専門家に聞く、サーバOSの新たな選択肢として浮上してきたUbuntuとは「誰でも使える優しいOS」の実力とは

Linuxの選択肢として名前が挙がるOSの一つがUbuntuだ。業務でUbuntuを活用している日本仮想化技術の2人に、Ubuntuの歴史や特徴、コミュニティーの運用体制などを聞いた。

» 2021年07月06日 10時00分 公開
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 企業の情報システムを構築するエンジニアにとって、OSの選択は重要な問題だ。一般的にはLinuxディストリビューションを選択することが多いが、有償、無償の違いを含め、数多いディストリビューションの中から一つを選択することになる。

 商用利用に適したLinuxディストリビューションには、すぐに利用できるというメリットがある。開発ノウハウはネット上のコミュニティーで共有されており、有償サポートも受けられる。

 その一方で、商用利用に耐える長期の安定性を不安視する情シス担当者も。その中で注目されているLinuxディストリビューションが「Ubuntu(ウブントゥ)」だ。

 Ubuntuはどのようにして生まれ、どんな分野で利用されているのか。長年にわたってシステム開発の現場を歩き、Ubuntuを使ったシステムにも多く携わっている日本仮想化技術 代表取締役兼CEOの宮原 徹氏と同社技術部の水野 源氏の2人に、Ubuntuの歴史や特徴、コミュニティーの運営体制などを聞いた。

「誰でも使える優しいOS」がコンセプト

――今日はシステム開発者の間で利用が拡大しているLinuxディストリビューションであるUbuntuについて、基本的なことをお聞きしたいと思います。まず、Ubuntu誕生の経緯と、現在までの発展状況について教えていただけますか。

日本仮想化技術の水野 源氏

水野 源氏 Ubuntuは、Linuxディストリビューションの「Debian GNU/Linux」から派生したプロジェクトです。最初のリリースは2004年10月でした。当時のLinuxデスクトップはGUIをあまり重要視しておらず、見た目のきれいさなどは技術者にとって本質でない、ということで後回しにされることもありました。そのような風潮の中で、Debianの開発者が「人に優しいLinux」をコンセプトにUbuntuを生み出しました。

 Ubuntuは「人はソフトウェアを自分たちの言語で、あらゆる障害にかかわらず、無償で使用できるべきである」を理念として、最初はデスクトップ用OSとしてスタートしました。

 2年後の2006年に、「長期サポート版」「サーバ版」のUbuntuが登場し、サーバ分野での利用も始まりました。この時期は3Dデスクトップが一部で流行していて、立体的なアイコンがデスクトップを浮遊し、画面をキューブ状にした奇抜なデスクトップがありました。Ubuntuは3Dデスクトップを標準機能で提供していたため、「面白いOSがある」と日本の技術者からも注目され始めたと思います。

 単に面白いだけでなく、OSとして見ても、業務で使えるサーバ版が出てきてクラウドにもいち早く対応。長期サポート版は5年サポートが受けられて、2年ごとに更新されるところなどがエンジニアの目にとまりました。

 そこから利用が広がり、今日に至っています。デスクトップ版のイメージが強くありますが、最近ではIoTでも使える機能が充実しており、さまざまなシーンで広範囲に使えるディストリビューションだと思います。

――Ubuntuは世界でどの程度使われているのでしょうか。

日本仮想化技術の宮原 徹氏

宮原 徹氏 世界的な統計を見るとUbuntuは広く普及しており、W3Techsの調査によると世界でLinuxを使用しているWebサーバの約40%がUbuntuで動いているということです(リンク:https://w3techs.com/technologies/details/os-linux)。

――汎用(はんよう)機器にもかなり広く使われている印象があります。

水野氏 そうですね。例えばロボット用のOSである「ROS」はUbuntuを標準でサポートしています。

コミュニティーを資金面で支援する「Canonical」

――Ubuntuの開発、サポートを行う組織として「Canonical(カノニカル)」の存在がありますが、Ubuntuの活動に対してどんな役割を担っているのでしょうか。

水野氏 「Canonical=Ubuntuの開発ベンダー」ということではありません。Ubuntuは、「Ubuntuコミュニティー」が作っているディストリビューションで、Canonicalはそのコミュニティーの運営を資金面から援助する後援者的な存在の企業です。

