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「金持ちSE」、「貧乏SE」30歳年収「400万円」 vs. 「800万円」、幸福なのはドッチ!?

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ここに2人の若手技術者が登場する。28歳で年収800万円のITコンサルタントと、27歳で年収400万円のSE。将来のキャリア、年収、そして仕事と私生活の充実度を比較すると、どちらが幸福なのか……。現在対照的な状況にある2人が、どのような日々を過ごし、数年後どのようなキャリアを作り上げていこうとしているのか。あなたはどちらの立場に軍配を上げる?


28歳で年収800万円は当然の結果にすぎない

 「現在の年収には満足はしていませんね。金額そのものは少なくないかもしれませんが、この仕事は典型的な労働集約型。時間給にしたら決して高くない。徹夜など当たり前の世界なので、もっともらってもいいかなというのが本音です」

 現在大手コンサルティングファームでITコンサルタントとして働く国広洋次さん(仮名・28歳)の年収はおよそ800万円。同世代の中では確実にトップクラスに入る年収だが、不満を隠さない。

 「世間では、コンサルタントのもらっている年収そのものばかりがクローズアップされすぎている気がします。特に最近はほとんどの業種でボーナスが下がっているから、余計なんでしょうね。確かに他業界に比べればこの業界は景気に左右されにくいし、他職種の人と比べて給与面で恵まれているのは理解しています。ただ、分かってほしいのは、給与が高いのは、リスクの高さの裏返しだということです」

 国広さんがそう語るのももっともな話だ。会社からもクライアントからも常に高いレベルのアウトプットを求められ、それを達成できなければ会社にいづらくなる。すぐに辞めざるを得ない状況が訪れるからだ。

 コンサルティングファームで、例えばアソシエイトとして存在できるのは3年〜5年程度だ。それほど、「Up or Out」の激しい世界なのである。このプレッシャーの中では、ある程度給与が高くなければやってられないと語るのも、うなづけるところだ。

「生きていくためにリスクは必要」その意識が激務を支えている

 実際労働時間は長い。カットオーバーが近づくと、1日15時間を超える日が2週間近く続くこともある。その間、土日や休日に休むことはない。

 「仕事のせいで失ったものは多いですよ。とにかく時間がないので、プライベートな時間がないのが悩みといえば悩み。僕の年齢くらいから、友人の中でも結婚する人がちらほら出てきますしね。僕にとっては遠い未来の話ですが(笑)」

 ただ、どんなに忙しくても、“体感的”にはあまり忙しいとは感じていないようだ。

 「目的意識があるからでしょうか。時間がたつのはやたらと速い。それに、現在のリスク感覚は自分にはいい刺激になる。これがプレッシャーになるような人は、コンサルタントになって高給を目指すことなどやめた方がいいでしょうね」

 現在のITコンサルタントから、将来は戦略系のコンサルタントへ転職することを狙っている。ただ、一般的には、IT系のコンサルタントから戦略系に移るのは非常に難しいというのが転職市場のコンセンサスだ。

 それが可能になるとすれば、ケースとしてはあまり多くないものの、若いうちに海外のトップMBA留学などを一度行うという方法だ。国広さんも、高給を稼げる現職で資金をため、30歳を少し過ぎた辺りでMBA留学することを考えている。

 「『生きていくためにリスクは必要』というのが僕の持論。数年後にいい生活をするために、いまはリスクを負って努力すべきだと思いますね」。そうつぶやき、また激務の待つ夜の職場へと戻っていった……。

20代のうちは金額よりも“働く環境”を重視したい

 一方、比較的規模の小さいシステムインテグレータ(SIer)でSEとして働く森下修さん(仮名・27歳)の年収は400万円を少し切る。年齢は国広さんとほぼ同じだが、年収は約半分になる。中小、ベンチャー企業がひしめくIT業界。厳しい競争の中、報酬はやや抑えられぎみの感は否めない。

 今夏のボーナス額は40万円だが、森下さんの勤める会社では年俸制を採用しており、ボーナスは基本的に年俸の数カ月分と固定されているため、金額そのものに実質的な意味はない。「ボーナス」といえるのは、40万円に上乗せされて支給される可能性があるインセンティブだ。

 インセンティブの額が判明するのはこれからだが、あまり規模の大きくない会社であるため、査定には創業社長の意向が強く反映される。査定の客観性、公平性という点で不満がないわけではないが、それでも、仕事内容自体には非常に満足しており、当面は会社を辞めるつもりはないという。

