第9回 イーサネット(その4) - フロー制御とVLAN、トラブルシューティング:詳説 TCP/IPプロトコル(3/5 ページ)
TCP/IPにともに広く普及したイーサネット。今回はイーサネット編の最終回として、フロー制御やVLAN、トラブルシューティング方法について解説。
ネットワークのトラブルシューティングでは、ネットワークで使用されている各種規格の理解が重要で、そのうえでネットワークがどのようなに構成されているのか、どのようなトラフィックがどれくらい発生しているかなどを把握する必要がある。イーサネットのトラブルシューティングに関してもこれは同じである。
イーサネットは物理層とデータリンク層にまたがる規格であるため、そのトラブルも物理層とデータリンク層の障害が考えられる。
物理層の障害としては、ステーションとネットワーク媒体の接触不良、ケーブルの断線、イーサネット・インターフェイスや各種デバイスの故障などがある。また、ネットワークを構成する各要素がそれぞれ規格を正しく守っているかどうかということも問題になる。例えば、ネットワーク媒体のケーブル長やステーション数などが制限を超えていないか、各セグメント同士の接続には適切なデバイスが使われているかなどである。
データリンク層の障害としては、各セグメントの設定が間違っていたり、ハブのカスケード接続の段数が制限内に収まっていなかったり、通信路に異常なループがあったりといったことが考えられる。また、ネットワークにはどのようなステーションが接続されていて、それぞれが発生するトラフィックのパターンはどのようなもので、どの程度の量なのかも問題となる。
ある程度の規模のネットワークを管理する場合は、専用の計測機器やソフトウェアが必要であり、トラブルシューティングでも活用することになる。専用の機器やソフトウェアの使いかたはさまざまであり、使いこなすためにはそれなりの知識と経験が必要となる。
ここでは、これまでに説明した内容を活用して、誰でも利用できるトラブルシューティングについて見ていくことにする。
ハブやネットワーク・カードのLEDによる確認
各種ネットワーク・デバイスには、その動作状態を示すLEDが付いている。LEDには「電源LED」、「リンクLED」、「アクティビティLED」、「衝突LED」、「切り離しLED」、「全二重/半二重LED」などがある。これらのLEDを確認するだけでも、さまざまなトラブルシューティングを行うことができるだろう。ここでは、簡単にそれらのLEDの機能についてまとめておく。
ハブに装備されたLED表示ランプ
ネットワークのトラブルシューティングのためには、ハブに備えられたLEDも重要な手がかりとなる。これはプラネックスコミュニケーションズのVLAN対応スイッチング・ハブ、FHSW-1616NVのLEDの例(このハブは、ポート・ベースのVLAN機能や、複数ケーブルを束ねて帯域幅を増やすTrunk機能を持っている)。
(1)Link/Activity LED。リンク確立時に点灯し、トラフィックがあると点滅する。
(2)100Mbps LED。100Mbps動作時に点灯し、10Mbps動作時には消灯。PC側のネットワーク・カードが100Mbps対応の場合は、これは点灯していなければならないが、オートネゴシエーションなどに失敗すると、10Mbpsでしか接続できないことがある。
(3)Full Duplex Mode LED。FDXは一般的には全二重通信の略であり、全二重通信中に点灯する(マニュアルには、「オートネゴシーエション・モードで通信中に点灯」となっているが、これは「オートネゴシエーションで全二重に設定されたときに点灯」の間違いであろう)。ネットワーク・カードによってはオートネゴシエーションが正しく機能しないこともあるので、そのような場合は手動で半二重に固定して使用するなどの対策が必要。
(4)Collision LED。コリジョンが発生したときに点灯。リンク/アクティビティLEDが点灯するときに、同時に(少し)点灯するくらいならば問題ないが、ずっと点灯し続けるようならばネットワークのトラブルが発生している可能性がある。
・電源LED(Power)
電源が投入されているかどうかを示すLEDである。ハブやルータの電源が入っていなかったというのは、最もポピュラーなトラブルである。まずは最初に確認すべきLEDである。
・リンクLED(Link)
ツイストペア・ケーブルを利用するデバイスは、その両端のデバイスが正しく接続されているかを常に検査している。そのためツイストペア・ケーブルを利用するデバイスには正しく接続していることを示す「リンクLED」がついており、正しく接続されているとこれが点灯する。具体的には、ある一定周期で「リンク・パルス」という信号を相手に送ったり、それを受け取ったりして、お互いにアクティブであるかどうかを確認している。リンクLEDは、このリンク・パルスを検出すると点灯するLEDである。
