SE RACのメリット、デメリットをしっかり把握する:Oracle SE RACで手軽に高可用性システム(1)(3/4 ページ)
Oracle 10gからStandard EditionでもRACシステムを構築できるようになった。成功の鍵は、SE RACならではの制限事項や落とし穴をうまく乗り越えること。そのための情報を提供しよう。(編集部)
Enterprise Editionとの比較
SE RACの制限を押さえたら、もう1点。データベースそのものの機能について、Standard EditionとEnterprise Editionとで比較してみます。Standard Editionは、ライセンス料が安く基本的なデータベースの機能は使用できますが、Enterprise Editionのみで使用可能な機能もあります。そのため、Standard Editionを購入する際には「できること」と「できないこと」を明確にし、導入する環境に適合するか検討する必要があります。
ここですべての機能について説明することはできないので、2つほど例を挙げます。以下のようなケースは、Standard Editionでの対応も可能です。
- ケース1 扱うデータ量が中・小規模で、著しく増加することはない
- ケース2 定期的にメンテナンスのタイミングを設けられる
では、それぞれのケースについて説明します。
ケース1 扱うデータ量が中・小規模で、著しく増加することはない
データを大量に保有するシステムや大規模なDWH(Data WareHouse)では、データを検索する際にパラレルクエリを用い、処理速度の向上を図ることがあります。パラレルクエリの「パラレル」とは、図3のように命令(処理)を分割して同時に行い、結果をマージすることでパフォーマンスアップを図るものです。
パラレルで実施できるものに、例えばSQLではパラレルDMLやパラレルANALYZE、SQL以外ではバックアップやリカバリ、Exp/ImpやData Pumpなどがあります。大変有効な機能ですが、これらをStandard Editionで使用することはできません注3。
注3:これらの処理でもパラレルでなければ使用可能です。またパラレル処理は、複数のハードウェアリソース(CPUやメモリ、ディスク)を有効に使用する機能です。そのためStandard Editionのように、ハードウェアリソースに制限がある環境にはもともと向かない機能ともいえます。
そのほか、大規模なデータベースで効果を発揮するパーティショニング・オプションも、Standard Editionでは使えません。これらよりStandard Editionは、扱うデータ量が中・小規模で、著しく増加することはないシステムに有用といえます。
ケース2 定期的にメンテナンスのタイミングを設けられる
現在、対外向けにサービスを提供するシステムのほとんどは、24時間365日の稼働を求められます。稼働中でもデータのバックアップは取得する必要があるため、Oracleにもオンライン・バックアップの機能があり、Standard Editionでの使用も可能です。
しかしシステムを運用していくと、データベースが壊れないまでも、データがさまざまなところに配置され(フラグメンテーション)、アクセス効率がダウンすることがあります。こういったケースに対応できるよう、Oracleではオンラインで実施可能な「索引構成(再構成)」や「表再編成(再定義)」などが用意されていますが、これらはStandard Editionでは使用できません(図4)。
また、Oracle 10gからFlashback Database/Table/Drop/Transaction Queryといった機能が実装されています。例えばFlashback Dropは、誤ってテーブルを削除してしまっても、データベースを停止することなくテーブルを復元する機能です。これらのメンテナンス機能も、Standard Editionでは使用できません。
このように、オンラインで実施可能なメンテナンス機能のいくつかが使用できないため、懸念があればEnterprise Editionを選択する必要があります。
2点ほど例を挙げましたが、こういった内容を十分考慮し、Editionを選択する必要があります。このほかにも多くの要検討機能がありますが、詳細はオラクル社のWebページを参照ください。
1つ特記します。Oracleには標準で「Oracle Enterprise Manager」という管理ツールがあります。初回ログイン時にライセンス許諾の画面が表示されますが、あの画面に表示される製品はEnterprise Editionのオプションであり、Standard Editionでは使用できません。もし下記オプションに固有の機能を使用する場合はご注意ください。
- Oracle Configuration Pack
- Oracle Diagnostics Pack
- Oracle Tuning Pack
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