 「私は経済的処遇よりも“環境”を重視しています」。有名大学を卒業した森下さんの同期には大手コンサルティングファームに就職した人も少なからずいた。そのチャンスがなかったわけではないが、あえて現在の会社を選んだ。

 「これからの時代、収入はあくまで自分の価値に比例して高まっていくものだと思います。若いうちに実力以上の給与をもらっても、きっと長続きしない。就職するときは、目先のお金にこだわるよりも、将来の自分のキャリアを考えたときに得るものが大きい会社を選ぼうと心掛けていました。ITコンサルタントへのあこがれのようなものはなかったわけではありませんが、私は文系出身で技術的なことがまったく分かりませんでした。長い目で見た場合、まず技術面のバックグラウンドをじっくりと習得した方が、結局は得になると思ったのです」

将来年俸を上げるためにはどんなキャリアを積むべきか

 同じIT業界でも、どのように人材を育て、キャリアを積ませるかは、会社によって大きく異なる。例えば、金額の小さい仕事は基本的に受けないというスタンスの会社もあれば、そうでないところもある。単価の大きい仕事ばかり受けていれば会社の利益は大きくなり、社員の報酬も大きくなるに違いない。しかし、こうした会社では、入社間もない若手社員の活躍の場はそう多くないだろう。

 「私は単価の低い仕事に意味がないとは思いません。例えば、会社が入社2年目のSEに500万円のプロジェクトリーダーを任せてくれたとします。こんな小さな仕事をしても会社はもうからないかもしれませんが、間違いなく若手社員のスキルアップには貢献するはずです。ウチの会社がまさにこのタイプ。面接のとき、社長にこの話を聞いて、入社を決めました。将来の年俸を上げるためには、そこでどんなキャリアが積めるのかが一番重要だと思ったからです」

 実際、(数はそう多くないが)大手コンサルティングファームの生え抜きコンサルタントの中には、SIerから転職してきた社員と比べて技術的なバックグラウンドが大きく見劣りすることに危機感を感じ、年収ダウン覚悟でSIerに転職する人もいる。そう考えると、森下さんの選んだ道は、ある意味で「堅実」だともいえる。

目先の金だけで転職する人と何が得られるかを考える人

 さらに、森下さんが現在の会社に勤めるもう1つのメリットが「時間」だ。

 「ウチの会社が暇だとはいえませんが、友人のITコンサルタントのように、技術的なことをじっくり勉強することができないまま、時間に追われまくるというようなことはありません。年収は高くありませんが、それと引き換えに多くの時間が手に入りますから、自主的に本を読んで勉強することもできます。だから、総合的に考えて、現段階では、年収が低いことに対する不満はありません。自己投資に使うお金や時間もあります。もちろん、今後もずっとこの年収でよいというわけではありませんが」

 目先の金にこだわった早計な選択は、結局、将来自分の可能性の芽を摘み取ってしまう――この主張はある面ではまぎれもない真実だろう。自分を磨いてくれる「環境」という財産。それこそ、今後のキャリアパスを考えるうえで最も大事にしなければならないものだ。自分の価値を高めることに集中していれば、収入は後からついてくるはず。

 「目先の金だけで動く人」と、「そこで何を得られるか」という視点で働く人とでは、仮に35歳で同じく年収1000万円に到達したとしても、その後の成長度合いが大きく変わってくるに違いない。

「金持ちSE」から「貧乏SE」への分岐点はすぐにやってくる

 もちろん、国広さんの選択が間違っているというわけではない。特に国広さんの場合、きちんと将来を見つめる目を持っている。しかし現在の激務の中で、どのようにして次のステップに進むための勉強時間を作り出していくかは、今後国広さんにとって、大きな課題となるだろう。

 現在28歳で年収800万円を稼ぐ国広さんは、「金持ちSE」の部類に入る。だからといって、30代以降も年収が上昇し続けるという保証は何もない。スキルアップマインドを忘れてしまったら、一挙に「貧乏SE」になる可能性もある。一方、森下さんにとって、いまの年収は平均よりやや少ないからといっても、自己投資に費やす「資金」や「時間」がないというわけではない。

 30歳を目前に、現在対照的な状況にある2人が、数年後どのようなキャリアを作り上げているのか。そしてそのとき、「金持ちSE」と称されるにふさわしいステージで働き、充実した私生活を過ごしているのは、どちらか……。

 エンジニアの皆さんは、どちらのキャリア観に軍配を上げるのだろうか?

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