商用国家安全保障アルゴリズム(CNSA)の期限となる2030年までに暗号化/キー管理サービス市場が60億ドルに達するとABI Researchが予測 急成長の要因とは?:ポスト量子時代の現状と課題
調査会社のABI Researchは、2024年に15億ドルだった世界のキー管理サービス(KMS)市場は、2030年までにおよそ60億ドルに成長するという予測を発表した。
調査会社のABI Researchは、2024年11月21日(米国時間)、2024年に15億ドルだった世界のキー管理サービス(KMS)市場は、2030年までにおよそ60億ドルに成長するという予測を発表した。
暗号化サービス市場の動向について、同社は下記のように予測している。
暗号化サービス市場の急成長とKMS台頭の要因とは
暗号化サービス市場は、デジタルトランスフォーメーションの指数関数的な成長とポスト量子暗号化の可能性に対応すべく急速に拡大している。その中でキー管理サービス(KMS)が有力で急成長するサブセグメントとして台頭している。
ポスト量子時代におけるセキュリティ確保の需要が高まっており、相互運用性の高い暗号機能を備えたキー管理サービスが重視されるようになっている。これにより、従来のベンダーロックイン型サービスからの移行が進んでいる。
加えて、IoTテクノロジーへの依存度の高まりやクラウド移行の拡大により、企業内の暗号鍵の数が増加している。さらに、企業データの量と多様性の拡大も、デジタルトラストの複雑性を高めており、KMSに対する需要を後押ししている。同時に、ポスト量子アルゴリズムの暗号システムへの統合と暗号機能の俊敏性の最大化が重要視される中、KMSが提供する高度な制御性、可視性、効率性は、企業のポスト量子セキュリティの根幹を成すものとなっており、暗号化市場の最前線に押し上げられている。
Thales、Entrust、Utimaco、Fortanixなどの主要ベンダーは、オンプレミス、仮想、クラウドなど、異種のインフラにわたって柔軟にデプロイできるモジュール式のKMSプラットフォームを提供している。一方、MicrosoftやAmazon Web Services(AWS)、Googleなどのクラウドハイパースケーラーも、サードパーティーのKMSと連携するクラウドサービスを提供している。
ポスト量子KMSの先行導入と今後の展望
金融機関などの先進的なセキュリティを求める組織は、ポスト量子KMSを先行して導入している。これらのサービスは米国立標準技術研究所(NIST)承認のポスト量子アルゴリズムをキー管理に組み込み、レガシーなハードウェアやアプリケーションとの相互運用性を重視している。2030年の商用国家安全保障アルゴリズム(CNSA)(※)期限は、市場に大きな影響を与えると考えられている。KMS分野でのポスト量子収益は2024年から2028年にかけて6300万ドル増加するとみられ、ポスト量子KMSのユースケースと業界特化ソリューションがさらに高度化すると予想される。
(※)米国国家安全保障局(NSA)が機密情報を米国政府と安全にやりとりするために使われる最高レベルの暗号規格。NSAは2030年までにCNSA 2.0規格へ移行することを推奨している
KMSは、クラウド移行の加速とポスト量子暗号化への関心の高まりを背景に、地域を問わず有望な事業領域となっており、システム機能とデプロイメントオプションの成熟度も高まっている。一方で、ポスト量子暗号化への移行プロセスは、相互運用性や性能の課題から、緩慢になるとみられている。
新しい量子鍵がKMSインフラにもたらす影響を徹底的に検証することが、移行成功の前提条件となる。一方、KMSの継続的な進化、改善を主導するベンダーは、AI(人工知能)や機械学習を採用して、自社サービスの暗号機能の対応力や柔軟性を高めている。
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