ビジネスとITが一体化し、運用管理に求められる要件は複雑化が進んでいる。こうした中、最近注目を集めている生成AIを運用管理製品に組み込む動きがある。生成AIを活用すると運用業務はどう変わるのか。IT運用の悩みをどう解決に導くのか。
DX(デジタルトランスフォーメーション)の推進に伴い、AI(人工知能)やクラウドなどの活用がさらに進む中、IT運用管理に求められる要件はこれまで以上に複雑化し、素早い対応が求められるようになった。ビジネスとシステムは既に一体化しており、IT運用管理に問題があれば、ビジネスそのものが止まってしまう状況だ。
しかし、運用管理の在り方は旧態依然とした面が数多く残されている現実もある。人手作業が多く、スキルやノウハウが属人化し、その結果、人手不足や採用難に陥っているケースも多い。より一層安定性/信頼性が求められる一方で、新しいビジネスの取り組みを俊敏に柔軟に支えていくことも求められている。
こうした状況の中で、ITシステム運用の課題をどのように解決していけばいいのか。そのために大きなヒントが得られるイベントが2023年11月10日に開催された。統合運用管理ソフトウェア「Hinemos」を中心に、運用管理の最新動向を紹介する「Hinemos World 2023」だ。
Hinemosは、オンプレミス、クラウド、仮想化といったさまざまな環境で動作する多種多様なITシステムの安定運用を実現する製品だ。イベントでは、コスト削減、インシデント対応、クラウド対応、自動化、ミッションクリティカル対応、生成AI活用など、ITシステム運用にまつわるさまざまな課題や悩みへの解決策が示された。
最近注目を集めている生成AIは運用現場にどのようなメリットをもたらすのか。その具体像を示したのが荒居優太氏の講演「生成AIを用いた運用自動化・効率化の実現」だ。荒居氏はまず、生成AIを使って実現する「AIドリブン運用」を次のように解説した。
「AIドリブン運用とは、これまで人手作業で実施していたものをAIベースにすることで飛躍的に運用を効率化し、生産性の向上を実現するものです。これにより得られる効果は3つあります。システム運用品質の向上、故障対応や運用改善のアジリティ向上、システム運用コストの低減です」(荒居氏)
では、生成AIを活用することでどのようにこれらの3つの効果が得られるのか。荒居氏は、従来の運用現場の課題をベースに解決策を示した。具体的には「障害対処の判断の適正化」「設計工数の削減/迅速化」「クラウドコスト最適化/適正化」という3つのユースケースがある。
「1つ目の障害対処の判断適正化とは、障害対処の過去ナレッジは蓄積しているものの、探し出せずに記憶と経験を基に判断しているといった課題です。生成AIを用いると、障害発生時に過去ナレッジから対処法をアドバイスするといった方法が可能です。2つ目の設計工数の削減/迅速化は、要件とシステム構成からある程度は機械的に作成できるはずなのに毎回設計作業が発生しているという課題です。生成AIを用いると、要件とシステム構成に合わせた監視設計を自動生成します。3つ目のクラウドコスト最適化/適正化は、使用しているクラウドの支出額が、動作するシステムに対して適正かどうか判断が難しいという課題です。生成AIを用いると、クラウドの性能や課金情報からコスト削減をアドバイスしてくれます」(荒居氏)
生成AIを活用したAIドリブン運用を推進できるようにNTTデータ先端技術が提供しているのがHinemosだ。HinemosがITシステムから収集、蓄積したデータと、NTTデータ先端技術が過去に培ったナレッジを活用することで、コストの適正管理、削減、判断の迅速性、正確性の向上、設計の迅速性、生産性向上を実現する。
「Hinemosは運用自動化を実現する製品としてHinemosメッセージフィルタを提供しています。Hinemosメッセージフィルタはルールエンジンを活用し、インテリジェントなアラートと自動化を実現するコアコンポーネントです。自動化アクションを行うためには実行判断ルールを、運用者がロジックをスクリプトで実装する必要があります。HinemosのAIドリブン運用の取り組みの第1弾として、自動化アクションのイメージを自然言語でテキスト入力するだけで、生成AIが実行判断ルールを自動生成する運用自動化のインタフェースを開発します。効率的に実行判断ルールの生成が行えることで運用メンテナンスの負荷の軽減とイベントからの自動化アクションの実行判断をスムーズに行うことで運用自動化につなげます」(荒居氏)
荒居氏は、Hinemosメッセージフィルタを活用してインシデント量を80%削減したNTTデータグループの事例や「生成AI(ChatGPT)」を活用した運用自動化のデモを紹介。最後に「生成AIを活用したAIドリブン運用により、人手作業では成しえなかった飛躍的な生産性の向上が見込めます」と強調した。
Hinemosはジョブ機能を中心に多彩な機能を提供しており、既存環境からの移行も容易だ。続いて登壇したNTTデータ先端技術の村井栄王氏は、Hinemosが提供する機能の中からジョブ機能と、Hinemosへの移行支援サービスを紹介した。村井氏はまず、運用管理製品の見直しのタイミングについて「製品の見直しでは、大きく分けて4つの課題を検討する必要がある」と指摘し、こう述べた。
「ライセンス体系、技術要件、運用要件、移行コストの4つです。具体的には『製品のライセンス費用が高額で運用費用削減が図れない』『ジョブ管理要件まで満たせる製品の選択肢がない』『利用するツールが増えてしまい、運用管理の一元化が図れない』『既に存在するジョブ定義の資産が活用できないとジョブの再開発コストがかかる』などが課題になります」(村井氏)
