際しては、クラウドならではの効果が出るようにシステムをモダナイズする必要がある。その機能をクラウドサービスとして備えているのはK5だけだ。基幹システムの移行が本格化するにつれて、K5は海外勢のサービスと十分に渡り合っていけると確信している」
表題の疑問にこう答えてくれたのは、富士通でクラウドサービス事業の推進役を担う中村記章デジタルビジネスプラットフォーム事業本部 副本部長だ。今回は「クラウドサービス」をキーワードに、Amazon Web Services(AWS)やマイクロソフトなど外資系ベンダーが先行する同市場において、日本のベンダーとしてグローバルの舞台で戦いに挑む姿勢を打ち出している富士通の「FUJITSU Cloud Service K5」(通称、K5)に着目したい。
K5は、デジタルビジネスプラットフォーム「FUJITSU Digital Business Platform MetaArc(MetaArc)」を構成する商品の第一弾として、IaaS(Infrastructure as a Service)環境構築用ソフトウェア「OpenStack」やPaaS(Platform as a Service)環境構築用ソフトウェア「Cloud Foundry」といったオープンソースソフトウェア(OSS)に基づくオープンな技術と、富士通のシステム開発/運用ノウハウを融合したクラウドサービスだ。富士通の発表資料によるとMetaArcのコンセプトは、『お客さまのビジネスプロセスの革新や新ビジネス創造などのデジタル革新を実現するシステムと、基幹システムなど従来の情報システムを同一のプラットフォーム上で実現』とある。すなわち、SoE(Systems of Engagement)領域のシステムに求められるスピードや柔軟性と、SoR(Systems of Record)領域のシステムに求められる高信頼性を兼ね備えたクラウド基盤ということになる。
サービスの提供形態は図1のように、セキュリティやコストの要件に合わせ、パブリックからオンプレミスまで「4+1」(4つのサービスと、1つのプロダクトを販売)の形態で提供。これらを同一のアーキテクチャでグローバルに提供していく構えだ。
このサービス提供形態において、特にAWSやMicrosoft Azure(以下、Azure)などと真っ向から競合するのが、図1の左側2つに位置する「パブリッククラウド」と「バーチャルプライベートホステッド」(ホステッドプライベートクラウドとも言う)のサービスである。これまでAWSやAzureはパブリッククラウドサービスとして注目されてきたが、実は両サービスとも企業向けにはVPN(仮想プライベートネットワーク)などで個別に対応しているケースも多く、実質的にはホステッドプライベートクラウドサービスを展開している。従って、今後はこの2つのサービスの動向を注視しておく必要がある。
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