続いてルールボディについて見ていこう。ちなみに、ルールボディは必須項目ではない。よって指定しなくても問題はないが、その場合は特定のIPアドレスからの全てのパケットにマッチしてしまう。このような挙動を必要とする機会はあまりなく、できるだけ細かな指定をしたいと考えるだろう。そんなときに使用するのがルールボディである。ルールヘッダだけでは表現できなかった詳細な条件をルールボディで指定するのだ。
なお、以下で説明するオプションはセミコロン(;)で区切るので、併せて覚えておいてほしい。
ルールボディ:contentオプション
contentオプションは、パケットのペイロードを解析する際に用いる。例えば、ペイロード中に「/etc/passwd」が含まれるパケットに対しアラートを出力したいのなら、「content:"/etc/passwd"」と指定すればよい。このようにcontentオプションを使うときは「content:」に続いて指定すればよい。
なお、contentオプションにはASCIIのみならず、バイナリデータを指定できる。バイナリデータを指定する場合は、パイプ(|)で囲って、16進数で指定すればよい。例えば、「|fffe 011f|」のように指定する。
もし、否定を表したいときは否定演算子である「!」を使用する。また、コロン(:)やパイプ(|)、ダブルクォーテーション(")を使用したいときは、ダブルクォーテーションによってエスケープする必要がある。ASCIIとバイナリを混在させて指定することも可能であるため、かなり柔軟な指定が可能になるはずである。
ルールボディ:uricontentオプション
このオプションを見て、「contentオプションと何が違うの?」といった疑問をもたれた方がいらっしゃるかもしれない。contentオプションは、そのパケットのペイロード全体が対象となるのに対し、uricontentオプションは、当該パケットのリクエストURI部分のみが対象となる。
これをうまく使うと、LANの内部に限定して公開しているWebコンテンツに対し、LAN外部からアクセスされた場合などにアラートを出力できるようになる。指定方法はcontentオプションと同様であるが、バイナリ指定はできない。
ルールボディ:depthオプション
depthオプションはcontentオプションで指定された文字列を検索する範囲をバイト数で指定する。これを指定することにより、パケットの一部分のみが分析対象となり、負荷を軽減できる。よって、極力指定する方がよい。指定方法は簡単で、「depth:」に続いて範囲をバイト数で指定すればよい。
ルールボディ:offsetオプション
offsetオプションは、contentオプションで指定した文字列の検索開始位置を指定するもので、バイト数で指定する。もし、必ず先頭に登場するのであれば0を指定する。
この指定を誤ると、いかに優れたシグネチャを作成しても不正アクセスを検出できない。よって、慎重に設定してほしい。指定方法はdepthオプションと同様で、「offset:」に続いて開始位置のオフセットをバイト数で指定する。
ルールボディ:nocaseオプション
nocaseオプションは、contentオプションに指定された文字列の大文字/小文字を無視するよう指定するものである。例えば、「content:"hoge";」と指定されていた場合、nocaseオプションなしでは、「Hoge」や「hOgE」といったパケットは検出できない。よって、これらのパケットも対象としたいのなら、nocaseオプションを指定する必要がある。指定方法は単純で「nocase;」と記述すればよい。
ルールボディ:sessionオプション
sessionオプションは、セッション中の表示可能文字を抜き出して表示するためのオプションである。指定方法は下記の2つがある。
- session:printable
- session:all
なお、printableとallを同時に指定することはできない。
ルールボディ:statelessオプション
このオプションは、Snortの初期バージョンにおいてのみ必要となるものであり、最近のバージョンであれば指定は不要である(このオプションは、後述するflowオプションに内包されている)。指定する場合は単純に「stateless;」とだけ指定すればよい。
ルールボディ:regexオプション
このオプションはcontextオプション中で正規表現を使用するためのものである。ここで注意が必要なのは、使用できる正規表現は標準的なものではないということである。現時点では、「?」または「*」のいずれか1つを使用することができる。前者が任意の1文字、後者が任意の1文字以上の文字列を表す。なお、状況が変わっている可能性があるため、随時ドキュメントなどで確認していただきたい。
ルールボディ:flowオプション
このオプションは、TCP再構築モジュールと連係して動作するもので、クライアントとサーバ間でやりとりされるパケットの向きを定義できる。指定方法は「flow:<OPTION>」のようになる。なお<OPTION>の部分に指定できるものとして、下記のものがある。
to_server | サーバに向かって送られるパケットであることを示す | |
to_client | クライアントに向かって送られるパケットであることを示す | |
from_server | サーバからクライアントに向かって送られるパケットであることを示す | |
from_client | クライアントからサーバに向かって送られるパケットであることを示す | |
only_stream | 再構築されたパケットまたは確立された通信中のパケットのみにマッチ | |
no_stream | 再構築されたパケットまたは確立された通信中のパケット以外にマッチ | |
established | 確立されたTCPパケットまたはセッションのパケットにマッチ | |
stateless | statelessオプションと同等の動作をする(statelessオプションとは排他使用) |
Index
独自ルールファイルで細かなチューニング
シグネチャの構成
ルールヘッダ:ルールアクション
ルールヘッダ:プロトコル
ルールヘッダ:ソース/ディスティネーションIPアドレス
ルールヘッダ:ポート番号
ルールヘッダ:方向指示子
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ルールボディ:contentオプション
ルールボディ:uricontentオプション
ルールボディ:depthオプション
ルールボディ:offsetオプション
ルールボディ:nocaseオプション
ルールボディ:sessionオプション
ルールボディ:statelessオプション
ルールボディ:regexオプション
ルールボディ:flowオプション
ルールボディ:fragbitsオプション(IPオプション)
ルールボディ:sameipオプション(IPオプション)
ルールボディ:ipoptオプション(IPオプション)
ルールボディ:IDオプション(IPオプション)
ルールボディ:tosオプション(IPオプション)
ルールボディ:ttlオプション(IPオプション)
ルールボディ:seqオプション(TCPオプション)
ルールボディ:flagsオプション(TCPオプション)
ルールボディ:ackオプション(TCPオプション)
ルールボディ:icmp_idオプション(ICMPオプション)
ルールボディ:icmp_seqオプション(ICMPオプション)
ルールボディ:icodeオプション(ICMPオプション)
ルールボディ:itypeオプション(ICMPオプション)
ルールボディ:sidオプション
ルールボディ:revオプション
ルールボディ:priorityオプション
ルールボディ:classtypeオプション
ルールボディ:referenceオプション
ルールボディ:msgオプション
ルールボディ:logtoオプション
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