 Ubuntuはあくまで、コミュニティーベースのディストリビューションであることを知っておいてほしいのですが、コミュニティーであるが故の問題もあります。ボランティアベースの自由な運営に任せていると、エンジニアから見て面白みがない機能やセキュリティパッチの対応などが遅れる恐れもあります。そこで、そうした開発をCanonicalがエンジニアを雇って開発させて補うことで、企業が使うに堪える品質を維持できるようにコントロールしています。

 Ubuntuコミュニティーは評議会制を採っており、ガバナンスの透明性を確保しています。Ubuntuのコミュニティー評議会のメンバーは、Ubuntuメンバーによる投票によって承認されます。この評議会の議席の1つはマーク・シャトルワース用として固定されていますが、残りの議席は誰でも座れるようになっています。Canonicalの社員が優先されるということはありません。

 Ubuntuそのものは、全ての機能を無償で使えるのですが、CanonicalはUbuntuについて24時間体制の有償サポートを運営しています。

――Ubuntuはどんな用途で使われているのでしょうか。代表的な利用例、最近伸びている分野などはありますか。

水野氏 圧倒的に使われているのは、Webサーバなどのシンプルなサーバです。先ほどお話しした通り、すでに世界的にかなりのシェアがあります。

 加えて、最近では最先端テクノロジーを扱うコンピューティング環境に用いられることが増えています。クラウドインフラのOpenStackやコンテナオーケストレーションのKubernetesの動作環境としてUbuntuが選ばれるケースが増えていると思います。

 「Ubuntu Core」というIoT向けのOSもリリースされており、Raspberry Piなどのボードコンピュータや組み込み系デバイスにも利用が広がっています。

宮原氏 特にAIの開発者にとってUbuntuは魅力的な環境です。ライブラリも充実しており使いやすいツールが整っているため、AI基盤を作ったりAIを使うアプリケーションを動かしたりしたい場合はUbuntuがよく使われていると思います。

Ubuntuはシステム開発者にとって「最初の選択肢」

――利用者が多いと開発に関する情報も得やすいため、さらに利用が拡大しているということでしょうか。

水野氏 それはあると思います。利用者が多ければ、サードパーティーベンダーの対応も充実してきます。例えばGitHubで出ているアプリケーションを入れたいと思ったとき、そのアプリケーションの開発元がUbuntu版をいち早くパッケージ化して配布することも多く、すぐに使うことができます。開発者にとって、Ubuntuは安心して使えるプラットフォームとして定着しつつあると思います。

宮原氏 サーバベースのシステム開発など従来型のコンピュータの使い方では、Linuxディストリビューションによる決定的な差はもはや少なくなっていると感じています。それに対して、先端的なことをしようと考えるシステム開発者にとっては、Ubuntuが有力な選択肢になっていると思います。当社も、OpenStackを使うときにUbuntuをメインに考えてきました。データセンターに多数の物理サーバを置いて管理するための「MAAS」(Metal As A Service)などもCanonicalから提供されています。

 Ubuntuは、ここ数年で企業領域でも使われるようになりました。最先端のデジタル分野でサービスを動かす環境として認知されてきたのです。

 開発者がUbuntuでサーバを立ち上げたいと考えたとき、Ubuntu認証を受けている機器であれば安心です。Linuxが出てきたときも、当初は特定の機種でしか対応が難しいという状況でした。それが徐々に普及するにつれて対応機種が広がっていきました。Ubuntuも同じ道をたどっており、2021年現在、拡大期に入ったところです。デル・テクノロジーズのインテル® Xeon® スケーラブル・プロセッサー搭載のサーバが全機種Ubuntu認証を受けているのは、そうした流れを先取りしているのだと思います。

※Ubuntuの認証サーバリスト
https://certification.ubuntu.com/server


(*)インテル® Xeon® スケーラブル・プロセッサー搭載のサーバは、本記事でご紹介しているUbuntu OS上でのサーバのさまざまなニーズにお応えします。

※本稿は、TechTargetジャパンからの転載記事です。

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提供:デル・テクノロジーズ株式会社
アイティメディア営業企画/制作:@IT 編集部/掲載内容有効期限:2021年7月12日

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