これら4つの課題に対して有効な解決策となるのがHinemosだ。まず、ライセンス体系については、CPUコア数、管理対象数に依存しないシンプルな費用体系となる。これにより製品導入後のリソース拡張も、スケールアップ/スケールアウトも安心して実施できるようになる。また動作環境としてクラウドに対応し、可用性構成も組めることが特徴だ。
運用要件では、監視やジョブを含めた統合運用管理の基本機能をワンパッケージで提供する。シンプルな運用管理の仕組みを構築できるという。移行コストについては、移行に関する機能が充実していることに加え、移行サービスを提供する。これにより、ジョブ定義と運用オペレーションの移行を低コストで実現できる。
Hinemosを採用する大きなメリットの一つに豊富なジョブ機能がある。
「Hinemosのジョブ機能は複数のサーバにまたがる処理を一元管理できます。GUIで視覚的に分かりやすい業務フローを定義し、豊富な実行処理と実行制御により、業務の自動化を可能にします。ジョブとしてはRPAシナリオ、リソース制御、承認、監視などがあります。これらを待ち条件、同時実行、遅延監視、繰り返し実行など豊富な実行制御で対応します。また、さまざまな実行契機要望に対応する他、事前のスケジューリング、実行結果の確認、複雑な業務フロー間の連携設定などもサポートします」(村井氏)
移行サービスでは、他社の監視、ジョブ運用をHinemos環境に移行できるよう支援する。移行判断から移行設計、定義変換、導入/試験までをサポートし、安心安全な移行が可能だ。村井氏は新たな移行ツール「Hinemos Migration Assistant(仮称)」を開発中であることも明かした。
運用管理製品は、クラウド環境への対応が要件になりつつあるが、その際に注意したいのはミッションクリティカル運用が可能かどうかだ。続いて登壇したNTTデータ先端技術の福田成美氏は、クラウドでの安定運用を実現するHinemosのミッションクリティカル機能を紹介した。福田氏はまず「クラウド化に伴って運用管理の現場が直面する課題としては大きく4つに分けられます」と指摘し、こう述べた。
「運用管理製品が対象クラウド上で動作サポートされていないという『クラウド上の動作サポート』の課題、運用管理製品が対象クラウド上でクラスタ構成を組めないという『クラウド上の可用性構成』の課題、リソースを柔軟に変更できるのにライセンスが複雑/高額という『クラウド上のライセンス費用』の課題、オンプレミス、仮想化環境と違うクラウド専用の運用が必要という『クラウドの特徴への対応』の課題です」(福田氏)
Hinemosはさまざまなクラウドを動作環境としてサポートする他、クラウドに真に対応したミッションクリティカル機能を提供し、リソース変化でスケールしないライセンス体系を提供する。
「Hinemosのミッションクリティカル機能は、統合運用管理機能を提供するHinemosマネジャーの多重化をワンパッケージで提供することで、収集、監視、自動化の高可用性を実現するものです。特徴としては、クラスタリングソフトウェア、共有ディスク不要でマルチプラットフォームに対応した『簡易構築、低コスト』、障害検知と自動系切り替えによる運用継続や切り替え中のメッセージロスト防止機構などによる『統合運用管理機能の可用性』、オンライン系切り戻しによる障害復旧や1コマンドによる系切り戻しといった『簡易運用、オンライン復旧』にあります」(福田氏)
こうした特徴は、導入時のメリットにもつながる。クラスタリングソフトウェア、共有ディスク不要なら、ソフトウェア、ハードウェア費用とエンジニア工数を一気に削減できる。また環境に合ったさまざまな障害を検知し、素早く自動で切り替えるため、監視やジョブ制御を止めることなく運用継続が可能だ。オンライン系切り戻しにより、障害発生から障害復旧まで全てをシステムに影響なく無停止で対処することもできる。
福田氏はそれぞれの特徴を詳しく解説した上で、費用、切り替え時間、監視、ジョブ、復旧、クラウド、保守性といった観点で優位性があると強調した。また、事例としても公共系の大規模システムでミッションクリティカル機能が活用されていることを紹介した。
Hinemos World 2023では、リリースから18年を迎えたHinemosの全体像を詳細に解説するセッションや、Hinemosで利用するWebサイト「Hinemosカスタマーポータル」の解説なども行われた。
先述したように、ITシステムの運用管理は、大幅なコスト削減や自動化への要求、ジョブ管理システムの老朽化、クラウドや仮想基盤上でのシステム統合管理、システム障害時への対応、インシデント管理の効率化やコスト削減など、従来の悩みに加え、新しい課題に対応していかなければならない。
そうした中で、運用管理製品の見直しを軸に、運用管理を改革していくことは、現状の業務や仕組みを維持しながら、将来に向けた新しい基盤を構築していくための現実的なアプローチになる。18年にわたって日本のミッションクリティカルな運用現場を支え、豊富なノウハウを持つHinemosだからこそ実現できることは多い。生成AIをはじめとする先端技術を活用していくことで、運用管理の在り方を、将来に向けて大幅に進化させることも期待できる。
Hinemos World 2023は、オンデマンド配信で視聴可能だ。この機会にぜひアクセスして、運用管理の在り方を変えていくヒントをつかんでほしい。
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アイティメディア営業企画/制作:@IT 編集部/掲載内容有効期限:2023年12月1日