SE RACのメリット、デメリットをしっかり把握する:Oracle SE RACで手軽に高可用性システム(1)(4/4 ページ)
Oracle 10gからStandard EditionでもRACシステムを構築できるようになった。成功の鍵は、SE RACならではの制限事項や落とし穴をうまく乗り越えること。そのための情報を提供しよう。(編集部)
SE RACの要件 〜ASMについて〜
では最後に、SE RACの要件であるASMについて触れます。まず特筆すべきことは、ASMを使うことでCluster File Systemを用意する必要がなくなったということです。
システムを構築するうえで、ファイルシステムが使用できる環境は大変恵まれています。しかし、RAC環境に通常のファイルシステムを使用することはできず、クラスタ構成に対応したファイルシステム(Cluster File System)か、Raw Deviceの使用に限られます。
Raw Deviceは、一度作成するとサイズを変更できず、またシステム構築時に作成しておく必要があるため、運用時に起こり得る懸念事項に柔軟に対応できません。そこでCluster File Systemが求められますが、相性や価格などの問題で導入できないこともあり、その場合はRaw Deviceの使用を余儀なくされます。
こういった問題の1つの解決策として、オラクル社がリリースしたのがASMです。ASMは、Raw Deviceを使いディスクグループというOracle専用の領域を作成します。このディスクグループに、Oracle Databaseはデータファイルを作成し、表領域を作るのです。
Raw Deviceをディスクグループとしてとらえることで、運用は激変します。ASMができる以前、1つのRaw Deviceは1つのデータファイルとして扱わなければならないため、細かいサイズのRaw Deviceを大量に作成し、管理する必要がありました。しかしASMでは、大きいサイズのRaw Deviceをいくつか作成し、ディスクグループを作成すればよいのです(図5)。
ASMを使用する際、データベースの運用は従来どおりですが、2点ほど注意点があります。
1つ目は、ASMの実体はOracle Databaseと同様、インスタンスであるということ。データベースとOSの仲介役として、ASMインスタンスが存在します。インスタンスであるということは、初期化パラメータがあり、バックグラウンドプロセスがあるということ。ASMを使用する際には、データベースのインスタンスに加え、ASMインスタンスの管理も必要となります。
2つ目は、OSからはRaw Deviceしか見えないということ。Raw Deviceを使い、Oracleが論理的にディスクグループやデータファイルを作成しているため、OSからはこれらを操作できません。そのため、バックアップ・リカバリなどの運用方法を見直す可能性が出てきます。オラクル社から提供されている方法には、標準搭載されているRMAN(Recovery Manager)があります。RMANを用いることで、ASMを意識せず、従来どおりのバックアップ運用が可能です。
今回記載したように、SE RACは安価ではありますが、採用に当たってはさまざまな面を考慮する必要があります。次回は、RACを構築するためのOS設定について記載します。
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