小さな一流企業が目指す小さな一流システムの内製開発野望は、他社の目標となる一流システムの実現

これまで人手も時間もかかっていた見積もりや生産計画作成の自動化に始まり、ERPのサブシステムも、受注予測も――ローコード開発ツールFileMakerで実現してゆくITによる社内改革。

» 2024年03月07日 10時00分 公開
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 広島県三原市に本社を構えるレニアスは、独自技術を基に開発したPC(ポリカーボネート)樹脂製品「RENCRAFT」などの製造、販売で知られるモノづくり企業。社員数約140人と企業規模は比較的小さいものの、建設機械のルーフやゴルフカートのフロントウィンドウなどの分野で国内最大級のシェアを持つ。その高い技術力は、日本国内はもとより、欧州や米国市場においても高い評価を受けている。

 同社のビジョンは「小さな一流企業をめざす」というもの。少数精鋭で、世界で認められる一流企業となることを目指している。そしてそのために力を入れている施策の一つが、情報システムの強化だ。

「小さな一流企業」への大きな挑戦

 「小さな一流企業にふさわしい『小さな一流システム』の実現を目指しています」

レニアス 佐藤吉朗氏

 こう語るのは、レニアス 情報システム 経営企画本部 経営企画部 システム課 課長 佐藤吉朗氏。2018年に他業種から転職してきたインフラ系ITエンジニアだ。佐藤氏によると、入社当時の同社は事業の急激な成長に社内ITが追い付いておらず、さまざまな課題が表出していたという。

 「社内のやりとりはもっぱらメールだけで行われており、情報の管理も『Microsoft Excel』に頼り切っていました。さまざまな業務で『ITを活用すればもっと効率化できるのに』という場面が目に付きましたが、現場の従業員にITに明るいものが少なかったこともあり、社内には『ITで仕事を楽にできる』という発想がありませんでした」

 社内の情報がExcelシートでばらばらに管理されており、従業員同士で情報を広く検索するための仕組みがなく、情報を有効活用できていなかった。一部の業務では「Microsoft Access」によって構築されたアプリケーションを利用していたが、その利用範囲は限られていた。また、そのアプリケーションの開発やメンテナンスを社外ベンダーに任せっ切りだったこともあり、運用改善も思うようにいかなかった。

 そこで佐藤氏らが中心となって、IT面での業務改革に着手することになった。ビジネスチャットツールを導入して社内のコミュニケーションの円滑化を図ったり、「Microsoft Teams」やVDI(仮想デスクトップ)を導入してテレワーク環境を整備したりするなど、さまざまな技術を導入して社内ITの整備を進めていった。その目玉施策の一つとなったのが、Clarisのローコードツール「Claris FileMaker」を使ったアプリケーションの内製開発だ。

受注処理や生産計画作成の自動化システムを内製開発

 佐藤氏はレニアスに入社する前に勤務していた医療法人でFileMakerを使ったアプリケーション開発を手掛けた経験があり、既にFileMakerを使った開発スキルは一通り身に付けていた。同氏がレニアスでもFileMakerを導入しようと思い付いたのは、社内でとあるシステム案件が持ち上がったことがきっかけだった。

 「当時はクライアントからメールで受け取った受注情報は、手作業で基幹システムに入力していました。その業務を自動化するために、高価なパッケージ製品を購入する話が持ち上がりました。そこで私が、『これくらいのことなら、FileMakerを使えばもっと安価に実現できます』と手を上げて、FileMakerとプラグインソフトウェアを会社に購入してもらったのが始まりでした」

 こうしてFileMakerを使って開発したアプリケーションをRPA(ロボティックプロセスオートメーション)ソフトウェアなどと組み合わせることで、受注処理の完全な自動化に成功。この成功が社内で高く評価され、その後さまざまな業務にFileMakerを使って開発したアプリケーションが投入されることになった。

受注取込アプリは「Power Automate」と連携して自動で受注データを作成したりアップロードしたりできる

 例えば、手動で2日間かけていた製造工程の生産計画策定作業をFileMakerでアプリケーション化したところ、クリック一つで計画の大部分を自動作成できるようになった。また以前は基幹システムで作成した工程表を紙にプリントして生産現場に持ち込んでいたが、FileMakerを使ってiPadで参照できるようにしたことで現場の利便性が大いに向上したという。

レニアス 大西勉氏

 こうしたアプリケーションの設計、開発作業を佐藤氏と共に進めている情報システム 経営企画本部 経営企画部 システム課 エキスパート 大西勉(つとむ)氏は、FileMakerを使った開発作業について次のように述べる。

 「私は佐藤と同じ時期にレニアスに入社し、FileMakerに初めて触れました。それまでさまざまなアプリケーション開発を長年行ってきましたが、FileMakerはAccessのマクロを使えるスキルがあれば問題なく使いこなせると感じました。GUI(グラフィカルユーザーインタフェース)ベースで開発でき、コーディングの難しい文法を覚える必要もありません。弊社のようにコーディングスキルのある社員の数が限られている会社では、IT資産のブラックボックス化や属人化を回避する上でも非常に有用だと思います」

