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第3回 OSI参照モデル詳説 TCP/IPプロトコル(3/5 ページ)

OSI参照モデルは、ネットワークの機能を説明するときに必ず引き合いに出される重要な考え方である。このOSI参照モデルについて解説する。

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第1層「物理層」

 「物理層(physical layer)」のプロトコルでは、コンピュータのデータ(コンピュータ同士がやり取りする情報。0と1からなる符号)とネットワーク媒体上を流れる電気的な信号を変換する機能を提供している。具体的には、コンピュータをケーブルなどのネットワーク媒体に接続し、コンピュータが送信するデータ列を電気信号に変換してネットワーク媒体上へと送り出したり、ネットワーク媒体からの電気信号をデータ列に変換して受け取ったりといった機能を提供する。たとえば、ケーブルの特性やコネクタの形状、データを電気信号に変換する符号化の方式など、ネットワークに接続するためのハードウェアについての物理的な仕様を規定している。

 物理層のプロトコルのみを実装した機器としては、Ethernetや光ファイバ ケーブルのリピータ(repeater、中継機)などが挙げられる。リピータとはネットワークを延長するための機器であり、ネットワーク媒体同士を接続し、一方に流れる信号を整形、増幅して他方に中継・転送する。これにより、1本のケーブルだけでは信号が減衰して届かなくなるような長い距離でも到達させることができるようになる。ツイストペア ケーブルを利用した10BASE-T100BASE-TXのようなEthernetネットワークで使われる(非スイッチ タイプの)ハブ(hub)は、「リピータ ハブ(repeater hub)」とも呼ばれ、これもリピータの一種である。

物理層

物理層は、コンピュータと、ケーブルなどのネットワーク媒体を接続し、コンピュータのデータとネットワーク媒体を流れる信号を変換する層である。リピータ ハブは物理層の機能のみを提供する機器で、信号の中継・転送を行う機器である。リピータに入力されたデータ(電気信号)はそのまま、ほかのポートへ中継・転送される。


第2層「データリンク層」

 「データリンク層(datalink layer)」のプロトコルは、1つのネットワーク媒体に接続された複数のコンピュータの間で、データを伝送するための機能を提供する。ネットワーク媒体上に接続された複数のコンピュータを区別し、1つのコンピュータを特定するための方法を定義したり、データを届ける相手のコンピュータを表わす「宛先(destination)」や、データを送ったコンピュータを表わす「送信元(source)」、データの境界をどのように認識するかなどを定め、データの正当性を確認して、エラー(複数のコンピュータが1つのネットワーク媒体に同時にデータを送出するとデータが衝突して壊れてしまい、異常なデータになってしまう)の検出なども行う。つまり、物理層ではデータと信号の変換のみを行っていたが、データリンク層では誰から誰に伝送されたデータなのか、データは壊れていないかといったことを判断するのである。

 データリンク層までのプロトコルを実装したネットワーク機器としては「ブリッジ(bridge)」がある。ブリッジも、基本的にはリピータと同様に、ネットワーク媒体同士を接続してネットワークを延長するための機器であるが、リピータは「電気信号」を単に中継・転送するだけなのに対して、ブリッジでは、その中にある「データ」を転送する。ブリッジは、一方のネットワーク媒体を流れる信号を「データ」として読み取り(物理層の機能を使って、「電気信号」から「データ」への変換を行う)、それが正常な「データ」ならば、他方のネットワーク媒体に転送する(物理層の機能を使って、「データ」から「電気信号」への変換を行う)。もしデータの内容が途中で壊れていたとしても(たとえばEthernetでは、複数のノードが同時に送信を始めると、データ列が衝突して、途中で壊れてしまうことがある。このようなデータは無効である)、リピータではそのような異常な「データ」も転送してしまうが(一部が壊れたまま中継・転送してしまう。もちろんこのような信号列は、データとしては意味がないので、転送しても無駄である)、ブリッジでは異常な(意味のない)「データ」は転送しない。

 ツイストペア ケーブルを利用したEthernetネットワーク(10BASE-Tや100BASE-TXなど)で使われるスイッチング ハブ(switching hub)は、ブリッジと同じようにデータを理解する上に、データの宛先に指定されているコンピュータが接続されているケーブルにのみデータを中継・転送するという、より高度な機器である。

データリンク層

データリンク層は、ネットワーク媒体上を流れるデータの宛先や送信元、データの境界を認識する層である。スイッチングハブはデータの中継・転送を行う機器であるが、データリンク層までの機能を持ち、データの宛先を見て、ケーブルを選択してデータを中継・転送する。単なるハブであれば、そこに接続されているすべてのコンピュータにデータが届くが、受け取ったコンピュータ側では自分に関係の無いデータが届いた場合は、そのデータを無視する。これに対してスイッチングハブでは、宛先に指定されていないコンピュータにはデータが届かない。図中の「12:34:56:78:90:ab」などは、通信の宛先を識別するためのデータリンク層のアドレス。


  

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