もし正しく接続していることを示していない(リンクLEDが消灯している)場合は、ケーブルに問題がある可能性が高い。ケーブルが機器にしっかりと接続されているか、ケーブルが断線していないか、ストレート・ケーブルとクロス・ケーブルを間違えていないか、ハブならばカスケード・ポート(アップリンク・ポート)と通常のポートを間違えていないか、などを確認する。ケーブルに問題がない場合は、両端の機器の故障である可能性が高いので、他のポートやケーブル、カードなどと差し替えてみて、どちらが原因であるかを調査する。
・アクティビティLED(Activity)
トラフィック(送信もしくは受信)があることを示すLEDである。送信(TX)LEDと受信(RX)LEDに分かれているデバイスもあるし、リンクLEDと兼用しているデバイスも多い。トラフィックは通常断続的に発生するので、長時間トラフィックがある状態(LEDがずっと点灯したままなど)は何らかの異常が発生している可能性がある。ケーブルやハードウェアなど問題がないか確認する。
ハブによっては、各ポートごとのアクティビティを表すLEDのほかに、ネットワーク全体の使用率を表すパーセンテージのインジケータ(ネットワークが何%使用されているかを表す数値)などが付いている場合もある。ネットワーク上に1台このようなインジケータが付いたハブがあると、全体のトラフィック量を見積もったり、モニタしたりするのに便利である。
・衝突LED(Collision)
イーサネットの衝突状態を検出したことを示すLEDである。CSMA/CDは衝突の発生を前提に設計されているので、衝突の発生頻度が低い場合は問題ではないのだが、発生頻度が高い場合はネットワークのトラフィック量が多すぎるか、何らかの障害が発生している可能性がある。ただしトラフィックが多くなった瞬間(ファイルやFTP、Webなどへアクセスした瞬間)に、同時に衝突LEDが点灯するのは特に問題ではない。アクティビティがほとんどなかったり、全体のトラフィックが少ないのに、衝突LEDが(長く)点灯したりするのは問題である。
トラフィック量が多すぎる場合は、トラフィックのパターンを分析し、トラフィックに関係するステーションを他のセグメントに移動するか、ブリッジやスイッチング・ハブで衝突ドメインを複数に分割するか、あるいはルーターでブロードキャスト・ドメインを分割するなどの対策が必要となる。
・切り離しLED(Partition)
「自動切り離し(auto-partitioning)機能」が働き、障害が発生したセグメントを「切り離した」ことを示すLEDである。自動切り離しとはリピータ・ハブの機能で、あるセグメントへの送信に連続して30回失敗するか、あるセグメント上でJAM信号(衝突を検出した場合に送信する信号。衝突状態を確実にし、他のステーションへ衝突発生を知らせるための信号。詳細については連載第6回の「3.10BASE5イーサネットの通信モデル」を参照)が異常に長く続いている場合、そのセグメントを切り離して、トラブルの影響が他へ及ばないようにする機能である。リピータ・ハブは切り離したセグメントからのフレームは受信せず、衝突信号も無視するが、切り離したセグメントへの送信は行う。切り離したセグメントへの送信に成功するようになれば、正常に戻ったと判断し復帰させる。
切り離しが行われるようなら、そのセグメントに何らかの障害が発生しているので、ケーブルやハードウェアなどに問題がないか確認する。
・全二重/半二重LED(Full Duplex/Half Duplex)
全二重(半二重)方式の通信を行っているセグメントを示すLEDである。全二重方式をサポートするスイッチング・ハブなどに備わっている場合がある。全二重方式の通信が行われているかどうか確認することができる。
・100Mbps/10Mbps 10BASEと100BASE-TXの両方をサポートしたハブにおいて、どちらの速度で通信しているかを表すLEDである。正しく期待された速度でリンクが確立しているかを確認するために利用できる。100BASE-TX対応のデバイスなのに、100Mbpsで接続できていないようならば、オートネゴシーエション機能(通信速度や全二重/半二重を自動的に決定する機能)が正しく作動していない可能性がある。デバイス・ドライバの通信モードの設定やモードを設定するためのDIPスイッチの設定を確認する(一部のハブには、通信速度やモードを手動で固定的に設定するためのDIPスイッチが付いている)。
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