ERPのデータを参照するサブシステムを内製開発

 こうしたFileMakerを使ったアプリケーション内製化による業務変革の取り組みは、現在も進行中だ。同社は現在ERP(統合基幹業務システム)の新規導入プロジェクトで、Microsoftのクラウド型ERPシステム「Dynamics 365 Business Central」を使った基幹システムのモダナイズに取り組んでいるが、ここでもFileMakerが大いに役立っているという。

 「ERPパッケージにカスタマイズを施してしまうと、メンテナンス性が低下するとともに、バージョンアップ作業にも手間がかかるようになってしまいます。ましてやDynamics 365 Business Centralはクラウドサービスであり、Microsoft側でさまざまなアップデートが自動的に実行されるため、その際のリスクを抑えるためにもカスタマイズやアドオン開発は最小限に抑えたいと考えていました」(大西氏)

 とはいえ、ERPパッケージを標準仕様のまま利用するだけでは、既存業務とギャップが生じて生産性が低下してしまう恐れがある。このジレンマを解消し、パッケージの仕様と既存業務とのギャップを埋めるために、FileMakerを使って「ERPのサブシステム」を開発しているのだ。

 具体的には、既存システムに似せたUI(ユーザーインタフェース)を新たにFileMakerで作成し、そのバックエンドでERPからデータ取得してFileMaker上のUIに表示させるというものだ。

 「ERPのデータを読み書きする『更新系サブシステム』はベンダーに開発を依頼しているのですが、データを読み出すだけの『参照系サブシステム』は、FileMaker内製開発でコストを抑えています。既にプロトタイプの開発は完了しており、2024年4月から本番運用を開始する予定です」(佐藤氏)

見積管理アプリで蓄積したデータをさらに活用

 同社の製品の多くは特注品であるため、顧客から見積もり依頼を受けた際には、その都度営業担当者が設計部門にその作業を依頼していた。設計部門では、依頼内容に基づいて予想原価を算出し、それを営業担当者に伝え、最終的に営業担当者が見積額を算出して顧客に回答していた。

 この一連のプロセスにはかなり多くの時間と工数がかかり、特に設計部門では原価計算のためだけに専任の担当者を2人配置するなど、膨大な手間を強いられていた。そこで佐藤氏らはFileMakerを使い、見積もり関連の情報をデータベース化してそれらを統計解析処理にかけることで、簡単なものであればわずか2、3分で見積額を算出できるアプリケーションを開発した。

設計課での見積もりに使用されている見積アプリ。短時間で複数の見積もりが可能で、自動計算、ワークフロー連携のほか、「Deepnest.io」や「FreeCAD」と連携して板取り計算ができる

 既に設計部門ではこのアプリケーションを日々の見積もり業務で活用しており、運用開始から約1年たった今ではかなりのデータがたまってきたという。

 「こうして集まったデータをさらに解析することで、見積もりの精度や対象製品の幅を広げていくとともに、見積もり以外の業務への適用も今後は模索していきたいと考えています」(佐藤氏)

 同様にFileMakerに蓄積した情報を活用したソリューションの一つとして、「受注予測アプリケーション」の開発も将来的には視野に入れている。

受注予測アプリは時系列解析用のライブラリ「Prophet」に連携しており、将来的には内示データまで作成できるプログラムを作成中

 「短納期でお客さまの要望にお応えするためには、なるべく早い段階でお客さまから発注の内示を頂き、その内容に基づいて適切な生産計画を立てる必要があります。しかし近年では内示を頂きにくくなってきているため、これを補完した上で需要予測の仕組みが求められるのではないかと考えています」(大西氏)

情報をデータベース化して価値を高めていく

 こうした将来構想を実現するために、佐藤氏と大西氏は今後もFileMakerを大いに活用していきたいとしている。特に現場の業務と密接に関係するアプリケーションを開発するに当たっては、「FileMakerのようなローコードツールを使うことで、アプリケーションのビジュアルイメージを早い段階でユーザーに確認してもらうことができるので、お互いにイメージを共有しやすく、ユーザーからも具体的な要望が上がってきやすくなると考えています」と佐藤氏はFileMakerの利点を語る。

 レニアスは、今後もFileMakerによる内製開発を武器に、ITによる業務変革をさらに加速させていきたいとしている。

 「海外市場への進出を新たに準備しているので、グローバル展開に向けてさらにシステムを整備していく必要がありますし、やるべきことは山ほどあります。これらを限られた人手と予算で実現するために、FileMakerには今後さらに大きな役割を期待しています。最終的には、他の中小企業に目標とされるようなレベルのシステムを実現したいです」(大西氏)

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提供:Claris International Inc.
アイティメディア営業企画/制作:@IT 編集部/掲載内容有効期限:2024年3月29日

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