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SE RACのメリット、デメリットをしっかり把握するOracle SE RACで手軽に高可用性システム(1)(2/4 ページ)

Oracle 10gからStandard EditionでもRACシステムを構築できるようになった。成功の鍵は、SE RACならではの制限事項や落とし穴をうまく乗り越えること。そのための情報を提供しよう。(編集部)

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SE RACの価格と制限

 Oracle Clusterwareの導入により、可用性と親和性に加えて、実はもう1つ、価格面でもメリットがあります。

 まずHA Cluster構成の場合、前述したようにOracle Clusterwareが使えないため、他社ベンダのクラスタウェアを購入する必要があります。RAC構成の場合は、別途クラスタウェアを購入する必要がないため、比較的安価で構築することが可能です。

 RACの価格ですが、Enterprise EditionとStandard Editionで異なります。Enterprise Editionを購入する場合、有償オプションであるRACを購入する必要があります。一方Standard Editionでは、別途有償オプションを購入する必要はありません。これは、Standard Editionで使用可能な機能に、RACが含まれているためです(表1)

  Enterprise Edition Standard Edition
   Processor
(1CPU当たり)
Named User Plus
(1CPU当たり)
Processor
(1CPU当たり)
Named User Plus
(1サーバ当たり)
Oracle Database本体 500万円 10万円 187万5000円 3万7500円
RACオプション 250万円 5万円
最小ユーザー数 25 5
合計 750万円 375万円 187万5000円 18万7500円
表1 Oracleのエディションごとのライセンス価格
価格はすべて税抜き

 ただし、Standard EditionでのRACの使用は制限付きとなりますので、内容をよく把握しておく必要があります。制限は、以下の3つです。

  • RAC環境に搭載可能なCPUのソケット数
  • クラスタウェアには、Oracle Clusterwareのみ使用可能
  • データ格納方法にはASMを使用

 それぞれについて説明します。

RAC環境に搭載可能なCPUのソケット数

 各OSによって異なりますが、Standard Editionではシステムに搭載可能なCPUソケット数に制限があります。具体的には、

  • IAサーバ(Windows、Linux、Solaris on x86互換)、もしくはApple Mac OSの場合
    → 最大4ソケット
  • そのほか(SPARC Solaris、HP-UX、AIXなど)の場合
    → 最大2ソケット

 上記が、RAC環境に搭載可能なCPUソケット数です。RACは複数のサーバから構成されるので、1台のサーバに搭載可能なCPUソケット数は、サーバ台数によって変わります(表2)。

サーバ1台に
搭載可能
なCPUソケット数
掛ける サーバ台数 IAサーバ、もしくは
Apple Mac OS
(最大4)
そのほか
(最大2)
1 × 2
1 × 3 -
1 × 4 -
2 × 2 -
2 × 4 - -
4 × 2 - -
表2 SE RACのCPUソケット数の制限

 このように、Standard EditionではRAC環境を構成するサーバ台数や、搭載可能CPU数に限りがあります。仮にデータや処理の負荷が増えたとしても、サーバの増設やCPUの追加ができないケースが考えられます。この点からSE RACは、比較的「中・小規模」で、かつ「拡張性より可用性」を重視するシステムに向いているといえます。

クラスタウェアには、Oracle Clusterwareのみ使用可能

 親和性の話でも記載しましたが、クラスタウェアには多くの製品があり、それぞれに長所があります。しかしSE RACでは、そういった他社ベンダのクラスタウェアは使用できません。

 もし、いままで使い慣れたクラスタウェアがあり、それを継続して使用したい場合は、Enterprise Editionを購入する必要があります注2。そのためSE RACを選択する際には、ほかのクラスタウェアと比べたときのOracle Clusterwareの機能を十分に確認する必要があります。

注2Enterprise Editionを購入し、他社のクラスタウェアを導入する場合でも、Oracle Clusterwareの導入は必須です。その場合Oracle Clusterwareは、データベースとほかのクラスタウェアとの仲介役となります。


データ格納方法にはASMを使用

 Oracle 10gの新機能に、ASMがあります。例えるなら「オラクル社製Cluster Volume Manager」といった位置付けです。OSでRaw Deviceの作成ができれば、ASMがRaw Deviceをまとめてディスクグループを作成します。Oracle Databaseは、そのディスクグループにデータベースを構成します。

 これまですべてのプラットフォームに対応したCluster File Systemを持っていなかったオラクル社は、RAC環境を構築する際、他社のCluster File Systemを導入するかRaw Deviceを使用するかの選択肢しかありませんでした。他社製品の導入には別途費用がかかりますし、相性の問題もあります。また、Raw Deviceによるデータベースの運用は困難であり、管理者に負荷がかかります。

 ASMの登場により、これらの問題が緩和されました。詳細は後述します。

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